これだけは知っておきたいOSSの話。
「無料で使える」?それだけではない、OSSの基本を再確認。
ウェブ系クリエイターであれば、「OSS(オープンソースソフトウェア)」という言葉を一度は見たり聞いたりしたことがあると思います。
今や定番のCMSとなったWordPressもOSSですし、jQueryなどのライブラリや、サーバ上で稼働するApacheやMySQLといったソフトウェアもOSSであることを考えると、現代のウェブサイト制作においては、OSSを利用しないで制作したりサイトを運用することは不可能ではないかと思える程、一般的に普及しています。
ただ、その一方で「無料だから」という理由だけで利用しているような場合もあるのではないでしょうか。
制作側はもちろん、制作会社やフリーランスなどに発注する側としても知っておくべきことはありますので、この記事がOSSについて改めて確認するきっかけになれば幸いです。
(※以前、私のブログでもOSSの基礎を取り上げていますので、合わせてご覧いただけるとうれしいです。 )
(※ちなみに、私もGitHubでOSSを公開しています。OSSのCMS「MODX」用のメールフォームなどです。 https://github.com/clefarray )
ライセンス遵守!
OSSと言えば、その多くが無料で利用できます。
ただ、どんな場合でも無料で自由に利用できるのではありません。
OSSといってもソフトウェアである以上、プログラムの著作物として著作権法で保護されるのが一般的です。
つまり、例えば開発PCへのダウンロードや本番環境へのアップロードといった「複製」、改造などの「翻案」、他者に配布する「譲渡」(※OSSライセンスでは「頒布」という表現となる場合が多い)を行う場合などは、原則的には著作権者からの許諾が必要となります。
逆に言えば、著作権者からの許諾無く複製などを行うと、著作権侵害となるおそれがある、ということです。
その一方で、ソフトウェアを利用するためにいちいち許諾が必要となると、利用する側にとっては面倒ですし、それによってソフトウェアの利用が減少してしまっては、自身のソフトウェアを広めたい著作権者にとっては公開した意味が薄れ、ソフトウェアの普及にも障害となります。
また、利用希望者からの申請にもイチイチ対応しなければならないというのも、著作権者にとっては大きな負担ではないでしょうか。
そこで、ある特定の条件を満たせば、特定の利用方法に限って、利用許諾を与えることを予め定めておく方法が採られるようになりました。
その「特定の条件」「特定の利用方法」などを定めたものが「OSSライセンス」です。
つまり、OSSライセンスに従えば、著作権者に連絡して許諾をもらう必要がなく利用できることになります。
逆に、OSSライセンスに従っていない場合は、利用許諾が与えられていない状態となりますので、著作権侵害となる可能性が生じます。
ライセンスもいろいろ
OSSの利用には、そのOSSが採用しているライセンスを遵守することが必要ですが、実はそのライセンスはOSS関連団体(OSI: Open Source Initiative)が認定しているものだけでも83種類(2018年9月8日現在)あります。
OSI認可以外のものも含めると、数百以上存在するとも言われています。
その中でも、比較的多く利用されているのが、GPL(GNU General Public License)やMIT、BSDなどのライセンスです。
詳細はライセンスによって異なりますが、再配布した際の適用ライセンス(元と同じでなければダメなど)やソースコードの開示義務、また派生物を生成した場合のライセンスなどが主な相違点となります。
特にGPLは縛りが強いと言われており、生成された派生物もGPLを適用しなければならない(俗に「GPL汚染」などと呼ばれることもあります)などの制限があります。
また、他のOSSと組み合わせることに制限があるライセンスもあります。
利用しようとしているOSSが採用しているライセンスをしっかり理解し、違反しないよう留意しなければなりません。
無保証であることに要注意
ウェブ制作会社やフリーランスに発注する側としては、特に留意しなければならないのが、一般的に「OSSは無保証である」という点です。
仮に利用しているOSSの不具合に起因して損害が発生したとしても、OSSの制作者は一切の責任を負いません。
また、OSSを利用したウェブサイト制作を受託した会社やフリーランスとの間で、OSSの不具合に起因する損害についての契約が特に無い場合も同様で、その受託者がOSSは無保証であることを伝えていたのであれば、その受託者は原則的には責任を負わないものと考えられます。
逆に、受託者が委託者に対してOSSが無保証であることを説明していなかったり、受託者がOSSをカスタマイズしており、そのカスタマイズ箇所が原因であるような場合は、受託者が責任を負う可能性はかなり高いと思います。
ウェブ制作会社やフリーランスが
「お客さん!今はWordPress使うのが流行っていますので導入しましょう!WordPress自体は無料ですよ!!」
と安易に言うのは結構ですが、その代わりに不具合への対応責任が生じる可能性が高いことにも留意が必要です。
どちらにしても、OSSに起因する不具合については責任の所在が曖昧になりがちですので、事前に契約書でしっかり合意しておくことが重要です。
WordPressなどのOSSを利用することはとても便利で有益です。しかし、発注者側も受注者側も、ライセンス遵守意識を持ち、リスクについても把握しておかなければなりません。
OSSは正しく利用すればとても便利なものです。
委託者も受託者も、しっかりとルールを守って正しく利用したいですね。
なお、OSSの留意点は他にもあるので、それはまた別の機会に。。。
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