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【お知らせ】島田荘司『盲剣楼奇譚』文庫解説を書きました。

 1981年『占星術殺人事件』にてデビュー、綾辻行人『十角館の殺人』歌野晶午『長い家の殺人』法月綸太郎『密閉教室』我孫子武丸『8の殺人』麻耶雄嵩『翼ある闇』など新人作家の発掘にも貢献し、〈新本格〉ムーブメントの礎を築いた、島田荘司先生の文庫新刊(奥付では本日8月10日発売です)『盲剣楼奇譚』(文春文庫)の解説を書きました。



『盲剣楼奇譚』について


『盲剣楼奇譚』裏表紙
『盲剣楼奇譚』目次

 ご覧のとおり、金沢が舞台の作品ですが、裏表紙にも目次にも私の名前があり(あくまで一個人、一読者として書いたので本名名義としました)、長年の島田荘司ファンとして、これだけで感無量です。

『盲剣楼奇譚』解説タイトル

 このたびの拙文は『トリヴィアル・ファントム論』と題しました。
 これは島田先生の「ハイブリッド・ヴィーナス論」のオマージュなのですが、もちろん深い意味があります。
「トリヴィアル」「ファントム」がそれぞれ何を指しているかは、ぜひ、書籍にてご確認ください。

 島田荘司が小説を書かなければ、わたしは“わたし”ではなく、そして“わたし”がいなければ、本書『盲剣桜奇譚』は存在していなかった――かもしれない。

 人口わずか一五〇〇余の山村に、わたしは生まれた。インターネットのない時代、田舎の少年にとって、小説は、世界を覗き見る窓だった。
 小学校の図書室で見つけた『黒猫・黄金虫』で推理小説を知り、〈少年探偵団〉〈アルセーヌ・ルパン〉に夢中になった。

『盲剣楼奇譚』文庫解説より

 拙文はこのようにはじまります。
 どのようにして少年がミステリと、新本格と、島田荘司と出逢い、そして『盲剣楼奇譚』が書かれるにいたったその数奇な顛末とはいかなるものなのか(プライベートで話すたびに非常に驚かれます)、こちらもぜひ、書籍にてご確認ください。

 この新聞連載は、本書の挿話「疾風無双剣」に相当するが、特徴がふたつある。

 ひとつは物語としての“結構”だ。
(略)
 もうひとつの特徴は“分量”だ。

『盲剣楼奇譚』文庫解説より

 解説本論は、『盲剣楼奇譚』のごく簡単な設定にのみ触れたうえで(ですから物語本編のネタバレは一切ありません)、本作や島田荘司作品のミステリとしての特徴をしっかりと「論」じています。

(略)わたしはここに、本格ミステリが構造的に抱える欠陥への問題意識を見てしまう。

『盲剣楼奇譚』文庫解説より

『異邦の騎士』のドッペルゲンガー、『水晶のピラミッド』のアヌビス神、『アトポス』の吸血鬼、『涙流れるままに』の首なし男、『透明人間の納屋』の透明人間、「UFO大通り」の宇宙人、『ゴーグル男の怪』のゴーグル男など、これら島田作品の怪人には“唯一無二のある特徴”があるのだが、さきに別の論点に触れておきたい。
 それは、島田荘司の筆力についてだ。

 島田作品の小説としての面白さは、その圧倒的なストーリーテリングにある。
(略)
 これは連城三紀彦も同様だが、島田荘司の筆力は、しばしば“豪腕”の一言でさしたる説明や分析もされずに済まされてしまうが、その正体とは、(略)

『盲剣楼奇譚』文庫解説より

 ……といったように、「なぜ(島田荘司の)小説は面白いのか」という物語の本質そのものについても迫りました。
 作品解説としてはもちろん、物語論、ひとつの論考として読み応えのある内容を目指しましたので、ご期待ください。

文庫版『盲剣楼奇譚』
文庫版『盲剣楼奇譚』

 もちろん作品本編も、900ページ超という圧倒的な分厚さを一切感じさせない、「ページターナー」「徹夜本」と呼ぶに相応しい、一気呵成に読ませる痛快娯楽小説であり、そして、奇想天外な謎と真相が炸裂する本格ミステリです。
 ご愛顧いただければ、ファンとして、解説担当者として、これに勝る喜びはありません。


『ローズマリーのあまき香り』出版記念パーティーについて


 さて、実は6月のことになりますが、都内某所で開催された、もうひとつの新刊『ローズマリーのあまき香り』の出版記念パーティーに参加してきましたので、そちらの様子もご紹介しておきます。

『ローズマリーのあまき香り』出版記念パーティー会場案内
『ローズマリーのあまき香り』出版記念パーティー祝花

 フレンチやワインを戴きながら、各回の著名人のスピーチやトーク、演奏、オペラ披露などを愉しむ(実は私もマジックを演じてきましたが、肝心の写真がないので割愛します)、非常に贅沢な内容でした。

秋山純監督・中井由梨子さん
塩塚隆則さん・志摩大喜さん・吉岡りささん
高井敏弘さん・唐沢萌加さん・中山博之さん
高井敏弘さん・山口安紀子さん

 ヴァイオリンの高井敏弘さんはNHK交響楽団、ソプラノの山口安紀子さんはヴェルディ音楽院声楽科同大学院を首席修了という実力者。

辰巳真理恵さん

 たまたま席が隣でお話をした、ソプラノの辰巳真理恵さんは、お父様が俳優の辰巳琢郎さん。辰巳琢郎さんは石川県ご出身とのことで、地元に縁のあるかたと知り合うのはやはり嬉しいものです。
 ちなみに辰巳琢郎さんはソムリエでもあり、当日振る舞われたスパークリングワインも辰巳琢郎プロヂュースの逸品でした。

島田荘司先生
サインの様子

おまけ

 過去、さまざまなメディアで執筆や寄稿をしましたが、今回はじめての大手出版社の「校正/校閲」を経験しました。
 誤字や文のねじれなどの指摘もですが、やはりファクトチェックが圧巻で、こちらが無意識で曖昧に書いてしまった些末な情報の正誤や精度など、ここまで徹底してやるのだなと背筋が伸びました。
 ひとつご紹介します。

初稿ゲラより

 どの分野もプロの仕事というものは凄いものです。
 また、一冊の本が世に出るまで、非常に多くのかたの膨大な作業があるのだな、とあらためて感嘆しました。


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