泣く子も黙る〈なまはげ母ちゃん〉のつもりだったけど。
なまはげ母ちゃんと言っても、
怒鳴って怒り炸裂の恐ろしい神の化身、
いや、悪魔の使いか、
子どものすることなすこと、
イライラがピークに達して
エネルギーを発散させるその恐ろしい姿は
人様にはお見せできないほどの形相で
家の中を闊歩していたなまはげのようなお母ちゃんだった、わたし。
なまはげよりも
般若よりも
エンマ様でもかなわないほど
その形相は恐ろしいものだったと思う。
外では穏やか、
悪目立ちもしないで無難にやり過ごしている。
それが、一歩家に入ると、
不思議なほどにイライラがふつふつ湧いてきて
些細なこともマイナスに捉えてしまっては
周りに当たり散らしていた。
自分の理想通りにいかないモヤモヤは
好き勝手している息子たちの言動にもピリッと刺激的で。
恐ろしい形相で立ち向かえば
世の中が好転すると思いこんでいた。
それなのに、うちの息子たちときたら
そんな恐ろしい状況でもまったくもって効き目がないくらい、
この世のものとは思えないくらいの形相の母をも上回るくらいの
小憎たらしい悪魔と進化していくのだった。
目には目を、歯には歯を。
悪魔には悪魔の対応を。
息子たちの悪態を正そうとして力でねじ伏せようとも敵わない。
母の力攻撃に負けまいとさらにパワーアップする様子に
さらに追い打ちをかけるように仕返しの堂々巡りだった。
何をどうしても思うようにいかない育児に
本当に嫌気がさしていた。
それに合わせて終わらない家事。
どれもこれも解決方法が見つからない。
毎日イライラの負のループの沼に
どっぷりとハマってしまっていたーーー。
いつまでたっても慣れない育児、
それも三歳差の男子の不可解な行動に
書店や図書館で本を読み漁っても
ぴったりくる情報に出会えず
イライラの毎日は変わらなかったんだ。
状況を変えるためには環境整備だ、
と私は仕事を変えてみた。
だけど結局は状況は変わってなかった。
そんな中で見つけた新しい自分。
自分を癒す方法を見つけた。
それは、自分の中の思い込みを手放してみること。
いざやってみたら
えっ??って思うくらい
心がふんわり軽くなった。
ふんわり軽くなったついでに
息子たちのこともよく見えるようになったら、
発達の凸凹があるがゆえに
わたしの理解の範疇を超えた言動を繰り返していることに気づけた。
小学校の入学式で、来賓の方に注意されるほどおしゃべりしてふざけていたことも、
授業中に急に思い出して校庭にダッシュして気になっていた水道に行ってみたり、
外での体育の授業でアリの行進を夢中になって追いかけていたり、
大好きな恐竜の図鑑や、
録画したNHKの恐竜の特番を何度も見ては繰り返し絵に描いてみたり。
その「大好き」が講じて、
特番の解説よりも先に特徴を喋ることもよくあった。
最初は衝動性や不注意が多いADHD、
後から顕著に見えてきたのは自閉スペクトラム症。
そのあとは、
コミュニケーションの苦手から
しだいにクラスメイトとの距離を自ら離していくことにもなっていった。
みんなと一緒にいられない息子を不憫に思い
あーだこーだ指示を出していたけど
全く応じてくれない。
それは、
自分が一番正しいことを知っていたからだったなんて。
それもこれも、私の中の当たり前と思っていたことを手放したから、
「答えは一つ、ではない」
ってことに気づけたことはとても大きかった。
そう。
変えるべきは、
なまはげ母ちゃんだった私。
今では
「なまはげ母ちゃん」だった過去を手放して、
息子たちの「いま」を受け入れ
心穏やかに過ごせていることに喜びを感じている。
思い込みを手放したら、
ものの見方が変わって
型にはまっていた〈固定観念〉を崩せた。
学校は〈みんなと同じ〉集団生活の場、
そう思っていたのも私のなかの〈固定観念〉。
だがしかし、みんなと同じじゃなくていい。
学校でのルールが守れなくなるのは良くない、とは思うけど、
周りと違うことができることは実はすごい能力なんじゃないか、って思えたら
型にハマった考えは捨ててもいいんだ、
「こうあるべき」で縛りつけられていたのは 子どもじゃなくて自分だったんだ。
ものの見方が変わると気持ちが楽になって
かつての〈なまはげ母ちゃん〉もどこかへ消えてしまったよう。
息子に発達の凸凹があったって、
悩んだって仕方がないのだから気にしない。
同年代の子と同じように勉強ができなくたって
「自分はこれでいいのだ!」と思えていたら
それでいい!と母親として思えるし。
できないことに目を向け、深掘りしなくても
やってて楽しい・好きだと思えることに
いきいきとしているほうがどんだけいいか。
泣く子を鬼の形相で黙らせるような
ピリついた空気感じゃなく、
大好物でお腹がいっぱいになるような
ハッピー感が
お互い幸せってわけ。
考え方ひとつで
世界が変わった気がする。
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