告別式にいってきた⑫
「何でそんなにまずいの?私よく分からなくて」
「香港はイギリス領なんだよ。だから中国じゃなくてそこだけ自治が違う。そこで生まれた人はプライドがあって、中国生まれと思われたくないし、中国人と一緒にされるのを嫌がるんだよ」
「え、でも何年か前に返還されなかった?何でいきなり中国になったの?」
「だからそれは、前から約束をしていて〜」
私は葬儀や納骨のマナーだけでなく、こういった知識にも疎い。対して弟は政治や歴史的背景について幅広く理解し、説明もできる。
「今は中国でも、サイモンさんが生まれた時は違うから、彼は中国出身にならないの?」
「そうだね!とにかく、それは怒られてもおかしくないレベルだし、場合によっては怒られるから。ほんと気をつけた方がいいよ!」
ミナちゃんが香港出身の人と結婚したことは、叔母からの年賀状で知っていた。数日前に母から届いた、聞いてもない従兄弟の事前情報メールでも『ミナ、夫は香港出身のオーストラリア国籍』と記載があり、私はサイモンさんが香港出身と知っていたのだが、勝手に「香港」を「中国」と頭で変換していたのだ。
「どうしよう、ミナちゃん怒ったかな」
ものすごい高みから注意を受け、不安になる。
「いや、大丈夫じゃない?」
笑い混じりに言われる。
「そうだよね、きっと今まで友達にも何度も聞かれたよね、またかって思ったぐらいだよね」
そうこう話しているうちに、代々木上原に着いた。
「じゃあ、また」
私が席を立つ。
「あ、はい、また」
名残り惜しそうに見送られることもなく、ホームに降りた。電車は直ぐに去った。
弟と話した後は、いつも小馬鹿にされたような気持ちになる。昔は私の方が強く、絶対的に言うことを聞いたのに、いつからか立場は逆転した。
それでも今日、およそ6年ぶりぐらいに会えて、話せて良かった気もする。互いに実家に帰ることもなく、約束して会う間柄でもないので、次に会うのは、残された祖父との別れの時だろう。雅史君、ミナちゃんやその妹達とも、そうかもしれない。
告別式は家に帰るまでが告別式です。よって、しつこくもまだ話は続きます〜。その前にパート日誌など、更新予定です!
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