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未練の昇華⑤

①で紹介したエッセイの作者に通ずるところがあると勝手に思っているが、私はできるだけいい思い出で彼との恋愛を"凍結保存"させたかった。言葉を借りるなら「2人を永遠にしたかった」。そして、もはや呪縛となってしまった私から一刻も早く解放してあげたかった。本当に愛していたから。
作者と違うところは、彼の人生を見届けたいという好奇心に抗えず、友人としての再構築を私が望んだことだ。彼も了承した。

しかし、別れと同時に訪れる諸々の事務的やりとりがうまくいかず、彼に比較的すぐに新しい恋人ができたことも影響していたのか、元恋人と友達になるのは難しいと彼は意見を変えた。
私は、私から彼に連絡できないよう、私サイドの彼の情報は全て消去した。彼は「そこまでしなくても」とこぼしていたが、私にとってはどんな形であれ何かしらの繋がりを持ちつづけていたい相手であったが、彼にとって私はもう必要なくなっていたため、荒療治に頼るほかなかった。もしまたこの世に生を受け彼に出会うことがあればまた惹かれる確信があるほどの相手である。よほどの縁がない限りは接点が生まれない状況を作り、サヨナラをした。

私はこの恋愛で、自分のエゴに彼を巻きこんだことの代償を払うことになった。
恋人であっても、たとえそれがわかりあえないことを前提にしてそれでも一緒に生きていこうと約束しあった程の仲であっても。
どちらかが自分の生き様を歪めなければならないような状況に陥ってしまえば、どんな形であれ破綻は訪れると学んだ。

文面から伝わると思うが、私は彼への未練をずるっずるに引き摺りながら最近まで生きていた。
彼のような人とは絶対に、もう二度と巡り会えないと私の直感が囁くからである。
私にも新しい恋人ができ、比較的順調に交際しているのにも関わらず、脳の奥底にこびりついていた。
そしてこの未練の手放し方が全くわからなかった。

彼が今どうしているかはわからない。
彼は間違いなく愛されキャラであるが、不登校だった時期があり、定期的に抑鬱状態になって「この世界で生きていることが辛い」とこぼす事があった。その記憶が根強いこともあるのか、彼がどうしているかわからないことに震えるほどの不安が襲ってくることもつい最近まであった。

私は恋すること、愛することを、愛ゆえにやめて、2人を永遠にする選択をしたのだと、
少し都合のいい記憶の改竄をして、
エッセイの作者のように彼をまだ愛していることを受け入れ、彼への愛と共存していこうと思う。
未練ではなく、愛との共存であれば、新しい恋人ともきちんと向き合えると、私は信じている。

バイバイ、私の未練。

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