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竜のエースへ 髙橋宏斗 大ブレイクのシーズンを振り返る

みなさんこんにちは、ばやのりです。またしても選手振り返りnote、今回は髙橋宏斗投手です。
今季の髙橋投手はホーム開幕カードで先発を掴み取ると、シーズンを通して圧巻の投球を続け、オフには侍ジャパンの代表候補にも選出され、契約更改では大幅アップとなる2100万円増の3500万円でサインしました。

そこで今回は、早くもエースの風格を漂わせる若武者の活躍を自分なりにまとめてみました。
※今回も一部データを悟さん(@bb_satoru)にお借りしています。ありがとうございました。

2021年オフの過ごし方

早速2022年シーズンの活躍を振り返り、と行きたいところですが、今季の髙橋投手の活躍には昨2021年オフの過ごし方が大きく関わっているので、軽くおさらいしておきましょう。
ルーキーとして2021年シーズンを迎えた髙橋投手は福谷浩司投手に弟子入りし、合同自主トレを行い、そこで1年間戦うためのフォームの分析、見直しを行いました。

そして迎えた2022年シーズン、自主トレの結果、テークバックをコンパクトにした、いわゆる「ショートアーム」というメジャーリーグでもトレンドになっているフォームでOP戦に望みます。

高校2年時のフォーム
2021年のフォーム
2022年のフォーム

そこで結果を残したため、見事ホーム開幕カードでの先発投手としてプロ初先発のマウンドに上がりました。
初登板振り返りnoteはこちら↓

そこから投げるたびに進化を遂げ、今シーズンの大ブレイクを果たすこととなりました。

2022年シーズンの振り返り

そしてここからは2022年シーズンの髙橋宏斗投手について様々な視点から振り返っていこうと思います。

成績

まずは主要成績のまとめになります。

2022年シーズン成績

やはり特筆すべきはずば抜けた奪三振能力でしょう。規定投球回には達していないものの、リーグ3位の134奪三振をマークしました。またK%奪三振÷打席29.0%K-BB%K%-BB%19.9%で100イニング以上投げた投手ではリーグトップと、とにかく高い奪三振能力が目立ちました。

更には投球の安定感という部分も特徴の一つではないでしょうか。QS6回3自責点以内の数は13HQS7回2自責点以内の数が7となっています。QS率は68.8%で100イニング以上投げた投手ではリーグ7位、チームでも小笠原投手に次ぐ2位、平均投球回は6.1回となっています。

その他の指標も非常に優秀な値を記録しています。打球の割合はGB%ゴロ割合>FBフライ割合となっており、GB/FBゴロ割合/フライ割合は1.28で100イニング以上投げた投手ではリーグ5位、被打率.193tRA投手の能力そのものを図る指標2.72はいずれも100イニング以上投げた投手の中ではリーグトップでした。

更に注目すべきポイントは後半戦の方が成績が良いということです。

2022年後半戦成績

防御率1.73、WHIP0.85、被打率.143とどの数字も素晴らしいの一言です。
登板した8試合のうちQS数が6、うちHQS数は5、平均投球回6.5回と抜群の安定感を誇り、結果として後半だけで4勝をマークしました。

球種

続いて球種を見ていきましょう。

2022年球種別投球割合

投球の中心となる球は半分以上を占めるストレート、3割を占めるスプリットであり、次いで割合が多い順にカットボール、ナックルカーブ、スライダーといった構成になっています。

今回は特筆すべき2つの球種について見ていきます。
まず彼の生命線とも言える球がストレートです。そのスピードは最速158キロ平均球速151.9キロという先発投手としては破格の数字であり、100イニング以上投げた投手ではリーグトップの数値であり、被打率も.191と素晴らしい値でした。

