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ヒンズー教と仏教の原風景Ⅶ

ヒンズー教と仏教の原風景

自分で読み返してみて、厳密に言うと違うな、順番、言葉の用法が間違っている、ということで訂正をしたく思います。

よく釈迦の生涯を描いた作品に「バラモン教」という言葉が出てきます。手塚治虫の『ブッダ』では、釈迦はバラモン僧のような描かれ方をしている。しかし、インドの人々やスリランカの人々に「バラモン教」のことを聞いてもキョトンとしています。

まず、日本語の「バラモン教」は「教」と表記してあたかも宗教の一派みたいに思われます。英語では「Brahmanism」、「バラーマニズム」。「イズム」です。「バラモン主義」とか「バラモン学説」です。だれでしょうかね?「バラモン教」なんて誤解を生む翻訳をした人間は?インドの成立の順番とか関係なく一緒くたに知識が流入したので、中国語の「婆羅門」と合わせてしまったのでしょうね。

年代順に言いますと、紀元前1千年頃、現代から3千年前ぐらいに、それまで口伝で伝えられていたマントラ(讃歌、歌詞、祭詞、呪詞、つまり歌・お経です)、散文形式の祭儀書や梵書、バラモン僧や今のヨガ僧が山奥の森深くで代々伝授してきた森林書という秘技と祭式の説明、哲学的な説明の散文、それに有名なウパニシャッド(奥義書)、これらを集大成して「ヴェーダ」という聖典文書を作り上げました。

言ってみれば、聖典「ヴェーダ」は、宮本武蔵の五輪書とか柳生新陰流の開祖の柳生但馬守宗矩の兵法家伝書の修行僧向けみたいな、さらに大掛かりなインド全国版です。修行僧向けハウツゥ物です。剣術家向け、修行僧向けハウツゥ物ですから、一般大衆向けじゃありません。

まず、紀元前1千年前にハウツゥ物の聖典「ヴェーダ」ができました。そして、聖典「ヴェーダ」で説かれる祭祀を行う人々(修行僧)の主義主張がいわゆる「バラモン教」、正確には「バラーマニズム」、「バラモン主義」です。しかし、この「Brahmanism」「バラモン教」は17~18世紀のイギリス人がバラモン中心の宗教を呼ぶために作った造語です。インド人もスリランカ人も知らないはずです。

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この「Brahmanism」≒「バラモン教」にインドの各種の民族宗教・民間信仰が加えられて、徐々に様々な人の手によって再構成されたのが現在のヒンズー教です。順番が違う。釈迦の生きた2千5百年前、仏教の興隆した2千3百年前アショカ王の時代よりもヒンズー教は新しい。徐々に形成されたので、成立年代などありませんが、仏教の宗教としての体系化にも影響されて、ヒンズー教は出来上がってきたのでしょう。ですので、順番としては、

  口伝の時代(紀元前1千年以前)
⇒ 聖典「ヴェーダ」の集大成(紀元前1千年頃)
⇒ 「バラモン教」の流布(紀元前1千年頃)
⇒ 仏教の宗教としての体系化(紀元前5~3百年頃)
⇒ ヒンズー教の宗教としての体系化(紀元前5~3百年以降)

となります。日本も面白いことに似ているような動きを見せていますね?

  縄文時代の古神道の口伝の時代(紀元前1千年頃)
⇒ 仏教の伝来と宗教としての体系化(紀元後5~6百年頃)
⇒ 古神道の整理と神道の宗教(朝廷による国家宗教)としての体系化
 (紀元後6~7百年以降)

ヒンズー教と仏教の原風景Ⅵの記述は間違ってまして、正確には、

✕ 釈迦の生きていた時代のインドはヒンズー教の時代
◯ 釈迦の生きていた時代のインドは聖典「ヴェーダ」を奉ずる「バラモン教」とアニミズムの体系化されていない民族宗教・民間信仰の時代

です。

✕ ヒンズー教とは何でしょうか?それは、日本人にとっての古神道みたいなものです。今の体系化された神道とは違います。
◯ バラモン教とは何でしょうか?それは、日本人にとっての古神道みたいなものです。今の体系化された神道とは違います。

訂正しておきます。



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