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神様の証明 君について

いつかは私も、君に縁を切られてしまうのだろうとわかっていたのに、

あんまりに日々が順調に進んでいるから、別れが近づいていることに気づかなかった。


君は天才だ。神様のような人だ。
「僕は神だからね。」
嘘だよと笑って付け足す。
私は嘘だと言うその言葉に違和感を覚えつつ、あいやと意味のない言葉で濁して、笑って応じていた。

君は紛れもなく神様だ。
君の目はこの世にない美しいものを捉え、
君の声は雨雲の上の青空のように澄んでいて、
君の言葉は煙に巻くように真実を隠す。


尊敬してやまない彼と、私は共に物語を作ろうとしていた。彼が描く空想はいつも綺麗でいい香りがする。なのに、もう彼にはその気力がないらしい。

「僕は気づいた。僕には才能がない」
君はまた嘘をつく。神様だからって嘘ばかり吐くのは良くないんじゃないだろうか。

君の紡ぐ物語が、君の描く絵が、君の生み出す歌が、どれだけ素敵なものなのか、なぜ分からないのだ。

君がみている世界が見てみたい。
その目には何が見えているのだろう。いつも必死に説明してくれるのに、どうにも難解で、わかるような、わからないような。
ただその言葉は、ガラス細工のように美しく、
とても鮮やかだ。


私の思っていたことを、君が知ったらどう反応するだろう。
笑う?、照れる?、それとも疑うだろうか。

私はいつまでも君と友達でいたいだけなんだ。
君と何かに打ち込み、ああでもない、こうでもないと議論を重ねる夜が大好きなのだ。
口下手な私の思いを容易く攫う君に何度も救われてきた。別れが、ただただ、寂しくて堪らないのだ。

でもそんなのは別にいい、
君が君の才能を否定することに比べたら、
もはやどうだって。

嘘を暴く、君の才能を証明する。
君は神様みたいな人だ。君の才能には神様が住んでいるんだ。
やってみせる、死ぬ気で、神様の証明を。



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