夜撫でるメノウ
先月、5年の月日を共にした塾を辞めました。
そして、5年の月日を共にした、とある一人の先生の元を離れることとなりました。塾を辞めるその日、その先生からとある一曲を伝えられました。
「夜撫でるメノウ」です。
今日はそんな先生のお話。
先生とは、不思議な関係でした。
一言では表せないですが、ただの生徒と先生という関係で終わらせるにはあまりに勿体ない関係だというのは明らかです。
先生は、定期的に病み、この世界から離れたがる私を一生懸命引き戻してくれました。
ただ、そうしてくれたことで、私は一気に先生なしではいられなくなります。
後に、先生はやり方を間違えたと仰っていました。
先生は、彼は、私に付きっきりだったのです。
そこから次第に私たちの歯車は、ずれ始めました。目が合えばいつも喧嘩。何度も言えなかった「ありがとう」と「ごめんなさい」を飲み込んでお互い傷付き合い、傷つけられあいました。
大喧嘩をして、号泣してしまい別の先生に仲介を取ってもらったこともあります。先生との接し方やこれから先私はどう選択をすればいいのか、分からず眠れない日もありました。
それでも、あの人は特別な人でした。
恋と言えば恋なのかもしれないし、
恋じゃないと言えば恋じゃないかもしれない。
恋だったとしても、恋という一言で終わらせるには納得がいかない関係で。本当に不思議な関係でした。
あの人との関係に当てはまる言葉を探して早五年。
最後まで見つからなかったです。
最後まで、何も変わらずに、ありがとうも、今までごめんなさいも言えずに、「おつかれー。」で終わっちゃいました。
私が先生に向けているこの煩わしい気持ちや、言いたくても言えない「ありがとう」と「ごめんなさい」は、この歯車の違和感は、先生も思っているのか、最後まで慣れ親しんだ声で聞くことはなかったです。
でも、その先生から伝えられた「夜撫でるメノウ」に全てが詰まっていました。
『終電前のホーム 言葉が出てこないな
ここからはもうひとりで
出逢わなければ良かったなんてそんなの思っていないよ だから笑って、笑ってよね』
私は今までダラダラと塾を続けてきました。
塾が、先生が大好きだったんです。
こんな日は永遠には続かないと、
この歯車のズレを直さないとと思いながらも
永遠という言葉に縋って過ごしていました。
もしかしたら、あの人も同じだったのかもしれないです。私が解きたくても解けない糸に苛立ちや違和感を覚えるように、あの人もあの人なりに解こうとして、悩んだんだと思います。
「お前がいなくなって清々するわ」と言った先生から伝えられた歌には、「これで終わりだなんてまだ信じられないけれど」って書いてありました。先生が私のことをどう思っていたかとか、私と同じ気持ちを少しでも抱いていたかなんて、分かりっこないけど、せめて、その日の終電待ちのホームで、私の顔くらいは思い出して欲しいなと思いました。
『君に貰ったこの愛も この手で溢れた毎日も
あまりにも美しいから涙が溢れてしまうよ
これで終わりだねって
最後の言葉になるけど』
「ありがとね」
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