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両側乳がんラプソディ#2 しこり

 さかのぼること10年ほど前、私は左胸にしこりができて針生検の結果、乳腺線維腺腫、つまり良性腫瘍であることが判明した。
 「特に切除する必要もない」と医師に言われたが、人間ドックや健康診断時のマンモグラフィで、要検査になって面倒だったので、それから数年後に近所の総合病院で日帰り切除手術を受けた。
 午前と夜の仕事の合間に手術を入れたので、部分麻酔とはいえ、ヘロヘロだったことを覚えている。こんなことがあったので、それからも時々、胸にしこりがないか自分で触って調べていた。

 2023年4月、シャワーを浴びながら、脇から胸にかけて指でなぞってみた。
 いつものように、何気なく。
 すると、右胸に以前と同じようなしこりを感じた。
 おや、と思い、入念に触る。
 一センチにも満たないパチンコ玉大のしこりがコリコリと動く。
 ハードボイルド小説じゃないが(私はハードボイルド小説が好きである)、やれやれ、と言いたくなる。
 憂鬱な気持ちが襲う。
 もちろん病気の不安よりも、面倒さから生じる気持ちである。
 前回の左胸に引き続き、今度は右胸か。また、病院へ行って、検査をして、日帰り!?手術になるのかな。
 今度は、絶対に仕事を入れないようにしよう。仕事が詰まっているけど、大丈夫かな。

 そんなことが頭に浮かんでは消えて、また浮かび、ため息が漏れる。

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