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【映画鑑賞】2023年5月(今月の10本)

今月も10本映画を観ました。自分には何故か確信があるのですが映画を観続けるというのは人生を変える可能性があると思っています。

自分は何を愛するのか。どんな言葉に胸を躍らすのか。残りの人生でどんな景色を見たいのか。やはり50本も見ると確信を得て変わってきます。Filimarksの評価がどうとかインフルエンサーの評価がどうとかではなく自分の好き嫌いがこの上なくしっかりとしてきています。

50本も見ていると自分にとっての宝物のような一言にも出会えます。それはきっと自己啓発本を何本読んでも解らなかった事でしょう。それでは今月もいってみましょう。

第1位 はじめての歌(Begin Again) (2013年 U-nextで視聴)

キーラ・ナイトレイ演じるグレタとマーク・ラファエル演じるダンの2人が主人公の映画。個人的にグレタもダンのどちらの「在り方」も好きだ。2人の言葉と音楽による掛け合いによってこの映画が成り立っている。ジェリーマグアイアやタクシードライバーやディランなどの映画やミュージシャンへのリスペクトがこの映画から溢れている。

この映画で好きなシーンは本当に沢山ある。

グレタとダンが出会ってビール片手に音楽論議をする場面。
グレタとダンがプレイリストを見せ合いイヤホンを共用して踊るシーン
ダンの娘がストリートセッションにおずおずと入ってくるシーン。
ストリートの子供達にストリートセッションで歌わせるシーン。
忘れえぬ元カレの留守電に良いキャラしている太っちょの友達と曲を演奏で吹き込むシーン。

グレタとダンが人生における「真珠」と「糸」の話をしていた。2人にとっての真珠は極めて近い。そして観ている自分も近いと感じた。だから名シーン連続で真珠だらけに見えた。ダンがアルバムを作るにあたって若いプロデューサーをつけようとするがグレタは「何となく貴方に頼みたい」という。この「何となく」というのがとても良い。この「何となく」をグレタはとても大事にしている。ダンに契約しようと持ち掛けられても「自分は自分と猫の為に作曲している」と返す。グレタは何となくダンの娘のバイオレットにセッションに参加するように持ちかける。彼氏のデイブが自分でなく誰かを思って新曲を作った事も悟ってしまう。

彼女の美意識と価値観はきっとこの「軽やかさ」なのだろう。それは彼女の歌声の質に表れている。好きでずっとひきづっていた元カレのデイブのライブに行って彼のライブとその取り巻きを見る。そして彼の元に戻ったらその軽やかさが失われてしまう事を悟ったのではないか。またレーベルと契約する事によってもその軽やかさが失われる事を恐れた。例えばガガ様なら元カレのステージに飛び入りしてスター誕生みたいになった筈だ。今風の一つの幸せの在り方を学んだ気になれた。

第2位 Air(2023年 Amazon Primeで視聴)

企業の中で働くという事はまずその中での調和を求められる。仕事というものの中に自分のオリジナリティやクリエイティブを出していたらそれこそ衝突、軋轢など身体が幾つあっても足りない事態になる。

だが人生の中では「心の声を聞く」事をしたほうがある。それは何度も訪れる事ではない。

ソニーはマイケルジョーダンとナイキの契約に人生をオールインした。そして彼にとっては数々の掟破りをしても達成したい事だった。上司に怒鳴られる事を覚悟で、赤色を入れ過ぎる事で発生する罰則金を毎回ナイキ側が払う事を入れるというクレイジーな提案、最終的には社長のフィルが靴の利益の一部をマイケルジョーダンに渡すという業界の掟破りをブチ通してしまう。

会社のルールや業界のルールは何のためにあるのか。時として破られる事でゲームチェンジャーになれる。「心の声を聞く」そしてそれに従う勇気をもっていた中年のオッサンのストーリーである。80年代の音楽、分厚いデスクトップコンピューター、ダイヤル型の電話機がオッさんにとって郷愁だしエモ過ぎるのだ。

第3位 The First Slam Dunk(公開中)

