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量子計算学習ノート

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量子コンピュータと量子通信 (オーム社) の読書ノートです。
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2023年8月の記事一覧

量子計算学習ノート - 非クローン化定理

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 従来の計算においてはデータ、つまりビットのコピーは容易に行える。実際、コピー先となる0で初期化されたビットを用意できれば、cnotゲートを通すことでコピー元ビットを複製することができる。コピー元ビットを$${x}$$、cnotゲートを$${U_{CN}}$$とおくと、次の式で証明される。 $$ U_{CN}(x,0) = (x, 0 \oplus x) = (x, x) $$ 一方で、量子ビットに

量子計算学習ノート - 量子回路

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 量子計算における回路、量子回路は、従来の計算における論理回路とは異なる次のルールが存在する。 ループが存在しない まず量子回路にはループ、つまり回路の一部分が他の部分へのフィードバックになることがない。これが許されると特定の量子の状態が他の量子の状態となって処理されることになる。これは量子回路(少なくともゲート式の量子コンピュータ)においては禁止されている。 ファンイン(FANIN)が存在しない

量子計算学習ノート - 多様な基底による観測

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 重ね合わせ状態 $${\alpha |0\rangle + \beta |1\rangle}$$ が与えられたとき、$${|\alpha|^2}$$で$${|0\rangle}$$が、$${|\beta|^2}$$で$${|1\rangle}$$が観測される。従来の計算においても同様にビットが0なのか1なのかを観測することができるが、量子計算においてはもう少し多様な観測を実施することができる。 例え

量子計算学習ノート - 多量子ビットゲート

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 単一量子ビットゲートを多量子ビットゲートに拡張することを考えよう。単一量子ビットゲートは2 x 2 ユニタリ行列によって記述しうるものであった。 先に結論を述べてしまおう。あらゆる多量子ビットゲートは単一量子ビットゲートとcnot(controlled-not)ゲートの組み合わせによって構成できる。 cnotゲートとはどんな量子ビットゲートだろうか。これは2つの量子ビット、入力量子ビットと出力量子

量子計算学習ノート - 単一量子ビットゲート

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 従来の計算器は配線と複数の論理ゲートの組み合わせでできている。量子計算においてもこの考え方を応用して情報処理を考えることができる(いわゆる量子ゲート式の量子コンピュータ)。 従来の計算機において、単一ビットに働く論理ゲートとして唯一意味のあるものはnotゲートである。このゲートは0を1に、1を0に状態変換する。 量子計算においても同様の状態変換を考えることができる。つまり$${|0\rangle}

量子計算学習ノート - 多量子ビット

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 2個のqubitが存在するときのことを考える。従来のビットであれば取りうる状態は00, 01, 10, 11の4つ。qubitでも同様に $${|00\rangle, |01\rangle, |10\rangle, |11\rangle}$$の4つの状態は存在する。従来のビットと異なる点は、これらに対して重ね合わせ状態をとる点だ。つまり、次のような状態をqubitでは許容することになる。 $$ \a

量子計算学習ノート - 量子ビット

この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。 従来の計算、古典計算ではビット(bit)を情報の最小単位として扱っていた。量子力学系を利用した量子計算では類似の概念として量子ビット(qubit)というものを扱う。 古典計算においても、ビットは0か1かという数学的な対象として議論されていたように、量子ビットも数学的な対象である。数学的な対象として議論することによって、それを実現する物理系に依存しなくて済むようになる。 量子ビットでは、従来のビット