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【3分読書メモ】「地獄の楽しみ方 17歳の特別教室」(京極夏彦)を読んで

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■基本情報

書名:地獄の楽しみ方 17歳の特別教室
著者:京極夏彦
出版元:講談社
出版日:2019/11/29
ジャンル:講義録
読書メーター:https://bookmeter.com/books/14740927

■気になったポイント(引用文+コメント)

実は言葉というのは”非常に”欠けたものなんです。不完全なんです。言葉は、この世にあるものの何万分の一、いや、何百万分の一ぐらいしか表現できないものなんです。言葉にした段階で多くは捨てられてしまいます。

<メモ>言葉は非常に不完全なものだ。思考はそのまま外界へ解き放つことはできない。だから否応なく言葉に落とし込むのだが、その際、ワードチョイスを経るうちに純粋な思考は自然と削ぎ落とされる。自分の考えと100%対応する言葉を「あーでもない、こーでもない」と選び抜くうち、思考は少しづつ変容する。

アナログというのは、連続性があるという意味です。デジタルというのは、非連続という意味です。「1」と「2」の間に連続性がないものがデジタルです。そして、言葉はデジタルなんです。

<メモ>脳内を渦巻く様々な想い・思考は、言葉に表した時点で良くも悪くも「箱」に収まってしまう。言葉にできない無数の感情は、「言葉にしようと試みた段階」(言語化)で儚く消え去ってしまう。

”愛”のような言葉のせいで、多くの日本語が死滅しかけているんです。ほかの言葉に言い換えてみましょう。違う言葉のほうが伝わるかもしれないし、そのほうがより自分の気持ちに近いかもしれないじゃないですか。

<メモ>一言で様々な概念、思い、観念を言い表わせる言葉は大変便利だが、安易に多用するのは考えものだ。

なるべく幅が出ないように、一つの意味しか持たせないように心がけて書いても、受け取るほうの解釈次第で全然違う意味になってしまうことだってあるんです。小説なんかは、むしろそこを逆手に取らないといけないんですね。

<メモ>そもそも言葉は不完全な特質のため、他者の解釈次第で発話者の思考とかけ離れた意味に取られかねない。つまり確実に"誤読"が生じる。一見ネガティブな誤読を上手く使い、読者に様々な感情を想起させるのが良い本・良い作家の要件と言える。

プロパガンダやスローガンは不特定多数を「操る」ために単純なフレーズになりがちですね。「美しい」とか「強い」とか「チェンジ」とか「ファースト」とか。

<メモ>不特定多数を操る上で小難しい言説はかえって逆効果を招く恐れがある。それよりも確実なのは「単純で力強い言葉」。加えて発言者にカリスマ性や威光があれば、なおのこと他者を容易に惹きつけられるはず。

【こんな人にオススメ】

・京極夏彦氏の熱心なファン
・ベストセラー作家の考えや理念に興味がある人
・言葉が持つ力や危うさに興味がある人

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