君の名は? part1:あなたと私の関係

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ネパールでは、日常会話の中で、あまり人の名前は使われない。

人を呼ぶときは、名前ではなくて、人間関係で呼ぶことが多い。

私が村へ行くとお義母さんからは、カンチブワリ(末っ子の嫁)と呼ばれ、旦那の妹たちからはバウジュ(お兄さんの奥さん)と呼ばれる。多分、私のファーストネームを誰も知らないのだろうけど、知っていたとしても名前で呼ばれることはないと思う。

私とその人の関係によって呼び方は変わるので、誰がどう呼んだら自分のことなのかをまず理解する必要がある。
私だけでなく、家族間、親族間ではほとんどの場合は、人間関係を示す呼称で呼ばれる。誰がどう呼んだら誰のことになるのか、ネパール語が母国語ではない私には、とても複雑でなかなか覚えられない。

なんでこんな複雑な方法を取るのかと思うが、人間関係が重視されるネパール社会では、どちらが立場的に上なのか、わかることが重要なのだろうと思う。

ネパール語では、相手との上下関係によって、相手と話す時に使う動詞の変形が変わってくる。あなたと私の関係で、「YOU」を主語にした時の動詞の語尾が異なる。相手と自分の関係がクリアでなければ、どう語尾を変化すればいいかわからない。故に、名前よりも、人間関係の上下がわかる呼び方が定着しているのかもしれない。

とはいえ、数年に一度しか行かない村で、誰が誰だか、私にわかろうはずもない。複雑な呼び方も全部覚えられるわけもなく、呼ばれているのに気づかないことも度々だ。
そうでなくても、村のネパール語は少々なまっていて、聞き取りにくい上、村人は、私の外国人なまりのネパール語が理解できなかったりもするので、コミュニケーションとることだけでも大変なのに、立場の上下まで気にしないといけないなんて、ま〜無理やね。

昔は、姪っ子がそっと耳打ちしてくれたものだが、その彼女も今や海外で暮らしている。多分、山のように失礼をしてしまっているのだろうなあ…。

そして、私は、いまだにほとんどの親戚の名前を知らないのであった。

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【text by Chikako from Nepal 】

宮本ちか子 瀬戸内海の島で海に囲まれて育つも、なぜか海のないヒマラヤの国ネパール在住。夫も仕事も家財道具も全て捨て、ネパールに移住したのは30歳のとき。ポカラで15年ホテルを経営するが諸々あって、泣く泣くホテルを売却。現在はフリーランスライター、タマラエネルギーワーク、仕入コーディネイト等々。バツイチで結婚は2回、娘が1人、ネパール人配偶者はアーユルヴェーダの治療師。「刺身が食いたい」とつぶやく回数が最近さらに増えてきたアラフィフである。

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