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C-note:’210214-1、希望的観測

私にとって(日本人にとってとは言わない)大韓民国とはやっかいな国家・国民である。私が「大韓民国」と言われて思いつく言葉は、「希望的観測」である。

希望的観測とは、信念のいち形態。証拠や合理性ではなく「そうあって欲しい」「そうだったらいいな」という希望に影響されて判断を行う。好ましい結果が好ましくない結果よりもありそうだと予測しがちだ。

「慰安婦」「徴用工」という存在も、「そうあって欲しい」「そうだったらいいな」という希望だ。「慰安婦」「徴用工」という存在があるのなら、朝鮮を占領した(と希望的観測)「大日本帝国」という存在を国際的に貶められる。「大日本帝国」は中華思想的に朝鮮よりも劣る存在のくせに、朝鮮を併合した「絶対悪」である。ひいては、「大日本帝国」の後裔となった、民主国の「日本国」をも貶められる。溜飲が下がる。証拠や合理性など必要ないのである。

念の為に言っておきますが、下の記事は韓国の方(李宇衍さん)が書いた記事を日本語訳したものです。日本人が書いているわけじゃありません。
李宇衍:大韓民国の経済史学者。落星台経済研究所研究委員。李栄薫編著『反日種族主義』の共同著者

性奴隷説を否定した米論文にぐうの音も出ない韓国
ラムザイヤー論文が明らかにした慰安婦と事業主の間の契約とは

●韓国で怒り沸騰のラムザイヤー論文とは

1月28日から2週間にわたって韓国を騒がせている最もホットなニュースは、ハーバード大学のジョン・マーク・ラムザイヤー(John Mark Ramseyer)教授が「インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス」(International Review of Law and Economics)に掲載した日本軍慰安婦に関する論文「太平洋戦争における性契約」(Contracting for sex in the Pacific War)だ。韓国のマスコミは「ラムザイヤー教授が慰安婦は売春婦だと主張した」と一斉に報道し、韓国社会は怒りに沸き返った。
韓国の地上波MBCテレビのニュースは、「ラムザイヤー教授は『金髪の日本人』だ」という一部の韓国人による人種差別主義的な非難を、引用という形ではあるがそのまま報道した。ラムザイヤー教授は今も「親日派」「日本の戦犯企業三菱からカネをもらっている」などと罵倒されている。それこそ「メッセージに反論できなければメッセンジャーを殺せ」という言葉にぴったりの報道だった。
これは韓国における政治的な戦術の一つだ。論争で勝てないなら、メッセンジャー(発話者)のふだんの考え方やプライベートを非難するのだ。そこから、発話者の専門性に疑問を持たせ、公正さや偏向性の問題にまで発展させる。つまり「メッセンジャーには道徳的な欠点があるから考え方も偏向的だ。だから主張は間違っている」となる。とにかく、しばらくの間、「反日種族主義」の渦がすべてのニュースをのみ込むというこっけいな状況が演出された。
韓国の報道記者たちは論文を読んでいないか、読んだとしても要旨を把握できていない、と私は確信している。恐らく前者である可能性が高い。この論文に対する初期の報道内容はほとんどどれも同じだった。韓国の通信社「連合ニュース」が配布した記事を全メディアがほぼ丸写ししているからだ。とはいえ、これも韓国では極めて一般的な慣行だ。このような人たちに「論文を読んでみろ」と要求する私が愚かなのかもしれない。

●ラムザイヤー論文のシンプルな中身

すべての学術論文は冒頭に「抄録」(論文内容の要約)を付け、3~5個のキーワードを設定する。この論文のキーワードは「売春(Prostitution)」と「年季奉公(Indentured servitude)」だ。日本経済史において年季奉公人として有名なのが江戸時代の「女中」である。彼女たちはふだんは見ることもできないほどの大金を給金として受け取り、就業先へ行って数年間働いた。
世界経済史の次元で有名な年季奉公人(Indentured labor)は、18~19世紀、欧州から米国に移民した労働者だった。渡航には船賃や途中の食費などが必要となり、ヨーロッパの貧しい労働者にとっては大きな負担になった。米国現地の雇い主たちは渡航に必要な費用を代わりに支払い、米国に到着したあと普通は7年間、この労働者たちを働かせた。
ラムザイヤー教授は、アジア太平洋戦争以前に日本の遊廓で働いていた売春婦と楼主、開戦後に軍慰安所で働いていた慰安婦と事業主との間の契約を、年季奉公契約として把握している。事業主は売春婦や慰安婦が就職する前、つまり性サービスを始める前に、前借金という名目で大金を提供し、女性たちは就職後、数年にかけてそれを返済した。女性たちは客から受け取る金額、つまり売上高を一定の割合で事業主と分割し、取り分の一部を前借金の返済に充てた。
一般的に「良い論文」といわれるものがそうであるように、ラムザイヤー教授の論旨は非常にシンプルだ。まずは「売春婦と慰安婦の契約は、なぜこのような特殊な形を取ったのか?」と問う。一般的な労働者の場合は先に働いて、その報酬を日給、週給、月給などの形で受け取る。ところが、なぜ売春婦や慰安婦の場合は事業主との間で、前借金、数年の契約期間、売上高の分割の割合などが定められた独特な契約を交わすことになったのか。
答えもシンプルだ。就職を持ちかけられた女性はある問題に直面する。性労働に従事することは女性の評判を深く傷つけるというものだ。だから、業者は非常に有利な条件を提示する。女性たちは、業者がその約束をきちんと守ってくれるのか、疑わざるを得ない。これを解決する方法は何だろうか。業者があらかじめ高額を支払うことである。それが前借金だ。
業者も問題にぶつかる。この産業の特性上、女性たちが真面目に働いているかどうかを監視することは不可能だ。閉鎖された空間で行われる労働だからだ。たとえ手厚い待遇をしたとしても、一生懸命働いてくれるだろうか。同じ客にまた来てもらい、その女性を指名してもらえるだろうか。
この問題を解決する方法は、女性が稼いだお金(売上高)を一定の割合で事業主と分割することだった。定額の給料を支払われるとなれば、女性は真面目に働かないかもしれないが、売り上げ次第で取り分が変わるとなれば頑張るだろう。その結果、前述のような特殊な形態の契約、一種の年季奉公契約が結ばれる。
以上がラムザイヤー教授の論文の要旨だ。批判するなら、ラムザイヤー教授本人ではなく、論文で提起されている「問題」と「答え」である。「売春婦や慰安婦が契約を交わしたと言うが、朝鮮人慰安婦は日本の官憲によって連行された」と言い、その証拠を提示すればいいだけだ。いわゆる「強制連行」の証拠である。しかし、慰安婦問題が提起されてから30年になるが、官憲による強制連行を証明する資料はただの一つも出ていない。

