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フリーランスのための「これだけは知るべし!!改正民法」

もう間もなく、2020年4月1日から、改正された「民法」という法律が施行されますが、みなさんご存じでしょうか?
120年ぶりの大改正と言われ、実際多くの規定が変わるのですが、ある程度把握されている方はもちろん、
「聞いたことあるけどよくわかんなーい」
「みんぽう?なにそれ美味しいの?」
という方まで、特にフリーランスの方は最低限知っておいたほうが良いと思われる点を簡単に挙げてみたいと思います。
※私自身もPHPダラダラ書いているフリーランスウェブエンジニアもどきです

なお、あくまでざっくりと簡単に記していますので、詳細や契約書作成・見直しについてはご相談ください
(※以下、2020年3月までの民法を「旧法」、4月以降の民法を「新法」と呼びます。)

知るべし!① ”瑕疵担保責任”がなくなる・・・でも(続く)

フリーランスの方は多くの場合「業務委託」という形で企業や個人から業務を受託していると思いますが、こういった業務委託において最も影響を受けると考えられるのがこれです。
そもそも「瑕疵(かし)」とは何か?というと、ざっくりと言えば納品物に生じた欠点のことであり、何らかのミスやバグ、動作不良などが該当します。
旧法では、このような瑕疵に対しての担保ということで、委託者(クライアント)は受託者(フリーランスなど)に対して、この瑕疵の修補を請求したり損害賠償を請求したり、更には契約の目的を達成できないような場合は契約解除もできるよ!と定められていました(旧法634条~640条)。

そして、このような瑕疵の修補や損害賠償請求などは、納品(仕事の目的物の引渡し)から1年以内にしなければならない、とされていました(旧法637条1項)。

それが、新法ではこの瑕疵担保責任に関する規定がごっそり削除または改正され、少なくとも瑕疵という言葉は消えました。

やったー!!これで多少のバグがあっても大丈夫だー!・・・と思ったら大間違い。

知るべし!②「契約不適合責任」新登場!

瑕疵担保責任が削除された代わりに、新たに登場するのが「契約不適合責任」です(新法559条、562条~572条)。
この契約不適合責任とは、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に、委託者は受託者に対して「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」ものです(新法562条1項)。
さらに、委託者が定めた相当の期間内に修補などが完了しないときは、その不適合の程度に応じて代金の減額が可能になり、さらにさらに、この修補などの通知は「不適合を知った時から1年以内」に行えば良い、と定められています(新法566条、637条)。

旧法の瑕疵担保責任では”納品から1年”だったものが、新法の契約不適合責任では”知った時から1年”です。”知った時”ですよ??!!

しかも、旧法では納品から1年以内に修補や損害賠償などの「請求」(=直して!賠償して!)を行う必要がありましたが、新法では「通知」だけでよく、実際の請求(権利行使)はその後でもかまわない、ということになります。

なお、この権利行使には消滅時効の適用があるため、権利を行使できるときから10年を経過すれば消滅します(新法166条1項)。

それにしても、従来であれば1年で済んだものが、最長10年です。
しかも、欠点である必要はなく、契約の内容に適合しない場合
、です。

ですので、例えば記事更新のためにWordPressを導入したウェブサイトを納品して9年後、「記事の投稿ができなくなった(←サーバ環境や周辺のアプリなどのバージョンアップが原因)ので直して!もちろん無償で!!!」という悪夢のような要求に応えなければならないことも・・・。

知るべし!③契約の”内容・目的”が大事!

新法では、先述の契約不適合責任だけでなく、無催告解除(※「○○をしっかりやってよ!」というような請求を事前に行うことなくいきなり解除すること)や損害賠償請求、履行不能(※納品できない、など)の判断において、”契約の内容に適合している?していない?”が基準となることが明確になりました。

つまり、曖昧な委託内容のままでは、成果物(納品物)が”契約の内容に適合”しているかどうかの判断まで曖昧になってしまいます。

では、もう少し具体的に、契約の内容というのがどのように影響するのかを考えてみます。
例えば

 クライアント「華やかな結婚式場パンフレットのデザインをお願いします!」

ということで受託したフリーランスデザイナーが納品したデザインがモノクロ無機質なものだったら、おそらく契約の内容に適合していません。
デザイナーがいくら「私はクールなデザインが得意なのです。何であろうとデザイン作ったのだからお金ください。」と言ったところで、クライアントは報酬を支払わずに契約解除することができると思います。

また、例えば

クライアント「結婚式場ウェブサイトのリニューアルをお願い!華やかで煌びやかでマーヴェラスなデザインで!」

ということで完成した結婚式場サイト、確かに華やかで煌びやかでマーヴェラスなのですが、なぜか設計上無駄が多く表示速度が遅くなり、検索順位が下がってしまった場合。
この場合、オーダー通りのデザインで仕上げたものであるため、契約の内容には適合しており、仮にSEOスコアが下がったのだとしても修補や損害賠償の請求は難しいものと考えられます。
(※ただ、1ページの表示に10秒以上かかるなど、一般的なウェブサイトの表示速度(品質)から考えてあまりにも劣るような場合は、そもそものウェブサイト制作としての契約内容に適合していない、と考えることはできると思います。)