前評価が良過ぎた為に期待値を超えて来なかったのが残念過ぎる。。

観終わった瞬間に「ズルいな」と思った。だってスラムダンク原作の世界に完全に乗っかった映画だもん。でも監督が原作の井上雄彦先生と知って驚愕した。。凄いよ、貴方。原作はコミカルな部分とバスケットの前略、選手の躍動感が他のバスケット漫画よりずば抜けている。原作は陽の部分が多いが映画では陽と陰のメインのバランスを上手く取っていると感じた。

「生」と「死」バスケットの試合の超ド級の躍動感に対比してリョウタの父親、兄の相次ぐ死。

生と死の対比は静と動というバランスの形としても又取っている。山王と湘北の世紀の一戦にフラッシュバックで差し込まれる映像は沖縄の馬鹿みたいに広い海や波などの静を感じさせる自然だったりする。特に個人的に好きなのが山王のエース沢北が神社にお参りする時に亀が口を開けて泳いでいるカットを差し込んでいる所だったりする。

この映画は無駄な会話がない。感情が無になったり黄昏れたり爆発したりその揺らぎや波を見せている。その感情を最小限の言葉やあるいは言葉以外で表現する。これは日本文化の良い所、品のように思えるのだ。あとこの映画のすごい所は音楽の使い方がとてつもなく良い。10Feetのエモい音楽に対比して無音やシンプルな効果音も多用している。本当に無駄がない。何も足さない何もひかないの世界だ。この井上雄彦先生の他の漫画も音楽がありリズムがある。そして絵力が圧倒的にある。有難う井上雄彦先生。

第4位 RRR(公開中)

インド映画て怪力ホルモン度高め過ぎる。。

監督曰く「火」のラームと「水」のビームの友情と闘いの映画と言う。主人公2人は実在するインドの知られざる英雄らしくその2人が実際出逢ったらどうなったかというのが着想らしい。

ただそこに突っ込みを入れるとすれば2人とも「火」にしか見えんかった。3つのRはstory、fire、waterのRらしい。だがアーユルヴェーダを知っている人なら誰でもわかるようにこの世界の要素をインド人は「火」「水」「風」に分けている。となれば風がこの映画にさ欠けているよなーという気がしないでもない。

アクション、歌、ダンスのてんこ盛りのムービング。特にアクションがこっちの予想をナナメ上をいく肩車アクションシーンは力技過ぎて笑ってしまった。最初のstoryのシーンはイギリス国王が胸糞過ぎるし、ラームのシーンは力技すぎてお前は三国志の呂布かよと思う無双ぶりだし、ビームはオオカミを捉えるつもりが何故か虎を捕らえるという無茶苦茶ぶりだし。

それにしても宗教色の強い優秀な人が沢山いるこの国にこんな破壊的なエンタメを作れる人が存在するのだろう。インド。謎は深まるばかりである。

第5位 Blue Giant(公開中)

漫画は全巻みていてその総集編みたいな映画だったから驚きはなかった。だけど映画になる事によって見えて来たものがあって色々感じたし考えもした。

最近世界的武道家でもありジャズドラマーでもある日野晃さんのWSを受けて仰っていた事が重なって見えた。

「人間の肉体は感情を入れている袋、感情が全てで健康が大事な訳ではない」
「自分というものは大切でない。自分は他人の心の中にしか存在しない」

ユキナリ、ダイ、玉田。

其々の個性がある。

ユキナリは勝ちたいと思い戦略を巡らせる。ダイはただただ激しい強いジャズを魅せたいそして玉田はこの3人の絆を何よりも大切にする。どの在り様も俺はわかるしユキナリだった時期も玉田だった時期もダイだった時期もある。

玉田は初心者である事に、ユキナリは戦略に溺れ過ぎる事でスランプに陥る。だがダイにはスランプはない。玉田やユキナリは形は違えど周囲からの評価を意識する事に軸がある。だがダイは違う。ダイは内臓をひっくり返すくらい自分を曝け出すなど朝飯前で何度でも観客の前で死ねる。ダイの在り様はジャズそのものだ。ダイは自分を語る事はない、常に語られる側だ。

