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『きみの色』いい映画です。

原作やストーリーの予備知識は全くなく、何なら主題歌を歌うミスチルのことは少し苦手なんだけど、アニメ平家物語が好きすぎて、監督山田尚子、脚本吉田玲子、音楽牛尾憲輔という最強の布陣とサイエンスSARUだったから、しっかりとIMAXで観てきた。あとエンドロールを見てて驚いたのが音響も木村絵理子だった。ルックバックでも驚いたばっかりだったのにすごいや。

アニメーションとして、時期的にルックバックと比較されちゃうのは可哀想だと思ったけど、私には全く引けを取らない満足感を与えてくれた。世間はどう思うのかわからないけど。

一番印象的だったのは、おそらく牛尾憲輔による音楽で、もうマイケル・ナイマンに迫るか、何ならそれを凌駕するほどの進化だと思った。平家物語の良かった部分が全部活かされてるようですごく嬉しい。ちょっと気になったのはレオくん牛尾さん過ぎん?とは思ったけど。

映像に関しても、平家物語みたいなダイナミックかつ繊細なカメラワークはすごく好みで、最後まで全く飽きを感じることは無かった。また、虹色のレンズフレアみたいな光があって、この作品の雰囲気にもマッチしてたんだけど、あれはIMAXレーザーの見えちゃいけない光だったのか、映像の演出だったのか、結局どっちなのかわからなかった。平家物語とは絵のタッチが全然違くて、特に主人公たちの目は特徴的にキラキラしてるんだけど、ズームしたときのまつ毛の感じが重盛のそれで痺れた。でも平家物語では四季の移ろいによる表現や演出がすごく良かったのに、そのへんはテーマの違いのせいもあってかいまいちだったかな。

ストーリーに関しては、正直それ程感じるものはなくて、他の部分で十分満足しちゃった感じ。新垣結衣が島国で合唱部の顧問をするくちびるに歌をに少し似ているなと思ってたら、シスターの声優が新垣結衣で、エンドロール見ててひっくり返りそうになった。

あとは、全然嫌いじゃないし、むしろ大好きではあるんだけどBorn Slippy!?とは思ったよね。そして、最大の謎がミスチルやくしまるえつこ風のバンドソングがすごく良かったのにもったいなくて理解に苦しむ。

平家物語推しのかなり偏った鑑賞の仕方になっちゃったし、アニメーションとしての新規性は特に感じなかったけど、全体としてはめっちゃ好き。きみが凄く魅力的な女の子なのに、中身がめちゃくちゃ普通なのがよかったし、きみの色ってタイトルから、多様性全開の暑苦しいアピールで来るのかと思ったけど、竹や松の自由といった程度で、メッセージ性は強くなくて安心した。

最後に、なんでレオがあんなに頑張れって応援されなきゃならないのか理解できなかった。でもナビィの恋のラストみたいな感動をさそう演出に、意味は分からないんだけど、ついつい吊られてジーンと来たりして、でもレオがここで「お前がな」って何度もつぶやいたらうけるのに、とか変なことを考えてたら映画が終わっちゃった。鑑賞後の気分がすごくよい、いい映画です。山田尚子監督がさらに好きになりました。


追記事項
鑑賞後、一晩たって知り得た情報です。本作は山田尚子監督の完全オリジナル作品であり、映画公開前に発売されている小説や漫画は、映画のノベライズ、コミカライズ作品だったようです。脚本の吉田玲子との共作なのかもしれませんが、すごいチャレンジだなと思いました。が、平家物語の良さを知っているがゆえに、オリジナル原作にこだわることは無いのかなと思いました。あと、やくしまるえつこ風と言いましたバンドの演奏は、相対性理論のギター(永井聖一)の音とのことで納得しました。でもミス・パラレルワールドみたいな音を出しておいて、作曲は牛尾憲輔とのことで、むしろそちらに驚きました。最後に、ミスチルをディスるような言い方をしてしまいましたが、絶賛の声の方が多いようですので、私がマイノリティーだったようです。

最後に、もしも映画を鑑賞せずに、興味を持ってこの記事を読んでくださっている方がいましたら、映画館での鑑賞をおすすめします。といいますのも、この映画はバンド映画なので演奏が沢山あります。ヘッドフォンでは音は聞くことしか出来ませんので、全身で音を浴びることが出来るシアターがおすすめです。

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