本音と建て前(とある大企業の禁忌目録#19)

本音はみんな分かっているが、直球で伝えたりするとそれが部門間の争いに発展したりする。だから雰囲気が悪くならないようなコミュニケーションをとる技術は、大企業においては重視されるスキルの一つだと思う。

本音と建前の例を少し挙げてみよう。
建前:将来的にはこの部分も提供できます。
本音:この機能の提供には何の目途もたっておらず、提供できなかったとしても責任を持てない。

建前:4月に開始できれば、10月に成果が出ます。
本音:調整には難航している。4月に開発開始できるめどがついていないので、10月の成果は約束できない。

建前:外部リソースを使って効率的・効果的にプロジェクトを進めます。
本音:社内にあてにできる人材がいないので、外部に丸投げしてノウハウが蓄積できないのは覚悟でやります。

建前:事情があって、一旦プロジェクトを止めています。
本音:社内調整に失敗してどうにもなりません。このお仕事はなくなりました。

言葉通りに受け取ってはいけない表現が随所にあるが、それを難なく理解できる会議参加者たち。若い頃はよく分からずに地雷を踏むことも多かったが、表現の意味がわかるようになってくると、微妙な意思伝達ができるようになる。まるで剣道で間合いをはかるように(これをアートといわずに何というのか)。
責任が伴うときは、失敗しても自分の責任にならないような言い方にする。また、成功したときには最大の貢献に見えるよう、都合の良いポジションを取っていくようにする。慣れてくると自然とこういうことができるようになる。

こんなコミュニケーションのありかたを理解してゲーム性のあるものとして楽しめるか、それとも悪しき習慣だと思うか、はたまた本音で話して苦労する道を選ぶのか。それぞれの考え方次第だと思う。社長や幹部になるような人はよく心得ていて、本音と建て前をうまく出し入れしているように見える。会社は微妙なニュアンスで進んでいくのだ。

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