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「失格人間紀行」(夢1)

「失格人間紀行」
ー2018年 4月16日〜17日未明 (7〜8日目)ー

僕はよく夢を見る。
幼い頃からそうで、夢を見ないで熟睡出来たことの方が少ないくらいだと思う。
一度医者に診てもらったが、特に異常などは無く、単に眠りが浅いのが原因だろうという事だった。
そして暫くの後に心理学を生業としている母の友人と会う機会があったとき、
「それはきっとね、想像力が豊かだからよ」と言われた。
僕は常日頃からぼーっとするクセがある。
何もない場所を見ていたり、他意はないが人の顔をじーっと見ていたり。
そんな時は大体、空想の世界へと思考が飛んでいる時だ。
頭の中に浮かんだあれこれが目の前に映像となって流れているのが見える、そういう子だったし、今もたまにある。
寝る前は特にそうだ、何もすることがない状態で、視界は真っ暗、空想を無限に広げることができる。
そうして大抵、寝る前に考えていた何かしらを反映した夢を見ていた。
それ自体は別に苦では無かったし、むしろ楽しんでいたと思う、
ある程度の年齢までは。

ある年頃で、その夢に変化が起き始めた。
見る夢が殆ど悪夢なのだ。
今までは悪夢もあるがいい夢だってもちろんあったし、どっちともつかない変な夢も見ていた。
だが気付いた時には悪夢しか見なくなっていたのだ。
何かに追いかけられたり、
その末に殺されたり、
誰かに責められたり、
どこからともなく怒鳴り声だけが聞こえ続けたり、
自分が誰かを傷つけ、殺したり。
目覚めは最悪で体も休まらず、
次第に眠るということ自体が怖くなっていった。

そんなある日に久しぶりに良い夢を見た。
ただ幸せな夢を。
理由は分からなかったが、
ある人と初めて話した日の夜だった。

それからしばらく悪夢を見る事はなかった。
僕が旅に出る2ヶ月程前までは。

さて、何でこんな話を急に始めたのか説明をしなければならいと思う。
人の夢の話ほどつまらないものはないと誰かが言っていたが大目に見て欲しい。
夢というのは心の状態と深く関わっている。
ただ状態が悪いから夢も悪いという単純なものではない、逆な時もあるし、その通りな時もある。
夢というのは無意識の産物らしい。
つまりは飾り気のないありのままの自分、本能のままの在り方が出る。
つまり僕は何かから逃げたがっていて、あるいはもう怖さに怯えて逃げていて、
誰かを傷つけたいと思っているのかもしれない。
心当たりがないわけではない、寧ろあり過ぎて困るほどだ。
これを読んでいる誰かはもう気付いていると思うが、僕の心はいま健康とは呼べない状態にある。
これまでの文ですでに何回か夢の中の事を書いたと思う、
書いた理由としては、僕がどんな気持ちでいるかをこれを読む誰かに知って欲しいからだ。
まだここでは書けないことが沢山あるなか、せめて感情だけでも細かく伝えたいという思いがある。
紀行文なんて初めてで、書き方なんててんで分からないが、そんな事はどうでもいいのだ。
これは僕の紀行文だ、既存のルールなど知ったことじゃない、
そもそも死のうとしている人間がそんな細かい事を気にしていても仕方ない。
だってこれが誰かに読まれている時に、もう気にする僕はいないのだから。

ここまでが長い長い前フリ、
もちろんこれから夢の内容を書く、
これがどういう意味を持つのか、
いつかここに書けたら嬉しい。

街が燃えている。
昔小学校の授業で見せられた戦争の悲惨さを伝えるアニメで見たような光景だ。
ただ叫び声などは聞こえない、
ここにいるのは僕と、
目の前で燃える瓦礫の下敷きとなっている誰かだ。

助けて

そう言われた気がして手を伸ばす。
しかしあまりの熱さにすぐに手を引っ込めた。

おねがい

懸命に這い出ようともがく誰かは、
みるみるうちに力を失っていく。

○〆#

誰かの名前を叫んだらしい、
せめてその名前の主を連れてきてやろうと辺りを見回す。
しかしここには僕と誰かの二人しかいない。
自分の無力さに絶望した。

ごめん、ごめん

謝罪の言葉が聞こえてくる。
誰かが謝っている。
いや、違う。
これは僕だ。

気付いた瞬間、僕は瓦礫の下にいた。
熱い、重い、苦しい、痛い、怖い。
色んな感情が津波のように押し寄せる。
前を見ると誰かがいた、
必死に助けを求めるも、
誰かは助けてはくれない。
非力な子供だ、仕方がない。

ただその誰かは僕に言った、

そうだ、そうだ、そんな風に、

お前が死ねばよかったんだ。

ここで夢は終わった。

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