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インタビュー記事 vol.1

※本インタビューはテキスト形式でインタビューを実施したものです。

林 彩根さんは、2005年デフリンピック男子デフバスケットボール日本代表監督、2007年世界選手権女子デフバスケットボール日本代表監督、大阪デフバスケチームの監督など多くの実績を残しておられます。そんな林さんにお話を伺いました。

ーデフとのコミュニケーションツール(方法)は様々ですが、林さんは主にどのコミュニケーションツールをとっていましたか?また、その理由を教えて頂けませんでしょうか?

当時、舞洲に大阪デフバスケチームがあるのをホームページで知り、手話を勉強しました。『バスケットボールを指導させて欲しい』と言えるまで3年かかりました。その時はレベル的にも手話通訳士の試験を受けられるぐらいになってました。(表現は○でしたが読み取りが×でした。)

バスケットボールの指導者として長年活動していた中、自分の指導のポリシーは、相手がミニであれ、大人であれ、障害者であれ、相手に合わせる、寄り添うことから始まると云うこと。当然、コミュニケーションツールとして『手話』が不可欠と思っています。

ー林さんにとって、手話の魅力とは何だと思いますか?また、筆談や手話通訳者の派遣に対して普段から思っていることがあれば、お教えて頂けないでしょうか?例えば、デフプレーヤーに指導する時、手話通訳者を介すると伝わりにくいなどがあると思います。

色んな所でお話をする立場上だからか、手話を覚えて気が付いたのは、デフは僕が話をすると、必ず、僕の目を見ている。健常者に話をしてても、話を聞いてない時があること。そんな時に『聞こえない人たちは、人の話を聞く時、必ず相手の目を見ている云々』と前置きします。人としてのコミュニケーションをとるのに最低限度のマナーが手話の中には備わっています。一番の魅力です。

筆談は、コミュニケーションをとる最後の手段。そこには時間が必要です。

バスケットボールの指導で手話通訳者を入れるのも当然、必要です。しかし、その手話通訳者がバスケットボールを“ 熟知 ”していないと言いたい事は100%理解は出来ないでしょう。自分が「何を伝える」かは手話通訳者には任せられません。

ーコロナの影響で、今後オンラインがより定着していくと思います。音声を自動認識して字幕で変換出力できるようになったら、健常者は手話を覚えるきっかけがなくなるでしょうと仰っておられましたが、そこに到るまでのお考えをお教えて頂けないでしょうか?

当然でしょう?手話のしの字も知らない人がそんな技術を知ったら、それで充分コミュニケーションがとれるのだから、誰もそんな難しい(手話を覚える)ことはしなくなりますよ。しかし、時間が経つにつれ、そんな技術だけで100%心が通じないと気がつくでしょう。人がコミュニケーションをとる時、横にそのモニターがあった時、その人の顔も見ない、見れないと思います。文字しか追えないでしょ。

例えば、健常者の外国人とその通訳者の会話すると、会話しててもその本人の顔を見ずに、通訳者の顔しか見ていないのです。それって、本当の意味の会話(コミュニケーション)じゃないよね。

ー聴覚特別支援学校はバスケ部がないため、わざわざ通常学校に通ってバスケを頑張ってるデフの子がいます。チームにはデフの子が1人、他の人たちは健常者でコーチも手話ができません。その状態だとどう思われますか?林さんなら、そのデフの子にどうアドバイスをされますでしょうか?

僕がその親だったら、コーチに筆談を入れて貰う。それを聞き入れ無かったら、多分、やめさせる。そんな指導者は指導者じゃないと、先に書いたようにズゥ〜と側で見てて、アドバイスを入れてあげます。

もし僕がその親じゃなかったら、バスケに対する知識がなかったら、手話か筆談などキチンと対応できるコーチを探します。

ー八村選手の成長を見てみると日本バスケはどんどん進化していっているように思います。外部指導者制度、ミニバス移籍の容易化、バスケアカデミークラブの増加など。デフがバスケットボールに関わっていく頻度が高くなっていくだろうと私は考えております。このことについて、林さんはどうお考えでしょうか?

そうですね。増えていくでしょうし、増えるのが当たり前と思っています。けど、今のデフスポーツ環境では受け入れ口がJDBA(日本デフバスケットボール協会)も含めて狭いですよね。

僕が代表チームを見ている時に色んな所で話しましたが、デフだけを集めてデフバスケの普及や強化をするのではなく、例えば、デフ選手が健常者バスケとデフバスケを掛け持ちできるような、分け隔てなく指導できる健常者側の理解と環境が必要です。

その環境で子どもらが育ち、事ある時(国際大会やその合宿など)に召集されるのが理想だと思います。世界レベルのデフ選手はデフの中だけで活動していません。それを参考にすべきだと思います。

健常者が無理に出しゃばらず、デフの指導者、スタッフと共に組織を運営し、勉強を絶やさず向上心を持って信頼感や連帯感を作っていくのがベストだと思っています。だから、まずは、デフの指導者を育てていく事が最優先だと思っています。

ー代表監督として、どんなことにチャレンジされたのか教えて頂けないでしょうか?

「全てのデフバスケットボール選手のハートを掴む!!」と、基本が大事だと云うこと。未だに基本が曖昧な選手ばかりですよ。

ー選手たちの選考基準もしくは見極める基準をどのように考えたのか教えて頂けないでしょうか?

基本がどれだけ出来ているか。自己犠牲→チームワークが取れます。

ー日本と世界のデフバスケの違いはどんな感じなのか教えて頂けないでしょうか?

一番の違いは、欧米には(特に東ヨーロッパ)プロとして活躍してる選手がどの国にもいた。日本にはいないが、これから期待出来るのは男子代表の津屋くんは来年Bリーグに行けるかもしれません。(本人はどう思ってるのかは存じません。)

ー去年のポーランド世界選手権の結果を受けて、デフバスケ世界ランキングが、男子は15位から13位へ、女子は14位から9位へと上がったように、日本デフバスケのレベルも少しずつですが上がっていってると思います。メダルに手が届くのも時間の問題だと思いますが、林さんはどう思われますでしょうか?

デフリンピックでのメダルは難しいかもしれません。良くてベスト8かな?(日身協の強化費の多い少ないの分岐点)男女とも平均身長を10〜15cmは最低限度必要です。

ービバリードは、バスケとデフバスケのアンダーカテゴリーの育成活動に力を入れています。この活動について思うところがあれば、アドバイスを頂けないでしょうか?

須田くんと以前、話し合った事があります。立ち上げた理念、目的は素晴らしいと思います。定期的に活動する、名を知らしめる。そこに行けば良いことがある。をアピールしていかねばならないです。一番大事なのは、その活動費をどこから作るか?JDBAにも協力して貰う、法人化し、スポンサーを探す等々です。


林さん、インタビューのご協力を頂き、本当にありがとうございました。これまでの経験話を学び、これからを活かして、デフバスケを進化させていきたいと存じます。

2020年6月13日(金)NHKニュースにて「“新しい生活様式”手話の持つ新たな可能性」が特集されていました。

https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/06/0612.html

コロナ禍でソーシャルディスタンスを保ちながらの会話やストレスフリーで話せるツールとして、活用できると思います。音が伝わらない海の中でも会話できますし、オンラインだけではなく、昔から使われている歴史ある手話も定着できることを願っています。

B-BALLY'dコラボレータ 佐知樹一郎