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『四畳半神話体系』森見登美彦を読む。

さえない主人公、黒髪の乙女、漂う悲壮感と馬鹿らしさ、比喩と言い回しの美しさ、ミステリアスで、でもどこか引き寄せられてしまう京都の街並み。

これこそ森見ワールド全開の作品です。

森見登美彦さんの作品は決してスピーディかつダイナミックに進んでいくわけではないです。むしろあっちに行ったりこっちに行ったりと寄り道しながら、カオスの中で何かを求めているのです。

あと、言葉が心地よい。シニカルで屁理屈な言葉をここまで高尚なものにできるのかという矛盾に打ちのめされる。

「異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか」本文より

はちゃめちゃで、退廃的で、笑っちゃうストーリーなのですが、1つ1つの言葉に考えさせられたりします。

「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である」本文より

少しネタバレになりますが、以下の言葉に四畳半神話体系とは何かが、まとめられていると思います。

「ほんの些細な決断の違いで私の運命は変わる。日々私は無数の決断を繰り返すのだから、無数の異なる運命が生まれる。無数の私が生まれる。無数の四畳半が生まれる」本文より

無数の四畳半って何でしょうね?笑 ぜひ読んで確かめてください。

もしあなたが森見ワールドに浸れるなら、もう飲み込まれて抜け出せなくなるでしょう。これを機に森見登美彦ファンが増えてくれたら嬉しいです。

ちなみに僕の好きな作品は、「ペンギンハイウェイ」「聖なる怠け者の冒険」「有頂天家族」です。

ぜひみなさんのお勧めも教えてください。

こんな自分勝手な文章に共感を持ってくださったら嬉しい限りです。