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【恋愛ワードを入力してください:www】邦題がおかしい。

 
このドラマの原題は「検索ワードを入力してください:www」である。すでに多くの方が指摘されているとおり、邦題がおかしい。どうして日本語になると「恋愛」になるのか。このドラマに限らず、外国の作品が日本にやってくるとやたらとピンクキラキラになったり、幼稚で薄っぺらいビジュアル&コピーになる傾向があるらしい。実際にこういう変換作業をやっているのは、どんな会社のどういう職種の人たちなんだろう?考え直したほうがいいんじゃないかな。

Wikipediaで出てきた公式サイトがこちら。

日本での公式はこれかな?

みごとにピンクですね~。「バリキャリ大人女子と年下彼氏の胸キュンラブストーリー」・・なんか薄っ!

私は続けて2周観たが、企業間の競争と政財界の癒着が絡み合う展開は文句なしに面白かった。特に終盤は国家による支配への抵抗が大きなテーマとなる。ポータルサイトで働く人間として正義と信念を貫くことができるか、議論を交わすシーンも多く、様々な課題を投げかける社会派ドラマだと思った。

にもかかわらずサイトの一番目立つところに「恋ってなに?」である。残念過ぎる。

↑ ラブストーリーが前面に出てるのは似たようなものだけど、コンテンツが充実しているのでこちらも貼っておこう。

「私の欲望は私自身が作ってる」

このドラマは、シスターフッドの物語とも紹介されている。それは確かにそうなんだが、しかし単なる女性同士の友情や助け合いではない。権力闘争を繰り広げるのも女性、暴力をふるうのも、熱く議論を闘わせるのも年下の恋人をキープするのも女性。従来描かれる男女の役割を逆転して見せているところが、すごく面白かった。野心や欲望を隠さない女性のあり方が痛快で、それなのにどうも居心地が悪いような「女性がそこまで野心的にならなくても・・」と感じている自分にも気づかされた。ユニコーンの本社からやってくる偉い人も女性で有色人種である。その設定を「珍しい」と思う時点で私にも先入観がある。まだまだである。

だから男性にはなおさら違和感を与えるかも。聴聞会でやりあった男性議員から「善でも悪でもなく屈服も反抗もしない、欲望に目がくらんで突っ走るクソ野郎!」と言われたペタミは「欲望に目がくらんじゃ悪い?」と応酬する。「なぜ君はそんな人間に?」と問われ、「親の敵討ちや前夫への復讐が動機だとでも?動機なんてない。私の欲望は私自身が作ってる」と返答する。おおお、世間から女性に向けられる幻想への強烈な一発、カッコいい!

常識を揺さぶるセリフや設定は、至るところに散らばっている。1話でペタミが男性新入社員のデート相手のことを「恋人」と呼び、「今は恋人ではなく彼女と呼ぶんですよ」と指摘される場面がある。ペタミは「あなたの性的指向が分からないから配慮したの」と説明する。確かにそうだ。私も気をつけよう。

「愛を法や制度で縛られたくない」

チャンギヨン演じるパクモゴンは気の利いたセリフを連発する年下男子で高身長のイケメンである。そんなパクモゴンは「自分を一夜限りの相手にしないで」と訴え、好意を一途に伝え続ける。ペタミの部屋を掃除し、傷を手当てし、甘え、背伸びしながらペタミを守り支える。ケア役割をも担う男性である。

夢のようなお相手のはずなのに、ペタミとパクモゴンの間には、埋められない溝ができていく。非婚主義と結婚願望をめぐる二人の切実さのどちらも共感できて、胸が痛くなった。さらにペタミが「愛を法や制度で縛られたくない」「個人の感情に国家が関与するのが嫌なの」と言った時、すごく驚いた。私が事実婚を選んだ大きな理由の一つと同じだったから。日頃、他人には理解されにくいだろうと思ってあまり話題にしないが、「誰のことが好きで誰と一緒に人生を送りたいと思っているかという極めてプライベートなことをどうして国に報告しないといけないのか?」と20代の私は考えていた。まさしくそのままのセリフが出てきて、同じように考える人もいるのかもと嬉しくなった。

しかしながら、そういうことだったらペタミとパクモゴンは事実婚で良くないか?と思うのだが、韓国の文化ではそれは許されないことなんだろうか。ペタミは「結婚しない理由は長々と説明が必要なのに、結婚したい理由は当然の常識として説明する必要がない!」と訴える。そのやりきれなさは日本でも韓国でも同じだろうが、日本だったらもう少し軽く事実婚を選ぶ気もする。(私の周りにいる人たちは「法律婚でも事実婚でも非婚でも個人の自由です」と自然に考える人が多いと思うが、日本社会全体でどうかは分からない。)

ワカメでひっぱたたくなんて!笑

笑える小ネタもたくさん。特に「義母はいったいなぜ」(最後まで人物相関図を理解できなかった劇中ドラマ)にワカメで顔をはたくシーンが出てきて爆笑した。韓ドラあるあるのキムチをぶつけるシーンを見たことはあったけど、ワカメバージョンもあるんや~という発見(テーバっ!)。

ソルジファンとチャヒョンは3組の中で一番素直で可愛かった。いつまでも敬語で話す純粋な好青年のソルジファン、ガラケーユーザーであることも気に入った!「過去から来たんですか?」には笑った。

チャヒョンは正義感が強くて面倒見も良い女性として描かれている。栄光を築いたサービスを終了させるときの「プライド、情熱、いいものです。でも、あの頃を美化するのは自己欺瞞です。私は疲れ果てて死ぬほどつらかったし、身体もボロボロでした。」というセリフは、自分のアラサーの頃を思い出して泣けた。韓国も日本も過酷な競争や格差社会が背景にある。青春をささげた大切な思い出であったとしても、未来へ進むために批判を受け入れ反省すべきこともある。その繰り返しによって個人も組織も少しずつアップデートしていくんだと思う。

2019年に韓国で放映された時の視聴率はそれほど高くなかったみたいだけど、netflixでも観られることだし、むしろこれからじわじわと再評価されてほしい作品である。

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