用語集: 「モラベックのパラドックス」

今回は「モラベックのパラドックス」について見て行きましょう。

「モラベックのパラドックス(Moravec's paradox)」 人工知能(AI)やロボット工学において、高度な推論を行うことよりも、人間の幼児でも身に付けているような知覚や運動の能力を獲得することの方が、はるかに計算資源を要する(つまり難しい)、という逆説です。

モラベックは、次のように記しています。

人間の脳の感覚と運動に関する部分は、自然界で十億年間経験し生き残ってきたことで高度に進化してきた。我々が推論と呼ぶ意識的プロセスは、より古く強力な通常は意識されない感覚運動的知識によって支持されなければ意味がない薄いベニヤ板のようなものだと私は信じている。

モラベックのパラドックスは、AIやロボット工学の研究に大きな影響を与えました。従来は、高度な推論を行うAIやロボットを開発することが最優先課題と考えられていました。しかし、モラベックのパラドックスによって、知覚や運動の能力を獲得することが、AIやロボットの開発においてより困難で重要な課題であることが認識されるようになりました。

モラベックのパラドックスの例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 人間は、目の前のものを瞬時に認識し、手が届くかどうかを判断することができます。しかし、これをAIやロボットで実現するためには、膨大な量の画像データと計算資源が必要です。

  • 人間は、歩いたり、物をつかんだり、階段を上ったりといった動作を、無意識のうちに行うことができます。しかし、これをAIやロボットで実現するためには、複雑な運動モデルの構築が必要です。

モラベックのパラドックスは、AIやロボット工学の研究において、未解決の課題として残されています。しかし、この課題を解決することができれば、より自然で人間らしいAIやロボットを開発することができると考えられています。

逆に言うと、「モラベックのパラドックス」が解消できない限り、人間の仕事は無くならない気がします。

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