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古い新潮文庫の楽しみ。

 新潮文庫が好き。なことは、以前に書いたが、新潮文庫の古本を買うときには密かな楽しみがある。

 それは、表紙の印刷である。

 ここでいう表紙というのは、書店で平積みされているカラー印刷されたカバーの表紙ではなく、カバーを外したときのベージュの表紙のことである。

 最近の新潮文庫の表紙は、黒の一色刷りである。枠線、社名、タイトル、ブドウのイラストなどすべてが黒で印刷されている。良くも悪くもすっきりしている。

1色刷り

<1色刷り>
すべて黒である。

 しかし、古本屋で新潮文庫を買ってカバーを外すと、茶と黒の2色刷りのモノに出会う。この茶色が明治から昭和にかけての文学界をイメージさせる気がして少し嬉しくなる。昔の文学界に対する勝手なイメージであるが、色のバランスと古い感じが気持ちいい。古本なので、全体的に黄ばみが進行していることが多く、より古さを感じさせる。

2色刷り

<2色刷り>
書籍名、著者名、出版社名が黒文字である。
それ以外は茶色っぽく見える。

 同時に、2色刷りの表紙の場合は本文の文字も小さい。新潮文庫に限らず、最近の本は驚くほど文字が大きく、そして分厚い。ついでに値段が高い。古くて文字が小さい本は薄い。文字が小さくなると1ページ内の文字数が増えるので、ページ数は少なくなり本自体が薄くなる。

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左:昔の文字サイズ 右:最近の文字サイズ

 老眼が進行し、文字が小さいことは歓迎できることではないが、文字の小ささも古い雰囲気を感じることが出来、古い本のほうが好きである。最近、寄る年波を受け入れ、老眼鏡を手に入れた私は小さな文字も平気である。

 何年の出版分から1色刷りになったか、何刷りから文字が大きくなったか。その辺りの蘊蓄には興味がないが、古いデザイン当時の文庫を探して、古本屋をめぐることは楽しい。

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