ジャズと他の音楽の違い。それはソロを重要視する事。自分の道を極め生きていく者の為同じメンバーで組む事を重要視しない定めにある。赤色より熱く青色に光った者たちの別れはそれ故にジメジメせず執着がない。玉田の在り様は好きだ。だが彼の生き方はジャズではない。ユキナリも周りのジジイジャズプレイヤーと心根では同じように見える。アーユルヴェーダ的に言えばユキナリが風、玉田は水、ダイは火だ。ただただこの世界観を構築した作者に感服するばかりだ。

第6位 Mondays/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年 Amazon Primeで視聴)

この映画をあえて在宅の月曜日の昼休みに見た。丁度良い長さの映画だった。アイデアと設定の低予算映画だが良く考えると結構深い映画なんじゃないかと思えて来た。それはこの映画の部長の漫画のようだ。

タイムループものだけどこの映画で言いたかったのはこれだと思う↓

「おい、サラリーマンよ。タイムループするような生き方してんじゃねーよ!」

この映画は同時にサラリーマン讃歌の映画でもある。自分は癌闘病でこのサラリーマン的タイムループから抜け出した。だからタイムループに乗っている幸せもあり不幸せもあると言う事が解る気がする。主人公の吉川は今のプロジェクトが終わったら憧れの人がいる会社に転職しようとしている。

彼女にとって「変化」する事が自分が求める事だと思い込んでいる。だから周りの人は「変わろうとしない人」として見下している。だがタイムループで上申する為に一人一人の事を深く知る事になる。部長が漫画家を目指している事も知る。会社を離れ夜景の美しさや憧れの会社の嫌な所も見える。余白を持ち一歩外に踏み出した事の恵みだ。

そして1週間タイムループする日常の中で後輩君や吉川は仕事の面でも急成長していく。つまり変わらないように見える日常に見えても「視点」を変えれば違った日常に見える。また繰り返す日常をフィードバックする習慣があれば人は勝手に成長するものなのだ。

私はそれを癌闘病で知った。強いと尊敬していた人のダメな所も弱いと思い込んでいた人の背負っているものも見えた。だから人間関係が変化した。そして余白を日常に持たせフィードバックするようになった。このレビューを書いているのもその為だ。同じような日常であっても同じように過ごさないのがより良く生きるコツなのだ。

ちょっと最後はハッピーエンドで小さくまとまり過ぎじゃないとは思う。タイムループ的に仕事に巻き込まれている人って周りをみてないし損得で動くしあんまり会社に依存しないほうが良いんじゃないのってのが自分の結論。それにしてもタイムループについての部長プレゼンは良いセンスのコメディだよね。サラリーマンて本当大変だよなぁ。
そんな高めのギャグセンスを挟みながらそこらの啓蒙本より深い視点を放り込んでくるこの映画は個人的には結構高評価である。

第7位 Everything Everywhere All at once(2023年 U-nextで視聴)

「Everything Everywhere all at once」

メタバース、多層空間を描いたコメディでもあるが切なく苦しく悲しく、訳わかんないくらい心を揺さぶってくる作品だった。

アメリカでコインランドリーを細々と経営しているエブリン。夫は気弱で娘はデブのレズ(失礼)。そんなエブリンがマルチバースに蔓延る悪を倒す為に巻き込まれるという無茶苦茶なストーリー。この映画内では同時並行世界があってエブリンは別の世界ではシェフであったりソーセージの世界にいたり石であったり世界的なアカデミー女優であったりする。この映画の主人公エブリンはミッシェルウーはこの同時並行世界ではアカデミー女優である所がリンクする。

同時並行世界からの自分から力を得る為には「飛ばない」といけない。飛ぶ為には「何か馬鹿げたトンデモない事」をする事である。

ワタクシがこの映画の1番好きなのはココで飛ぶ為にアナルにディルドを刺す事を試みる、それを阻止する。それは最高に笑えるのだが「別の世界に飛ぶ為には何か馬鹿げた事」をするのが有効というのはこの世界でも言える事で結構深さを感じるのだ。

