量子計算学習ノート - 量子回路


この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。


量子計算における回路、量子回路は、従来の計算における論理回路とは異なる次のルールが存在する。

  • ループが存在しない

まず量子回路にはループ、つまり回路の一部分が他の部分へのフィードバックになることがない。これが許されると特定の量子の状態が他の量子の状態となって処理されることになる。これは量子回路(少なくともゲート式の量子コンピュータ)においては禁止されている。

  • ファンイン(FANIN)が存在しない

FANINとは、2つ以上の状態を結合して1つの状態を出力するような回路のことを言う。量子回路において観測以外の部品はユニタリによる状態変換でなければならない。FANINは明らかに可逆ではないのでユニタリ性をもたず、量子回路では許容されない。

  • ファンアウト(FANOUT)が存在しない

FANOUTとは、FANINの逆で1つの状態から2つ以上の状態を出力するような回路のことを言う。これも当然ユニタリ性がないので量子回路では許容されない。また、量子計算においては従来の計算において容易に行えるビットのコピーができないことが知られている。

  • 制御ユニタリゲートが存在する

量子計算では1つの制御qubitの状態をもとに1つ以上の標的qubit群に対して量子ゲートをかけるかかけないかをコントロールできる、制御ユニタリゲートの存在を許容する。
厳密に説明すると、このゲートは制御qubitが$${|0\rangle}$$であるとき、標的qubit群に何もしない。一方$${|1\rangle}$$であるときに標的qubit群に対して事前に定義された量子ゲートを適用する。
標的qubit群が1つのqubitでかつ、事前に定義された量子ゲートがnotゲートである場合、これはcnotゲートのことである。量子回路ではcnotゲートの一般化されたゲートである制御ユニタリゲートが許容される。

  • 観測が存在する

量子回路では観測も有用な演算として利用される。観測はこれまでにも述べてきた通りで、到達した量子ビットの状態が $${\alpha|0\rangle + \beta|1\rangle}$$であったとき、$${|\alpha|^2}$$の確率で従来ビットの0を、$${|\beta|^2}$$の確率で従来ビットの1を出力する演算である。

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