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書を捨てよ、ビョークのMVを観よう

※曲名にMVのリンクを貼っています

Björk (ビョーク)は、アイスランド出身の歌手。音楽そのもののみならず、視覚的なアプローチも含めて完成されるアートなビョークの世界には、映像、ミュージックビデオが欠かせない。ビョークの音楽、映像美に酔いしれ、そして書を捨てよ、町へ出よう。

まずはわたしとビョークの出会いの曲から。出会いは中学3年生。初めて聴いたのは”All Is Full Of Love” (1999)という曲。2000年に世界中で様々な賞を受賞している完成度とヤバさの高いMV。MVを監督したクリス・カニンガムはなぜかビョークに「イメージはこれで」とカーマスートラ(古代インドの性の指南書)を渡され、「オッケー!じゃあロボットがセックスしてるMVを撮るぜ!」というノリ(想像)でこのMVができたと思われる。天才の思考。

はっきり言って、最初聴いたときは曲調も声もMVも気持ち悪く感じていたのだけれど、2回め、3回めと聴くうちになぜかはまってしまった。音楽とかアートとか、実は人間も、最初は苦手かも……と思った方がのちのち好きになってしまうもの。

“Hyperballad” (1996)は、ビョークの中での最高傑作だと思う。MV監督はミシェル・ゴンドリー。映画監督としても成功しており、「エターナル・サンシャイン」で有名だけど、私が一番おすすめするのは”Human Nature”という映画。トレイラーだけでもぜひ見てほしい!猿に育てられた人間を「文明化」するにはどうする?というような話です。Hyperballad話に戻りましょう、MVはただただ綺麗。当時のCGなのに古さも違和感もない。音楽や歌詞、映像、そして若かりしビョークの少女的美しさ(といってもビョークは当時31歳。どうみても10代にしか見えない)がひたすらに混じり合ってひとつの作品として完璧に存在している。この曲を聴くならこのMVを見ながらでないと100%とは言えないほど!と、言いたいところだけど、ライブでも全く違う形で私たちの期待を超えてくるビョーク。この曲は本当に最高です。

※このMVには性的表現が含まれます。”Cocoon” (2001)は、”Vespertine(ベスパタイン)”というアルバムの中の一曲。コクーン=繭。実はこのMVのアートディレクターは、石岡瑛子さんという日本人の方で、MV全体は安倍公房の「赤い繭」という小説をモチーフにしている。と私は思い込んでいる。特にそういう発表はされてないんだけどね。石岡さんは日本人初のグラミー賞受賞者で、北京オリンピックの衣装デザインややブロードウェイを中心に舞台のアートディレクターもされていた方。わたしが中学3年生の時、ちょうどビョークを通じて石岡さんのことを知った頃、亡くなられてしまった。

"Declare Independence" (2008)は、タイトルを訳すと「独立宣言!」となります。ビョークは2008年に中国でこれを歌った際「チベット!チベット!」と連呼して政府からきつくお叱りを受ける。しかし悪びれぬビョーク、日本武道館のライブでこの曲中に「コソボ!」を連呼、セルビアのコンサート出演を拒否される事態が発生。ちょっとそこは擁護できない。ちなみにこのMVの監督はハイパーバラッドと同じミシェルゴンドリー。

"Joga" (1997)は、他のMVとは少し趣向が違う。でも監督はまたお前かミシェル。全編CGが使われているのですが、今回は90年代のCGの絶妙な違和感が、逆に今観ると新鮮というか、逆に景色をくっきり見せてくれる感じ。

※この曲のMVにはボディピアシングのシーンが含まれます。 "Pagan Poetry" (2001) は、すこし異国情緒な印象を受ける曲。Pagan(ペーガン)とは広く言うと非キリスト(非一神)教徒、自然崇拝や多神教を信仰している人たちのこと(元々ペーガンには野蛮人、という意味があり、しばしば差別用語として使用される)。線が意志を持って流れるような、それでいて意味を持った形であるような、いや、MVを観ればそれが意味を持っていることが分かるんですけど、でも、ピアス開けるところとか、苦手な人は苦手かも。いろんなものに耐性のある人は是非。

"Moon" (2011)は、今回紹介する中ではいちばん新しい曲。他のMVと比べるとかなり現代的というか、本当に「いま!」という感じがばしばし伝わってくる。演劇人、こういう系のMV無限に好きそう。偏見?わたし、名前が「美月」なもので、「月」に並々ならぬ思いというか執念というか、あらゆる人生の通過点で月というメタファーを大切にして生きてきたので、このMVがこんなにも素敵でとても嬉しい。

"Birthday" (1987)は、ビョークがまだソロデビューする前にアイスランドで組んでいたSugarcubes(シュガーキューブス)というバンドの曲。これはMVよりも個人的に好きなライブバージョンの動画をチョイスしました。どうやらアイスランドのテレビ番組で放映されたライブシーンのよう。ビョークは元々アイスランドでは12歳でデビューし、アイドル的な人気を得ていた。その片鱗が見えるような、それでいて凛とした少女性のある当時のビョークが観られる。

わたし、いつも「少女」と聞くとビョークを思ってしまう。それだけ私の中の少女像はビョークで形成されているっぽい。「あの子はすごくピュアなんだよね」と言う言葉を聞くと「いや絶対ビョークのほうがピュアやん。」と心の中で唱えてしまうほど、私の中のビョークは限りなく透明に近いブルー。人となりなんて全然知らないのに。

そんな天才少女でもあり、歌姫でもあり、存在自体がアイコンであり、破天荒エピソードにも事欠かない(チベットしかり、パパラッチに暴行したり狂ったファンに殺されかけたり)ビョーク。絶対的「ビョーク」の立ち位置を彼女は一生見失わない。

わたしのおすすめビョークベスト5・2018
1 Hyperballad
2 All Is Full Of Love
3 Cocoon
4 Birthday
5 It’s Oh So Quiet

わたしのビョークベスト5・2020
1 Cocoon
2 I’ve Seen It All
3 Hyperballad
4 New World
5 Birthday

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