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#11 恋愛と仕事の不均衡「君は僕に時間をくれない」


アメリカの”彼氏”は色々なイベントや旅行のプランをして、私を楽しませてくれた。クリスマスにはバレエ、ロマンチックディナーやプレゼント等用意したり、クリスマスツリーを二人で買いに行ったり、初めて迎える二人だけのクリスマスは、バレエの後、ゴージャスなディナーをプランしてくれ、最高の恋人同志の夜だった。


彼がやっと私のものになったのに、100パーセント私の方を向いてくれると、私自身は少しずつ苦しくなってきた。
一月にはフロリダ、私の誕生日にはカリビアンクルーズとイベント計画は次々にやってきた。

同時に彼の独占欲も強くなり、私は少なくとも束縛感を感じはじめていた。私の仕事は相変わらずとても忙しく、支局長の役割を果たすべく、1日15時間は働いていた。週末もほとんどなく、そんな日本的な仕事への理解は得られず、彼はストレスを募らせていた。


私が「週末も仕事」と言っても、仕事をしても良いから必ず家に来るように要求したし、雑誌の取材や配達にもついてくるようになった。そして「君は僕に全く時間をくれない」と文句も言うようになった。

私は自分の仕事だけでもコントロールするのが大変だったうえ、このわがままな彼氏をケアするのは仕事以上に困難を強いられた。レストランに行く時間も無かった私は、彼との時間を作るのがストレスとなり、デートを次第に楽しめなくなっていた。

この外国で就労ビザを取り、グリーンカードに繋げる事がどれだけ大変な事なのか、この人には分かっていなかった。自分の仕事に責任感とやり甲斐も感じていた。


ある日私は、「ちょっとデートの約束きついから付き合いを休憩したい」と彼に申し出た。彼は「え」?とびっくりした表情で、「どのくらい?」と聞いたので、「とりあえず2,3ヶ月くらい」というと、「2ヶ月も会わなかったらそれはもう恋愛とはいえない。別れるのと同然」と言ってきた。

彼は相変わらずバレエ、シンフォニーのチケットを購入して、ディナーをセットにして私の予定を容赦なく埋め尽くすのだ。私は仕事と恋愛の両立にとても苦しんでいた。

1月、そんな行き詰まった雰囲気を変えようと、思い切ってフロリダ旅行に出かけた。フロリダには彼の親友と私の従兄弟がいる。私達はフォートローダーディルで3泊したあと、従兄弟のいるオーランドへ移動した。世話好きな従兄弟は、私達を大事な客のようにもてなしてくれ、ディナーも毎晩彼が勤めるレストランでご馳走してくれた。

その夜、私はセクシーな黒いドレスを着てディナーに出かけた。従兄弟との待ち合わせ時間から15分ほど早く着いた私達は、レストランで何かすごく良い雰囲気に包まれ、この旅行で二人で居ることに幸せを感じていた。この気持ちがずっと続くような気がしていた。

すると突然彼から、「僕達きっとすごく楽しい人生を送れるよ」と大きな目を見開いた。「結婚したい」と言った。私はこの彼のプロポーズ的な言葉に安堵感を感じながらも、なんと返事してよいかわからず、「そうね、きっと幸せになれるかも」と言った。

彼はとてもびっくりしたような、とても幸せそうな顔をして、二人はしばらく見つめあっていた。そこに従兄弟が来てその話はそれまでとなった。

フロリダ旅行が終わると、私達の絆は揺るぎ無いものになっていくと同時にケンカも増えていった。


3月、彼の誕生日を初めて二人で祝った。私は彼をカリストガ(北カリフォルニア、ワインカントリーに位地する温泉地)に連れて行き、そこで一泊をし、カップルスパ、泥浴、ハイク、そしてロマンチックディナーを楽しんだ。彼との関係はこの頃とても良かった。

いっしょに居てもセックスをしても愛の表現は満たされなかった。もしセックスをすることが最高の表現だとしたら、それだけではものたりない。この人とこれからもずっと一緒に時間を過ごすことが究極の愛の表現なんだと思い始める。

私の頭の中で、「結婚」という文字がぐるぐると巡っていた。

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