●「性奴隷(sex slave)」という単語が一度も出ない論文

韓国の反日民族主義者たちが「強制連行説」の証拠として提示するのは、元慰安婦たちの「証言」だけだ。自分が日本人の軍人によって、あるいは警察によって連れていかれたという証言。しかし、私はその証言を信頼していない。ラムザイヤー教授のような第三者の立場にある外国人なら、慰安婦問題の把握において偏見がなく、そういう面ではなおさらだろう。
今も慰安婦問題で日本を攻撃することに熱心であり、韓国の国家元老(?)扱いを受けている元慰安婦、李容洙(イ・ヨンス)氏の証言すら根拠にならない。
彼女がカミングアウトした1993年ごろは「赤い靴とワンピースを見て付いていった」と言っていたが、2000年ごろからは「日本の軍人に連れていかれた」と証言を変えた。これまでいわゆる慰安婦運動家や研究者たちが掲げた強制連行の証言がすべて同様である。業者と慰安婦の間の「契約」を批判できなくなったそれらの人々や韓国のメディアは、ラムザイヤー教授というメッセンジャーを非難するしかなかった。
慰安婦に巨額の前借金を渡し、数年にわたって返済させたという主張(これは主張でもなく客観的な事実)を批判するなら、前借金を渡さなかったという証拠を示せばいいだけのことだ。朝鮮人慰安婦たちは前借金を全額返済したり、契約期間が終了したりしたら自由の身となり朝鮮に戻ったという主張や、売上高を分割してもらい高額の所得を得たという主張も、それに相反する証拠を提示すればいい。
しかし、反日種族主義者にはそれができない。証拠がないからだ。ラムザイヤー教授の論理構造にも飛躍や誤りを見つけることができない。繰り返し言うが、結局、できることはメッセンジャーを攻撃することだけだった。
「慰安婦は『性奴隷』ではなく『売春婦』だと主張した」というラムザイヤー教授に対する批判は、論文の要旨を把握しておらず、的外れだ。まして論文には「性奴隷(sex slave)」という単語が一度も出てこない。
この論文は、慰安婦が売春婦だったことを立証するために書かれたものではないが、慰安婦と業者の間で結ばれた契約の具体的な内容は、慰安婦が性奴隷でなかったことを主張するのに利用できる。韓国の反日種族主義者はそこを突きたかった。しかし、批判できるような歴史的・客観的な事実と資料は存在せず、そのような論理的問題を提示することもできなかったのである。

●なぜ韓国はラムザイヤー論文にいたずらに騒ぐのか

ラムザイヤー教授の論文に対して、いたずらに騒ぐ理由がもうひとつある。正義連の元代表で現在「共に民主党」の国会議員、尹美香(ユン・ミヒャン)の不正行為により、慰安婦「運動」が韓国国民からそっぽを向かれたが、反日民族主義者らにはどうすることもできなかった。
また2019年から韓国社会で波乱を巻き起こし、日本でも翻訳されて広く知られている『反日種族主義』という本を通じて、李栄薫元ソウル大学教授は慰安婦問題に関する新しくて説得力のある説明と資料を提示した。李栄薫教授によると、慰安婦は「性奴隷」とはいえない。私は慰安婦を「性労働者」だと理解している。しかし、反対側は今回もまともな反論ができなかった。
反対側には反撃の口実が必要だった。そんなとき産経新聞がラムザイヤー教授の論文を紹介し、これをチャンスとばかりに食いついたのだ。論文に対する攻撃を行い、反日世論をあおった。状況がよく分からない韓国国民は、米国と日本でも慰安婦問題が大論争になっていると考えるほどだった。
しかし、日本のメディアはこの問題に関して特に騒いでいない。米国では、ハーバード大学の学校新聞に書かれた韓国人学生記者の空しい叫びが響くだけだった。反日民族主義者らの立場から見れば、今回の騒ぎは韓国の国内的には以前と同様、大きな成果を収めたかもしれないが、対外的には慰安婦問題で日本叩きに失敗した最初の事例として記録されそうだ。


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