第8位 鑑定士 顔のない依頼人(2013年 U-nextで視聴)

最初の序盤は気持ち悪くてしょうがなかった。世界的鑑定士ヴァージルは初老の紳士で人嫌い。

けど引きこもりという訳でなく高級レストランで1人で飯を食ってたりする。ビリーと共謀して高価な絵画を安く買い落として自分のコレクションにしたり高く転売して儲けている。そして金庫のように厳重に監視された部屋には美女が描かれた絵画が飾られておりそこで一時を過ごすのが至福の時というキモ男だ。

一方のクレアは広場恐怖症で何十年も外に出た事のない女性だ。鑑定を依頼されたものの壁越しの会話のみ、徐々に気になりだしたヴァージルが家を出たふりをしてクレアを除き見するのはキモ男の極みだ。顔のない依頼人という割には序盤でその美貌を曝け出し徐々に惹かれあうように見えるヴァージルとクレア。ただ2人ともお金はあり生活は出来ているもののエネルギーが乏しく何処か傷を舐め合っているようにしか見えず恋愛のようには見えない。それはいわば高級ペルシャ猫を可愛がっているようにしか見えない。

この辺から観るのがキツくなり続きを観るのを次の日に回した。

観終わって成る程とは思った。そうか、ヴァージルが仲良かったロバートもその彼女のサラもクレアもその使用人もビリーもグルで壮大な計画でヴァージルを騙していた事が明らかになる。ヴァージルが最初に飯を食っていた映像で最後もプラハで1人で飯を食う映像で終わる。だがただ1つ変わっているのは「人を待っている」というヴァージルの内面だ。

「鷹物にも真実が混じる」

これがこの映画の主たるテーマだ。この映画はまるでオークションされる鷹物の絵のように何処かに胡散臭さ丸出しで進行する。だがヴァージルのクレアへの想いは本物でクレアも騙したとはいえ何処かヴァージルへの思いがあったのではないか。だからビリーもロバートも使用人もヴァージルに対し鷹物である「サイン」を残したがクレアは残していない。卑近な例だが格闘技選手やブレイクダンサーの喧嘩のような煽り、かぶくのは鷹物に真実を混ぜている例だ。あとはキャバクラ嬢がお客さんと付き合ったりするのは鷹物に真実が混ざった例なんじゃないかな。

だから迂闊にこいつは偽物だこいつが本物だと分ける事で見逃す事とあるんだろうな。そんな事を感じる。

第9位 ストーリーオブマイライフ(2020年 U-nextで視聴)

グレダカーヴィク監督による女性による女性の為の映画と思えた。

次女のジョーマーチが主人公だかこの四者四様の姉妹の生き方がある。

エマワトソン演じるメグは純粋に好きな人と結ばれる。ジョーは自立を目指し、エミリーは打算に揺れながらもセカンドベストな所に身を落ち着ける。ベスは音楽を愛し内向的な性格である。

経済という足枷、自由という孤独をこの上なくどストレートに描いている。

シアーシャローランの体癖7種とも思える捩れ演技が抜群だった。身体の動きから世間と戦ってやるぞという動きが出ている。

結論は女性はこうあるべきだという枠に抑えつけられていた過去はとても不幸だけどだからといって多様性を受け入れられるような社会はなっているのだろうか。社会は少しずつ良くなってはいる。でもまだまだこの令和の時代にも課題はありそうだ。

第10位 Hairspray(2007年 Netflixで視聴)

実は余り感情移入出来ませんでした。

1960年代の人種差別もあった時代で太っちょだけど超ポジティブなトレーシーが自らのノリの良いダンスで体形による偏見や人種差別による偏見も意にも解さず乗り越えて人気者になっていくストーリー。余りにも易々と乗り越えていくし根っからの陽気者なのでそこに葛藤はない。そこにどうしても共感出来ない。

これを見ちゃうとポジティブって大事だよね、人種差別良くないよねみたいな標語で作られた甘い砂糖菓子のようなポップコーンムービーのように思えるのだ。

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