大事に読み書きしよう。Let's read and write carefully.

『アイリスへの手紙』(マーティン・リット監督)という映画を観たのは30年程前です。記憶による記事の執筆なので、曖昧さはお許しください。原題は『Stanley & Iris』。アイリス役はジェーン・フォンダで、スタンリー役はロバート・デ・ニーロ。物語は単純で、シングルマザーのアイリスとコックのスタンリーのラブストーリー。どちらも若くないので疾走感はないけれど、落ち着いた、ややじれったい感じで展開します。アイリスもスタンリーも、お互い中年で、それなりに人生に疲れているので、ぼんやりした諦めのようなものに包まれています。どう頑張っても、この先は見えている…。

この映画のポイントは、スタンリーが文字の読み書きができないこと(非識字者)です。スタンリーは子供のときから転々としていたので、読み書きの教育を受けることができずに、そのまま大人になりました。それを隠してコック(とてもうまい料理を作る料理人)をしていましたが、ちょっとしたことで非識字者であることがバレて、あっさりクビになります。映画を観ていると、実はスタンリーには発明の才能があることもわかります。能力はあるのに「車の免許も取れない」「まともな職にも就けない」と、どん底に落ちたことを嘆くスタンリー。彼に手を差し伸べるのはアイリスです。彼女が文字の読み書きを教えるのです。

アイリスのお陰で文字の読み書きができるようになり、スタンリーは彼の能力に見合う「まともな職」に就くことができ、ついに町を離れるときがきます。二人の最後の会話は、たぶん、こんな感じだったと思います。「電話をちょうだい」「いや、手紙を書くよ」。男は女を捨てて日の当たる場所へ。男は成功を手にして、きっと変わっていくだろうと。それは裏切りですらない普通のことで。電話どころか、まして手紙なんて。女は期待していません。二人は特に将来の約束をしていたわけではありません。全てを捨てて男を追いかけるほど若くもありません。女はいつもの町で、いつものトラブルを抱えて、いつものように生きていくだけです。男の成功に少しは役立ったという思いを胸に…。

でも手紙は書かれ、届けられます。

ラスト近くのシーンはとても象徴的です。車を運転するスタンリーがアイリスの背中を追いかけています。ゆっくり運転しながら。アイリスは気づかないようすです。(記憶違いだったら、ごめんなさい。)

追伸

この映画を映画館で観た当時、私は20代後半のライターとして、広告コピーや取材記事などを書いていました。毎日文章を書いて、それがお金になって暮らしていける、その素晴らしさを感じていました。だから、この映画で改めて読み書きの大切さが身に染みました。30年経って、今は無職なので、アマチュアライターとしてnoteに記事を書いています。今後とも、大事に記事を書き、あなたの記事を大事に読んでいきたいと思います。(ちなみに、この『Stanley & Iris』がマーティン・リット監督の遺作です。)

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