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愚痴_05/16

なんかいつもと違う、誰

2限目の移動教室の途中。
友人の鋭い言葉が刺さった途端、息が止まった
いつもと違う、までは良いとしよう。
けれど、“ 誰 ”  と言われたのは嫌だった。
こういう事は過去に何度もあったから言われ慣れてはいる。
それでも過去から引き摺り続けている傷は抉れる

「 え、何?どうしたの、急にw 」

くすっと笑って見せても彼女の目つきは変わらなかった
ああ、これはもうダメだ。
本能がそう言った気がした。
小5の頃にあった1件がフラッシュバックしそうになる
視線が痛い、上手く笑えない。
彼女とは1学年の頃から仲が良い、自惚れかもしれないけれど、休日に出掛けに行く程度には仲が良かった、はず。
確かに今の僕は少し違うかもしれない。
そうだったとしても、唐突に突っ込まれては痛い。
きっといつもと反応が違ったのだろう。
何処だ、何処で間違えた。
記憶を辿る。
辿っても辿っても、気づくことは無い。
彼女からの不信感が増していくだけ。
黙り込んでいると彼女が口を開いた。
そして、こう言った。

「 言いたくないなら言わなくてもいいけどさ?今までこのゲームのこと好きでもないのに好きって言われたり誰々が推しって語られるの、マジ癪。無理。 
  どうせその笑顔も仮面なんでしょ?
  皆言ってたよ?精神病者だって。だから年中長袖長ズボンなんだって。」

…ちがう、
またある事ないことを流されるのは嫌だった
精神病者って何?傷だらけだからずっと長袖だと思ってるってこと?週2で通ってる病院のうち片方が精神科医だって言いたいの?そういうこと?

困惑からか、怒りからか。わからなかった。
正気じゃなかった。ただある事ないことを言われているだけなのに、彼女に八つ当たりしようとした。
きっと彼女に悪気は無いのだろう。
真っ直ぐと見詰めてくれたあの表情に曇りはなかった、何より、向き合おうとしてくれていた。
それなのにぼくは、また、何が言いたい訳?って逆ギレした。
ぼくはこんな性格なんだ。
当然彼女はだんまりしたままぼくの手を引いて体育館へ歩き出した。
密かにあはっと笑いが溢れる。
面白かったんじゃない、笑わないと、おかしくなりそうだった。
気味が悪い。自分自身が。

体育に参加出来ない僕はいつも通り壁に寄りかかり、皆の姿をぼんやりと眺めた。
ボールの跳ねる音と皆のはしゃぐ声が響き渡る。
色々考えているうちに視界がぐらついた。
お腹も痛かった。とても。
視点を改めると真下にボールが落ちていた。
あー、ボールがお腹に直撃したのね。成程。
食い込むように直撃してきたボールは何事も無かったかのようにころころと転がった。
溝内の近くに当たったからか酷い吐き気がした
保健室へ連行され少し冷やし、寒がりなぼくは布団を借り座っていた。
授業が終わるなり彼女が飛び込んできて少し驚いた。
いつもの様に心配してくれた、
うれし、かった。けれど、脳内でのぼくは
“ 距離を改めないと ”  と想っていた。
そしてまた全力で演じてしまった。
いつものぼくではない、僕を
気持ち悪い。本当に。
何も解決しない。
放送室に篭もり泣くことしかできない。
お昼の放送はやり切りたいと保健の先生に無理を言い、放送を終わらせた後、先輩方と昼休みを過ごし早退した。
やっぱりまだ痛い。ボールが硬すぎる。
だから指骨折する人出てくるんだよ、と1人でキレる。
これから、あの教室でどう生きていこう。
それしか頭の中に残らなかった。

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