見出し画像

05号制作日記 1001-1031

1001

「普通の人の音楽遍歴」を某さんにお願いしてみたら、うまいことOKしていただいてトントン拍子に日程の調整まで進んだので、少し気が楽になった。


1002

7日にお会いすることになった某さんに訊きたいことをメモしていて、追加の質問を思いついてまた連絡する。期待しています。


1003

秋晴れでよい日。007を観に行く予定だったが、明日(平日夜)でいいやと思い直す。


1004

晴天どころか夏に戻ったような日で、蝉が鳴いている。05号の作業ができず、その先の本の素案や段取りを考えている。


1005

その先の本の、そのまた先のあれこれの話が出てきた。亀に追いつけないアキレスのように、永久に05号にたどり着けないかもしれない。

田家秀樹「みんなCM音楽を作っていた 大森昭男ともうひとつのJ-POP」を読む。巻末の大森昭男×大瀧詠一対談では聞いたことのない話があれこれとある。

小林旭の娘が大瀧ファンで、仮歌の入ったデモテープをかけていたら「これ、大瀧詠一でしょ!!」と言いつつ二階から降りてきたとのこと。

大瀧詠一は太宰治も宮沢賢治も読んだことがないそう。普通なら「この二人だけは絶対に読んでいるはず」と決めつけてもおかしくないのだが、うっかり決めつけたら大変なことになる。

それでも大瀧詠一の場合は、この発言をそのまま「真実」とは言い切れない、独特のねじれた韜晦や照れが混じってくる。実際は読んでいるのに、あえて「読んだことがない」として置いて「そんなはずは無いでしょう」と突っ込んできた人だけを相手にするような。そういう独特の構えで世間に向かっている。


1006

「大江健三郎 作家自身を語る」を再読する。聞き手がほとんど対談の相手のようにあれこれ喋るのも善し悪しで、この本の場合は悪い。大江健三郎のある長編を泉鏡花になぞらえた評を「古い見方」としているのだが、新派の演劇や「高野聖」ばかりが鏡花でもないので、一概に古いともいえない。むしろ聞き手の鏡花観の方が古くて浅い。


自分も聞き手としてある程度は話した方が良い場合と、引っ込んでいた方が良い場合を明確に分けるよう心掛けないとまずい。とりあえず明日のインタビューは比較的話す方になるものの、他のインタビューは引っ込み気味の位置にいるか、まったく出ないかの二択だろう。


「続・FGの時代とことば」の大まかな下書きが9枚できた。あと半分くらい書き足せば下書きができたようなもので、単独の考察に分けたら5つか6つに分かれてしまう内容を、強引にひとつの講義録にしているような感じ。実際に話したら急いでも二時間はかかる。文章なら十五分で読めそう。


1007

渋谷で某氏へのインタビューをして、あれこれ伺う。あえて驚くような話を求めなくても自然に意外な話や本音がポロポロ出てくるので、刺激を受ける。頭の垢が落ちたようにすっきりした。

これから「ベレー帽~」のようなzineを作りたいと考えている人には、批評的な文章を書くよりもまずインタビューをお勧めしたい。相手がどんな人でも、音楽歴を軸とした思い出話だけでも面白くなるはず。音楽がダメならテレビ歴、漫画歴、食べ物歴でもいいし、病気自慢や引っ越しの話題でもいい。


批評性の高いエッセーはいろいろあるものの、批評性の高い小説は何かなと考える。たとえばポオの小説は考察が多く批評性が高い。「小説とは、読者を主人公に感情移入させて感動させるものだ」といった小説観の人にとっては小説でも何でもない、エッセーと小説の間にあるような、考察集みたいな短編が結構ある。


1008

「批評性の高い小説」で思い出したこと。

A:女流作家の小説で批評的な視線が文章に沁み込んでいるようなタイプの人たちがいて、かなり影響を受けている。倉橋由美子、金井美恵子、松浦理英子など。

B:小松左京の小説は昔よく「思弁的」とよく書かれていたが、ニュアンスとしては自分の考えるこの系統に近い。

中学生の頃に中島梓を読んだ影響はかなり大きい。「ベストセラーの構造」「道化師と神」、漫画論など。すっかり忘れかけていたが、入口として中島梓があって、そこから上記のAやBやSF・ミステリ・ファンタジー論、社会批評、理系のノンフィクション、少女漫画論、橋本治、クトゥルー神話、季刊「幻想文学」などへとすんなり進めたので。


1009

ついに「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観てしまった。誰もが「パロマちゃんかわいい」と絶賛している。パロマちゃんが登場してから、風のように去るまでだけの時間帯を繰り返し観ていたい。


1010

先日のインタビューを書きおこして整える。だいたい半分はできた。


1011

10月なのに真夏日になってしまい、日差しも強い。秋冬のスーツを着たら変な感じになる。


1012

急に秋っぽくなり、雨模様になり、涼しさが迫ってくる。それでもまだ半袖でないと暑すぎる。

インタビューの書きおこしは残り20%くらい。話の順番を整えるべきか、そのままにするべきか悩む。


1013

寒くなった。いきなり秋が来て、そのまま午後には秋の半ばを過ぎたよう。


1014

午後2時から「ベレー帽と~」の次の本の打合せで、お互いにひたすら話す。終了して時計を見たら午後6時前だった。大体のイメージや完成像がはっきりして、共有できた。ほとんどすべての時間を通じて、物事が進展した。


