夏の始まり

ウェットに伸ばした手を止めて
トランクスを探す。

トランクスをはいて
板を抱えて
表に出た。

ビーチサンダルは履かず
裸足のままだ。

アスファルトが熱い。

跳ねるように車道を渡って
ビーチに降りる。

灼熱の砂浜を全速力で蹴って
湿った波打ち際にたどり着く。

オンショアで眼の前のポイントにも
となりのポイントにもサーファーはいない。

少し波を眺めて、乗れると思った。

飛沫をあげて海にはいっていく。

水はずいぶん温かくなっている。

思い切って板に飛び乗り
腹ばいになってパドルを始める。
板を沈めて頭から波をくぐって
体を水に馴染ませた。

カブトムシの形をした入道雲が見える。

波が来た。
何回か水をかいて板が走り出した瞬間に立ち上がる。
波の上を滑りながら歓声をあげる。

今年も僕の夏が始まった。


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