見出し画像

ぼくがぼくで在れる日が_ 05/21

不意に涙が溢れた22:00。
何か楽しい事を考えようと思い5月6日に記憶を巡らせた。

あの時は驚いたなあ、道に迷っていたら写真送っただけなのに迷いなく迎えに来てくれて。
あの時は嬉しかったな、慣れない電車、慣れない場所に来てとても慌ててたぼくと一緒に居てくれて。
…どんなことよりも、楽しかったな。

けれどそんな事を考えているうちに忘れるようにしていた父親からのメッセージが脳裏を過ぎった。
その瞬間、あの日の感情が一気に蘇った気がして、グルグルしだした途端涙が零れ落ちた。

あ、これ、やばい、止まらないかも、くるしい、いやだ、こわい、まだ一緒にいたい、いたかった、あいたい、ずっといっしょにいたかった、はなれたくない、はなれないで、はなさないで、やだよ…

ジェットコースターのような情緒具合に笑う。
ああしておけば、こうはならなかったはずなのに。
仕組んでおけば、あんな失態を来さなかったのに。
後悔に後悔を重ね、積もり、こわしたくなった。
机の奥から長方形の箱を取り出す。
音を立てないように蓋を開けピンク色の刃物を取り出し、握り、右腕に突き刺した。
ギリギリと横に、縦に引っ張り、痛みを感じ更に涙が出る。
ビリッと痛みが走っても辞めなかった。
辞められなかった。
どくどくと滲み溢れ出す赤い体液。血液。
荒くなっていく呼吸に集中し、しゃっくりのような呼吸を繰り返しつつもなんとか安定させ、深呼吸を繰り返した。
次第に突き立てていた刃物を握る力は無くなり、痛みだけが残った。
うん、これでいい。これでいいんだ。
自問自答。自己解決だ。
ぼくはいつもこうしていた。
そうじゃないとダメだった。
誰かを頼ったって、解決する問題ではない。
自分が何とかしようとしなければ終わらない。
SOSを出そうと試みたけれど、余計な感情と妄想がぽこぽこと浮かび上がる。
結果、1歩下がりそのまま辞める。
そして、突き刺す。
我ながらばかだとは思う。自覚している。
けれど、ぼくは、
ぼくは。

わけがわからないまま赤い体液は拭き取らず、ガーゼを貼り付け滲んでいく赤を見詰める。
きっと誰かが動いたのだろう。
カタッと物音がし意識を現実へ戻した。
急いで服を着直し、塵を捨て、何事も無かったかのように布団へ倒れ込む。

…さむい。

もぞもぞと布団に潜り暖まる。
未だひりつく右腕を無視しわざと暗くした部屋で脱力する。

ああ、明日は、…そっか、あした、調理実習だ。
食べれないのにな、豚汁も、梅おにぎりも。

突然思い出した現実に嫌気が差す。
ぼくはぼくなのだから、無理なら無理だと言えばいい。
けれど、わたしには無理だ。
ぼくじゃないから、きっと言えない。
食べて、笑って、耐えて、休み時間にえずく。
今までずっとそうしてしまっていた。

作った意味、無くなっちゃうな。

そう思いつつもえずく。
体内でぐるぐると巡回している気分になり、それを考えると更に気持ちが悪くなる。
重症だ、きっと。


なんでぼくは、こうなんだろう。

そればかり不思議に思う。
考えたって仕方が無いことなのはわかりきっているが、それでも考えてしまう。
無駄だ。浪費だ。無意味だ。
わかってるよ、ぼく。

ねえ、なんでぼくは、ぼくで在れないの?
どうして、こうなってしまったの?
どこで、まちがえたの、

ぐるぐるぐるぐる廻る
呪いのようにぐるぐると
きもちわるくてしかたがない
たすけて、なんて、いえなくて。
症状もトリガーもわからないのに、たすけて、なんて、言おうにも言えなくて。
結局、自己解決してしまう。
その方が、いいのだろうけれど。
切なくなってくる。
暗闇だと、余計に。

  “   ぼくはぼく  ”

ちゃんと心に留めてる。
大丈夫。


そう思い、言い聞かせ、イヤホンをつける。
教えて貰った曲をプレイリストに入れ、連続再生に設定し、聴き流す。
そのまま眠りに落ちれるように、瞳を閉じ、その曲に集中する。
ひとりになってしまうのでは、とか、
あしたがきませんように、とか、
余計なことはかんがえないようにして。
 心地好い音に身を任せ、眠りにつく。
またあしたも、繕えるように。


ぼくが、ぼくで在れる日。

それが訪れる事を願って。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?