そういうゲームじゃねーからこれ!!!!
――強制あいこによる根競べなんかに付き合ってられるか!!!! テメーが脱落しな!!!!
そして見る。総十郎の手は、
「……おや、これは小生の勝ちであるな。」
グーだった。
「馬鹿なアアアアアアアアアアァァァァァァァァァッッ!!!!」
容赦なくグーだった。
「ちょっと待てエエエエエ!!!! テメ、テメ、なに普通に勝ってんだよ!!!! 大人げねえのはどっちだコラァ!!!!」
「知らんなァ……いったい何の話かね?」
「あーうー、負けちゃったであります……」
「ふゝ、残念であったなフィンくん。ま、勝負は勝負。諦めてくれたまえ。」
「うー、仕方ないであります」
「ふざけんなァァァァァッ!!!! 三回勝負!! 三回勝負だから!!!!」
「子供か。ともかく部屋割りは小生が決めさせてもらうぞ。」
そういうことになった。
●
「ではそういうわけで、また明日迎えに上がります」
「えー、一緒に泊まらないでありますか?」
眉尻を下げるフィン。これまでずっとシャーリィとリーネとは一緒だったのに。
「ふふっ、もう、そんなに寂しそうな顔をしないでください」
「さ、寂しいなんて、そんなんじゃ……」
頬が熱を帯びる。
それを見て露骨に嬉しそうなエルフの主従。シャーリィに至っては、くーっ、と変な呻きとともに下を向いて無言のガッツポーズしていた。いたく感じ入ったらしい。
優しく暖かな二人の目線がなんだか恥ずかしくなって、フィンは総十郎の後ろに隠れた。
「ふむ、フィンくん。転移網が復旧したばかりだ。二人ともご家族のもとで過ごされた方がよかろう。」
「ええ、しばらく母には会えていませんでしたから、心配もかけていますし。それに――」
ツリーハウスの食糧庫を漁って居間でひとり酒盛りを始めた烈火を見やる。
「……あの男と一つ屋根の下というのは、かなり身の危険を感じますしね」
「で、あるなぁ。」
「? レッカどのがリーネどのを攻撃なんてするわけないでありますよ?」
「いや、まぁ、そうなんですが、そういうことではなく」
こほん、と咳払い。
「ともかく、今日のところはお暇します。フィンどの、ソーチャンどの、あとまぁ一応レッカも、本当にありがとうございました。自分の家と思ってくつろいでくださいね」
主従はそろって会釈をする。
「うむ。ではまた明日。」
「ばいばいであります……」
シャーリィはにっこりわらって手を振りかえしてくれた。
「うぃ~っ! 明日こそ揉みしだかせろよ乳ゴリラこの野郎!!」
後ろから飛んできた声に「お断りだッ」と投げ返し、美しい主従は去っていった。
じゃれ合いながら遠ざかってゆく二人の背をしばし見送った。
「よいなあ、あの二人は。」
「はいっ」
しみじみとした総十郎の言に、フィンも相好を崩す。
見ているだけで人を幸せにする絆、というものはあるのだなと思った。
「っかぁーっ! んめぇーっ! 異世界の酒んめぇー! ロリコン! テメーも付き合え!!」
屋内に戻ると、野郎すでにできてやがった。
「小生、未成年である。」
「はぁ~? テメー異世界転移で二十年くらい歳食ってんだろうが!! 実質四十歳!! 堅いこと言ってんじゃねえよオッサン!! だいたいこの国ガキが酒飲むの禁じてんのか? 貧乳も余裕で飲んでたぞ!!!!」
「やれやれ……少しだけだぞ。」
そして、フィンの肩に手のひらが乗った。
「さてフィンくん。約束を果たすとしよう。」
「あ……」
――あとで、聞かせてほしい。君の世界のこと。御父君のこと。守るべきもののこと。カイン人のこと。すべて。すべて。
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