知るべし!④ 仕事が完了しなくても報酬請求可能に

ウェブサイト制作やイラスト作成など、仕事の完成を目的とした業務委託は民法上「請負契約」となりますが、報酬については旧法では”仕事の結果”に対して支払われるものとして、原則として仕事を最後まで完成させないと請求できないものでした(旧法633条、624条1項)。

そのため、例えば「イラストを5点作成する」という委託を受けたのに、3点まで完成したところで不慮の事故により入院してしまい残りを仕上げることができなくなった場合、旧法の原則では債務不履行となるため報酬を受け取ることは難しいことが考えられます。
(※ただ、実際には完成分までの報酬の支払いを命じた裁判例もあるため、絶対に無報酬となるわけではありませんでしたが。。。)

しかし、新法では、
「注文者(クライアントなど)の責任ではない理由により仕事の完了が不可能となった場合」
または
「仕事の完了前に請負契約が解除された場合」
に、対応が終わっている部分だけであってもそれが注文者の利益になるような場合は、その部分について仕事の完成とみなして、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することが可能、と定められました(新法634条)。

先の例で言えば、イラスト5点納品という仕事は完了することはできませんが、でもすでに作成が終わっている3点については納品可能であり、それによってクライアントはそのイラストを利用できるという利益を受けるため、3点分についての報酬請求が可能であることが明確になりました。

知るべし!⑤ 契約が大事!契約が大事!契約が大事!

重要なことなので3回も書くほど、これがある意味最も覚えておくべき点なのですが、これまで挙げてきた法律の規定は、実は当事者間の契約によって変えることができます。

民法という法律は、あくまで仕事の受発注と遂行などについてのデフォルトルールが定められているものです。
そしてそのルールは、契約によって上書きすることが可能なのです(※一部例外を除きます)。

特に「契約不適合責任」の担保期間が10年にもおよぶのは、受託側となるフリーランスにとってはおそらく何のメリットもありません。

しかし、仕事を受託する際に特段の契約を交わさないような場合は、これまで挙げてきた民法(新法)のデフォルトルールが適用されることになり、契約不適合責任も10年ということになります。
また、契約の内容・目的が曖昧になれば、ちょっとした認識の相違が契約不適合責任の有無に直結し、トラブルの元となります。

そのため、新しい民法の下では、従来以上にしっかりした契約を結ぶことが重要となってきます。

まとめ

新法では、請負に関するものでは他にも法定利率の変更や損害賠償の範囲、解除の範囲なども改正されており、請負以外の分野も含めると非常に広範囲にわたっています。

ただ、過去の裁判例や学説の解釈が条文として取り入れられたものも多く、また先述の通り契約で上書きできるものであるため、これまでしっかりと契約を締結してきている人には、あまり影響は大きくないかもしれません。

しかし、契約を結ばない人(納品物の概要以外の合意が無い、契約書を取り交わさない、など)は要注意です。

施行まで残り2か月ちょっとですので、特に普段上記のような契約を結ばずに仕事をしているフリーランスはこの記事で取り上げたような変更点についてしっかりと把握しておくことをお勧めします。


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【契約書の作成・チェック】と【著作権コンサルタント】をメイン業務とし、ラーメンと蕎麦をこよなく愛する行政書士。東京都江東区東陽町。音楽専門学校卒業→フリーランスの作曲・編曲家→ウェブ屋(※現在も兼業)→行政書士。ブログ『著作権のネタ帳』『契約のミカタ』も不定期更新中。

コメント4件

契約不適合責任の例がおかしいと思います。
契約不適合責任は契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合について定めたものです。(566条)
したがって今回の例のように、引き渡した時点でウェブサイトを通常利用できていた場合は関係ないでしょう。
契約不適合と消滅時効を組み合わせて、あたかも10年保証のように扱うのは不可能です。
また、まとめの「契約を結ばない人」という表現も不適切であることは、民法を学んだことのある者なら当然わかるはずです。
誤解を与えない記事をお願いします。

「知った時」の起算点や「通知」についての主張立証周り、ご存知ないのですか。
そもそも、改正民法566条は、商法526条の規定を念頭に置いて、初めて理解出来る規定ですよ。
この記事は、早急に削除すべき。
『引き渡した時点でウェブサイトを通常利用できていた場合は関係ないでしょう。』
御意。『ウェブサイト』の例ならば、『納品されたウェブサイトのソースコードに「トロイの木馬」が仕込まれていたため、サーバにバックドアが仕掛けられた』あたりでしょう(勿論、賠償請求だけならば、709条でも請求は立つでしょうけど)。

『「契約を結ばない人」という表現も不適切であることは、民法を学んだことのある者なら当然わかるはずです。』
朝起きてから出かけるまでの間ですら、我々は「契約の網目」の中にいますから(noteの利用ですら)。
”契約を結ばない人”というのは、意味は十分伝わると考えていますが、まあ確かに正確な表現ではありません。ということで、追記しておきました。
契約不適合責任に関する記述は、現時点では変更する予定はございません。担保期間と起算点が(注文者側に有利な内容に)変わるのは事実であり、ここに記した解釈に基づき主張される可能性は否定できないためです。
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