量子計算学習ノート - 多量子ビット


この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。


2個のqubitが存在するときのことを考える。従来のビットであれば取りうる状態は00, 01, 10, 11の4つ。qubitでも同様に $${|00\rangle, |01\rangle, |10\rangle, |11\rangle}$$の4つの状態は存在する。従来のビットと異なる点は、これらに対して重ね合わせ状態をとる点だ。つまり、次のような状態をqubitでは許容することになる。

$$
\alpha_{00} |00\rangle + \alpha_{01} |01\rangle + \alpha_{10} |10\rangle + \alpha_{11} |11\rangle
$$

この重ね合わせ状態は$${|\alpha_{ij}|^2}$$の確率で $${|ij\rangle}$$であるような状態だ。またこの確率の和 $${\sum_{ij} |\alpha_{ij}|^2}$$は1となる。

また、同時に2つのqubitの状態を確定させるのではなく、片方のqubitの状態だけを確定させることもできる。例えば第1qubitが$${|0\rangle}$$であることが確定した時、全体の状態は以下のような状態になる。

$$
\frac{\alpha_{00} |00\rangle + \alpha_{01} |01\rangle}{\sqrt{|\alpha_{00}|^2 + |\alpha_{01}|^2}}
$$

単に $${\alpha_{00} |00\rangle + \alpha_{01} |01\rangle}$$ としてしまうと、$${|\alpha_{00}|^2 + |\alpha_{01}^2|}$$の値が1にならない。このため分母の$${\sqrt{|\alpha_{00}|^2 + |\alpha_{01}|^2}}$$で帳尻合わせが行われている(正規化という)。

2qubitの状態において、次の状態はEPRペアもしくはBell状態と呼ばれ、量子計算において非常に重要な状態である。

$$
\frac{|00\rangle + |11\rangle}{\sqrt{2}}
$$

EPRペアは片方のqubitの状態を測定した瞬間、もう片方のqubitの状態が確定するという、非常に強い相関を持った状態である。この相関はいわゆる量子もつれ(エンタングルメント)と呼ばれるものであり、従来の系に存在するいかなる相関よりも強いことが示されている。この相関により、量子計算を用いれば従来の計算機を超える処理をおこなえることが暗示される。

話を多qubitの話に戻そう。一般的にはn個のqubitに対する状態は次のように記述できる。

$$
\sum_{i_1,i_2,\cdots,i_n}\alpha_{i_1i_2 \cdots i_n} |i_1i_2 \cdots i_n\rangle
$$

ここで $${i_j}$$は0もしくは1を取り、係数の絶対値の二乗和$${\sum_{i_1,i_2,\cdots,i_n}|\alpha_{i_1i_2 \cdots i_n}|^2}$$は1となる。

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