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出典解説T「渋谷音楽図鑑」2017年7月 太田出版

T 「渋谷音楽図鑑」2017年7月 太田出版
 
数ある著書(監修含む)の中で、代表作といえる一冊です。
 
「渋谷」という街の変遷と、音楽面からの自伝的回想はこれまでの集大成、これに加えて楽曲分析の鼎談が入っている点が画期的です。
 
さらに、この鼎談は以降の「湘南音楽図鑑」、「渋谷音楽図鑑 Presents サイコト音楽図鑑」編へと続く(→項目U、Z)出発点ともなります。
 
総合的な本なので、他の著作と重複する記述も少なからずありますが、ということは「発言集成」を編集するにあたって、どの部分を採用するかという判断の最も難しい本でもありました。
 
他の著書と重なっている部分をなるべく避けながら、微妙に細部が詳しい、あるいは、他では言及されていない人名を含む箇所を選んでいます。
 
具体的に見てみますと、T01.02は生い立ちに関する部分です。
しばしば「渋谷系」に関する著書の執筆を求められたそうですが、「渋谷系」ではなく「渋谷に生まれて育った人間」としてこの本は幕を開けます。
 
T04.05は荒井由実を中心とした、人の繋がりを素描した箇所です。
荒井由実-吉田拓郎-松任谷正隆、という主軸から派生する、後の重要人物がたった2ページの間に多く登場します。
 
ごく少数の存在が次の時代の音楽シーンを大きく切り拓く、という点ではFGと「ネオアコ」「渋谷系」といった後の流れとも似ています。
 
T06.07は「シュガーベイブと坂本龍一」とでもサブタイトルを付けたい箇所です。特に07の「サーカス・タウン」のデモ録音における、
「作業は山下達郎と坂本龍一の二人だけで行われました。」
「ピアノと歌だけのデモであったけれども、」
……といったくだりは読んでいるだけで興奮します。
 
T08は筒美京平、T09は華やかに見える80年代の負の側面にチラリと言及しています。いずれも「渋谷音楽図鑑」全体の中では目立ちませんが、ここは外せないと考えて採りました。



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