巷に溢れる『人生本』の決定版!?

『猫に学ぶ いかに良く生きるか』(著者/ジョン・グレイ 訳者/鈴木晶 発行/みすず書房)をさっき読了しました。猫好きや猫と暮らす人には避けては通れない本です。ついつい手に取ってしまうはずです。表紙の猫も何だかこちらをじっと見つめていますし。

勘の鋭い人なら「発行/みすず書房」だから一筋縄ではいかないな、と思うはず。その通りです。この本の著者は政治哲学者なので、それなりに読みごたえがあります。著者は、さまざまな哲学書や小説を引用しつつ、人と猫の関係を解説しながら、猫とは何か、人間とは何かを探ります。引用された原書を読んでみるのもスピンオフ的な楽しみかもしれません。ちなみに私の大好きな『猫と庄造と二人のをんな』(著者/谷崎潤一郎)も紹介されています。

本書の151頁から156頁に「いかに良く生きるかについて、猫がくれる十のヒント」があります。以下に記します。1.人間に対して理性的になれと説教しないこと 2.時間が足りないと嘆くのは馬鹿げている 3.苦しみに意味を見出すのはやめよ 4.他人を愛さなくてはならないと感じるよりも、無関心でいるほうがいい 5.幸福を追求することを忘れれば、幸福が見つかるかもしれない 6.人生は物語ではない 7.闇を怖れるな。大事なものの多くは夜に見つかる 8.眠る喜びのために眠れ 9.幸福にしてあげると言ってくる人には気をつけろ 10.少しでも猫のように生きる術を学べなかったら、残念がらずに気晴らしという人間的な世界に戻れ

どうですか? よく生きるための参考になりましたか?

「十のヒント」だけを一読しても何だかよくわからないですが、本書を151頁まで読み進んでから、このヒントを読むと「なるほど」と腑に落ちます。

猫好きで知られる養老孟司先生が本書の裏表紙で推薦文を記しています。「(…)人生の重荷を感じている人には、本書を読むことが救いにはならなくても、最低〈気晴らし〉にはなると思う。猫好きにとっては面白い上に感動的でもあり、つい読み切ってしまう。」まさにその通りです。未読のかたは、ぜひご一読を。猫好きも、そうでない方も。

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