1015

「エセ―」「調理場という戦場」を参考にしてもらうためにお送りする。


1016

曇りで寒い。土日にやるべきだったことが少し先に回ったので、インタビューを完成させたい。

と思いつつ、頭に入る容量が一杯になってしまった感覚がある。頭が少しも動かない。


1017

DVDで「ザッツ・ダンシング!」を観たら頭がすっきりした。「普通の人の音楽遍歴」がまとまった。やっと第一稿まで。


1018

去年の今頃も並行して幾つかの原稿を書いていた。今年は短い原稿に加えて、もう一冊の編集・構成も追加された。05号が二つに分裂したようなものなので、ページ数が少なくてもいいやと開き直り気味になっている。


1019

美学校の映画と音楽に関する講座をZoomで受けている。今日は二回目。


1020

プレゼント用に買おうと思っていた横尾忠則のマスクを購入する。


1021

「普通の人の音楽遍歴」の追記をお願いした原稿がもう戻って来た。あとは自分が残りの原稿を書けばよいだけになってきた。それでも本の印刷完了は来月の20日あたりか、延期して12月くらいになりそう。


埼玉のスーパー「とりせん」で聴き覚えのある曲が流れていると思ったら、Lampの「ヱンド・オブ・ア・ホリデヰ」だった。それなら今度は「日本少年の夏」もよろしくお願いしたい。


1022

何かの参考になるかと思って読み始めた石原千秋の「読者はどこにいるのか」(河出文庫)が大変ためになる内容で、これから歌詞について何かを書いてみたい、Zineでも出してみたいという人にはお勧めしたい。


1023

文章を書いているうちに、自分でも思いがけない発見が二つか三つほどは出てきてくれないと、今ひとつ意欲がわかない。これは贅沢で、我が儘で、無茶な条件なのだが、自分自身の内心の声なので自分で無視しづらい。


1024

03号の「フリッパーズ・ギターの時代とことば」って何を話してたんだっけ、と確認のために読み始めたら20ページもあって参った。この続きは「続・フリッパーズ・ギターの時代と言葉、または『まぼろしの後半戦』」として30ページくらいになりそう。


文フリのブースの場所が決まった。「ツ-09・10」なので、隅っこの方になる。05号が間に合うかどうか、自信がなくなってきた。予告ができない。


1025

渋谷駅近くの渋谷ヒカリエで「渋谷〇〇書店」という貸しスペース的な企画をやっている。個人で棚を借りて、好きな本を置けるようなので可能であれば12月頃に参加してみたい。


総集編を作るとしたら小さいサイズで二冊に分けたい、と思っていたがB5のサイズで字の組み方を二段で小さめにして、薄い紙で全一冊というのもいいなあ、と考え直す。それを作ってから新書サイズで上下二巻に分けるのもいいし、迷う。どっちも作ってみたい。


1026

「最小限の手間でZineを作って売るために」というガイドを書く。

意外と簡単なようでいて、実際は手間がかかる。それがZine作りである。手順を1~3に分けて、それぞれをまた10くらいの段階に分けて書く。最後にエピローグ的な部分を追加で書くようにしたら、上手く書けた。と言っても中盤の何か所かはまだ書いていない。どうも冒頭と最後ができないと、真ん中を書きづらい。


1027

「最小限の手間でZineを作って売るために」を修正して書き足し、削ってまた書き足しと、あれこれいじっているうちにおよそ一万字になった。一応はこれで書き終えたと言える段階。


1028

またあちこち手を入れて、レイアウトも整えて、推敲に入れ込み過ぎてずっと直していたくなる。


1029

今日はFG解散から三十年とのこと。

最近ますます「ヘッド博士の世界塔」と「帰って来たヨッパライ」には共通項が多い気がしてきた。

前者は冒頭が旅立ちで、後者もいきなり死出の旅立ちによって幕が上がる。

前者の上昇や下降のイメージは「帰って来たヨッパライ」そのものだし、後者の歌詞をひとことで要約すると「上昇下降運命は転がる玉のように」である。あるいは死というマイナスから生還して、生まれ直してゼロになったかのような、つまり「ゴーイング・ゼロ」。

あのアルバムの歌詞全体をひとことで要約するなら「おらは死んじまっただ」になるのかもしれない。

どちらも引用の集積で成り立っているし、ムシ声も出てくるし「酒はうまいし姉ちゃんは綺麗だ」という天国のパーティ会場では「グルーヴ・チューブ」が流れていそう。パーティが終ると静かに「アクアマリン」が流れている。


1030

今日は牧村さんのトークイベントが午後からあるのだが、その時間帯は視聴できなかった。見逃し配信のようなものもないので見れず。


1031

最相葉月「仕事の手帳」、中村哲「わたしは『セロ弾きのゴーシュ』中村哲が本当に伝えたかったこと 」などを読んだ。


   *次回の製作日記は12月に更新予定です*

この記事が参加している募集

#文学フリマ

11,731件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?