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拝啓 2021ミス・ユニバース日本代表 渡邉珠理様

私たちBDS Japan Bulletinは、BDS (ボイコット・投資引揚げ・経済制裁)という非暴力的な手段により、イスラエルにパレスチナ人の人権と国際法を尊重するよう呼びかける市民の集まりです。この度は、イスラエルのエイラートでまもなく開かれる2021年ミスユニバース世界大会についてお伝えしたいことがあり、公開レターをお送りしています。

まず、今年の大会が、パレスチナ人に対するアパルトヘイト政策と軍事占領を続け、人権侵害や国際法違反を犯し続けるイスラエルで開催されること自体に愕然とさせられますが、これは各国代表のみなさまの力の及ばないところで決められたことだと承知しております。

その上で、日本の代表として既にイスラエルに行かれている渡邉さんには、今からでもできることがあると思い、このレターをしたためます。そのうちのひとつは、イスラエルが、シオニズムという人種主義の思想に基づき、先祖代々その地に住んでいた人々を追い出して作られた国であるということを知って頂くことです。渡邉さんは、日本人として入国し、観光を楽しみ、大会に参加することができますが、先祖代々住んできたその土地を踏めないパレスチナ難民が大勢いることを知っておいて頂きたいと思うのです。イスラエルは、彼ら難民の犠牲の上、また今も軍事占領下にあり、平等な人間として扱われないパレスチナ人の日々の犠牲の上に成り立っています。

また、渡邉さんが訪ねられた地域の歴史や文化、土地や自然の多くは、現在のイスラエルが建国される前、パレスチナという土地に住むすべての人々が宗教に関係なく長い間共有してきたものでした。それをユダヤ人にだけ特権を持たせ、その他の人々を二級、三級市民として扱い、軍事占領下に置き、人権を踏みにじる行為を続けて来た国家システムが、「イスラエル」という国だということを、まず認識して頂きたいと思うのです。

渡邉さんは米国で国際開発を学ばれ、女性の地位向上や環境問題にもご関心がおありと聞いております。それと同様に、パレスチナにおける悲惨な歴史と現在も続く人権侵害にも関心を持って頂きたいのです。なぜならば、渡邉さんはいま、その地を踏める特権があり(祖父母たちが暮らしてきた土地に帰れないパレスチナ難民の深い悲しみは、ご想像頂けるかと思います)、そこで起こっていることを身近に知れるチャンスがおありだからです。それは今日、今この瞬間からでもできることであり、更に世界大会が終わった後も学び続けられることでしょう。

イスラエル側が用意した表面的な観光地(その多くもイスラエルがパレスチナ人から奪い、コントロールし、観光地化したものです)を巡るだけでなく、その地で現在進行形で起きている不正義と抑圧と暴力について、知る努力をして頂きたいのです。この地で何事も起こっていないかのように世界大会に参加し、何事もなかったかのように立ち去らないで欲しいのです。それは例えるならば、ナチスドイツ政権下で行われる世界大会に何事もないかのように参加し、観光を楽しみ、ドイツの美しさだけ宣伝して、ナチスによるユダヤ人の迫害を見なかったことにして立ち去るのに等しい行為だと思います。

渡邉さんは、東京のイスラエル大使館を訪問された後、ご自身のインスタグラムで以下のように述べていらっしゃいます。この「美しい国」での一瞬一瞬を大事にし、その土地と人々から学びたい、と。

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渡邉さんのインスタグラムより:https://www.instagram.com/juriwatanabe

渡邉さんのおっしゃる「美しい国」がどのような犠牲の上に成り立っているか、パレスチナ人を含む、その土地と人々からも学んで頂きたいのです。

また、下記の投稿では、真実を語ることを恐れない、心の声に従うリーダー、人々のためのリーダーとなるような女性でありたいとおっしゃっています。

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是非これを実践して真実を知り、語る努力をしてください。占領する側、抑圧する側のナラティブだけでなく、占領される側、抑圧される側のナラティブを聞く力が、渡邉さんにはあると思います。

こちらの投稿では、イスラエルのアラッドの市長から、「砂漠は心拍数を下げ静かな気持ちにさせてくれる」と聞いたと書かれています。けれども、その静けさや心の平穏は、パレスチナ人を追い出しながらその歴史を否認することによって得られたものであり、イスラエルのアパルトヘイト政策と軍事占領のために、パレスチナ人には簡単に手が届くものではありません。

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イスラエルによる封鎖が続き、度々爆撃にさらされるガザ地区では特に、人々は未来に希望が持てず、子どもでさえ半数近くがメンタルヘルスに問題を抱えており、サポートが必要だという報告もあります。

また、こちらの写真で立たれている東エルサレムの土地は、イスラエルが武力で奪い占領しているパレスチナ人の土地であり、今でもパレスチナ人住民の追い出しが続いています。

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先日12月1日にも国連総会で、エルサレムにおける併合政策と民族浄化は国際法違反である、という決議が圧倒的多数で採択されました。日本もこの決議に賛成票を投じています。

それにも関わらず、フェイスブックを含むソーシャルメディアやグーグルマップにおいて、ここは「東エルサレム、パレスチナ」と正しく表示されません。渡邉さんもこの投稿をされる時、エルサレムと入力するとイスラエル、と自動的に出て来たのではないでしょうか。それはなぜか、疑問に思って頂きたいのです。

こちらの写真は、渡邉さんを含むミスユニバース各国代表のみなさんが、イスラエル観光省によってアレンジされたイベントで、ベドウィンの人々を訪問された時にアップされた写真です。

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そしてこちらは、その時の様子を投稿したミス・フィリピンのツイートを見た、エルサレム生まれのパレスチナ人女性の反応です。

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この方は、ミスユニバース主催者がパレスチナ人の民族浄化を無視するだけでなく、パレスチナ人の民族衣装をこのような形で各国代表に着せ、それをアパルトヘイト国家である「イスラエル観光」のプロモーションに使い、民族浄化に加担するのは酷いことだとおっしゃっています。不名誉で恥ずべき、(そして特にパレスチナ人の彼女にとって)本当に心が痛むことだとおっしゃっていますが、私たちも同じように考えます。

これはイスラエルの観光省とミスユニバースが準備したプログラムだったのでしょうが、この一見無邪気な「文化交流」に見える行為が、70年以上虐げられ、文化やその存在を否定され続けてきたパレスチナ人をどれだけ傷つけるか考えてみてください。

最後に、この問題はパレスチナ人かイスラエル人か、またはイスラーム教徒かユダヤ教徒かといった問題ではありません。人権や平等、人々の尊厳に対して真摯な態度を取るか、取らないか、の問題です。フェミニスト、Black Lives Matter運動など人種差別に声を上げる人々、そしてすべての人々の人権が尊重されるべきだと考える人達が、世界中から連帯してイスラエルのアパルトヘイト政策反対に声を上げ、そのうねりはだんだん大きくなっています。

渡邉さんも、これを機にパレスチナの人々に押し付けられた不正義について、イスラエルという国の在り方について、いま一度学び、考え、行動して頂けますと、世界は少しよい方向に動くかもしれません。「ミス・ユニバース日本代表」というタイトルとチャンスで何をするか、制限がある中にもできることはいろいろあると思います。他の国の代表とも、このトピックについて話し合う機会があることを切に願います。

そしていつか、まやかしの文化交流ではなく、解放されたパレスチナで、真に美しい交流ができる日が来ますよう!

(BDS Japan Bulletin 運営チーム一同)


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