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山や自然の中で、好きなことをできるようになるお手伝いがしたい|しもかわ人名鑑

今回は下川でのリアルな暮らしぶりを町内の方にお話ししていただく、しもかわ人名鑑。今月は森のお手入れや庭の木の相談など林業で起業した佐野圭司さんです。(取材日:2022年6月)


おもしろそうと思ったら知らない町でも住んでみる

下川に移住したきっかけは家族の提案なんです。下川へ来る直前は、長崎県で看護師をしていました。

でもその前はずっと林業をしていたんです。その前は酪農。自然の中で体を動かす、いわばガテン系です。でも40歳をすぎると体がキツくて、これまでのようには働けないんです。

林業は大好きなんですが、長く続けられる気がしないな、と思っていた時に「せっかくなら違う仕事にチャレンジしたら?前から興味を持っていた看護師になれば?」と家族に背中を押してもらい、リタイアする決意をしました。

勉強してなんとか看護師になりましたが、想像以上に子育てと仕事の両立が大変でね。やっぱり自然の中でゆっくり暮らしたいと思ったんです。

そうしたらまた家族から「せっかくなら遠くに、北海道に行こう」と提案されて。

北海道移住で情報を探すと最初に東川、2番目に下川がヒットしました。実家は大阪なんですが名寄の高校に通っていたので、名前を聞いたことがある下川に住んでみることにしたんです。

下川町は森に囲まれた町。林業も盛んです。

実はこれまでいろんな地域に住んだことがあるんです。出身の大阪から始まって、北海道滝上町、名寄市、和歌山県、佐賀県、長崎県、そして今の下川町。

振り返ってみると、これまでどこの場所へ移住する時にも「そっちの地域に行くと、人生おもしろいかも」と思っていますね。

相談がきっかけで、林業起業へ

和歌山で13年間森林組合にいたこともあり、下川でも森林組合で働いていました。でもやっぱり毎日フルタイムで働くのは体がもたないんです。普通、僕くらいの年齢ならみんな管理職になるのかもしれない。でも管理職に進むより現場の方が自分に合ってると感じたんです。

なので「さの木屋」として独立して、小さな林業をすることにしました。そうしたら体を労りながら、自分のペースで働くことができるしね。

個人経営なので重機は持ってないですが、チェーンソーなどの小さな機械でもできることはたくさんあります。修行した和歌山の林業では、手作業中心のやり方だったし、丁寧にやるのが好きなんです。

実は、もともと林業で独立しようという気持ちがあったわけではないんです。

町内の方から「自分の森で伐採した立木を加工しやすいように、木の特徴に合わせて一定の寸法に切断して丸太にしてほしい」と相談されたことがきっかけでしたね。

自分の山を持つ人が増えて、山から好きなものを得る人が増えたらいいなと思っているんですが、もしかして自分の技術が役に立つかもと思い、起業することにしました

山を家庭菜園のような存在にできたら

お受けする仕事では言われたことをやるのではなく、依頼主がやりたいことや好きなことを自分自身で実現するためのお手伝いをしたいと思っています。

例えば、山主さんが依頼主だった場合、自分の山でやってみたいことを聞くんです。

山菜を採りたいという希望があれば土地に合うものを植えたり、毎冬の薪ストーブに使う薪の確保であれば、この地域では白樺やハンノキを植えると早く育っていいのではと考えています。

庭のご相談でも同じですね。放置していた庭を手入れしてほしいという相談をいただき赴くと、立派な木があるお庭で。

下川にダムができた時に移植した木とのことで、せっかく思い出があるので切らずに残すことを提案しました。

でも庭のメンテナンスをするときに、草刈機やチェーンソーなど手入れやガソリンが必要な機械では大変でしょう?

依頼主さんが持っている手軽な道具で手入れできるよう心がけて、庭木に手を加えました。

依頼がもらえることは嬉しいですが、山でも庭でも日常の管理は自分でできる方がいいと思っているんです。家庭菜園でも土や環境を手入れして、自分がやりたいようにするじゃないですか。

まず相手の話を聞く、というやり方は、看護師の経験によってできるようになったのかもしれません。

山でも庭でもやりたいことを、ご自身の手で実現できるようなお手伝いをしていきたいですね。

休みの日も山で遊んでいます

下川は冬が長いので閉塞感が強い時もありますが、この冬はスノーシューを買ったので、時間を見つけて毎週末山へ行き、獣の跡を辿って過ごしていました。

スノーシューで歩いていると、どれだけ寒い日でも体が温まってきます

最近は雪も溶けたので、薪になる木を切り出したり、山の奥深くから山菜を採ったりしています。

今は市街地近くに住んでいるんですが、もっと自然の中で住みたいと思うほど、山の中が好きなんです。

冬の楽しみを見つけられると、グッと下川の暮らしは充実すると思いますね。あとは短い夏を思いっきり楽しむこと。

春が来るとみんな楽しそうにBBQしてますよね。うちも今年は車庫にBBQセットを常備したので、たくさん楽しみたいと思っています。

大好物の鹿肉。猟をしている友人に分けてもらって楽しんでいるそう。

そういう暮らし方まで見えてきたのは、だんだん余裕ができてきたのかな。
仕事も暮らしも、余裕を持つことって大切ですよね。

そういう意味でも自然との付き合い方や遊び方を見つける楽しさを、もっと広めて行けたらいいなと思っています。

それから、僕も最近、山が欲しいんですよ。それが叶うのは、下川ならではですもんね。

和歌山県で行われる林業と、下川町で行う林業。

地形から植生まで全く異なる地域で林業の経験を紡ぎながら、今は依頼主さんが暮らしやすいよう、やりたいことができるように提案する佐野さん。「自分の経験をみんなに還元したい」と話していました。

私自身もちょっと変わった人生遍歴なので、ひとつことをとことんやってきた人に引け目を感じる瞬間もありますが、思わぬ縁を大切にしながら、さらに人生の経験を重ねる佐野さんの後ろ姿にパワーをもらいました。

text:megumi kojima

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