続いておよそ3割を占めるのがスプリットになります。この球種が絶対的なウイニングショットであり、多くの強打者をきりきり舞いさせてきました。
奪った奪三振の数はストレートの51奪三振を上回る78奪三振、被打率もストレートを上回る.168、空振り率31.5%、と全てにおいて素晴らしい数値であり、Pitch Value球種による得失点合計13.9で100イニング以上投げた投手ではリーグトップでした。
そしてオフシーズンの名物企画であるプロ野球100人分の1変化球部門にも6票で5位にランクインしました。

プロから票を集められることが、この球のすごさを最も表していると言っても良いでしょう。

起用面

また、髙橋投手が今シーズンここまでの成績を残すことが出来たのは、起用法による部分も大きいと思います。
今季の髙橋投手の起用を下の表にまとめてみました。

2022年の登板間隔、球数、イニングまとめ

NPBのローテーションは中6日で投手を回すのが一般的です。しかし今季の髙橋投手は非常に大切に扱われていました。

表を見てみると、やはり目立つのは中10日以上の多さではないでしょうか。19試合のうち中10日以上空けての登板が7回、次いで中7日が4回、中8日と中9日が3回で同数となっており、中6日での登板に至っては最終登板となった1回のみとなっています。
また球数に関しても慎重に管理されており、120球を越えた試合は一度もありませんでした。
この運用はヤクルトスワローズのいわゆる「ゆとり運用」、特に昨季髙橋投手と同じ高卒2年目でブレイクした奥川恭伸投手の起用を参考にした面も大きいのではないかと考えています。
ゆとり運用に関してシュバルベさん(@love_uni31)が書いたnoteもあるので、併せてお読みください↓

今季のパフォーマンスには、高い出力を出せる、かつ若い投手であることも踏まえて首脳陣が「無理をさせなかった」という点が大きく関わっているでしょう。

今シーズンの髙橋投手をまとめると
・ずば抜けた奪三振能力と投球の安定感が魅力、特に後半戦に強かった
・平均150キロ越えのストレートと鋭く落ちるスプリットで三振を量産
・中10日以上がほとんど、120球以上はナシという慎重な起用もパフォーマンスに起因
といった感じでした。

このように今季の髙橋投手は高卒2年目とは思えない圧倒的なパフォーマンスを見せており、それには起用の面も大きく関わっていることが分かりました。そしてここからは更に次のステップへ駆け上がるために必要なことを筆者なりにまとめてみました。

2023年シーズンの課題

個人的に来季の課題となる項目は大きく2つだと思っているので、それらについて触れていこうと思います。

登板間隔への対応

やはり来季更に成績を残すにあたって必要になってくるのが「より短くなるあろう登板間隔にどう対応するか」でしょう。
先述したように、今年はかなり登板間隔を空けたローテーションで回って投げていました。ですが、彼の高い能力を変えるとチームとしては最終的には彼が中6日でローテーションを回してくれるのがベストであり、そういった起用になってくるでしょう。
今季髙橋投手が中6日で登板したのは1試合のみで、投球データは以下の通りになります。

初めて1年間戦った疲れ、初めての中6日だったことなど様々な要因もあったのででしょうが、他の試合と比較しても、本調子の投球という感じではありませんでした。
もちろんサンプルが少ないのでこれだけで中6日運用が無理と判断は出来ませんが、どう対応していくかは必ず乗り越えねばならない課題です。
監督も「間隔を詰めて投げて欲しい」と言っており、本人もその自覚を持って課題の克服に向けて体力強化に取り組んでいるようです。

球数を減らし、イニングを増やす

もう一つの課題は「球数が嵩みがちで、イニングが積み上げられない」というものです。
もちろん非常に高いレベルを求めていることは承知の上です。しかし、慎重な起用、三振を多く取る投球スタイルも相まって、彼はまだプロ入りして8回以上を投げたことがありません。この課題を克服することで、1つ目の課題である中6日の登板間隔に対応しやすくなる面もあるかと思います。

彼のポテンシャルを考えると、目指すところは先発完投型、沢村賞を狙えるような投手だと思います。具体的には平均投球回7回完投を1試合でも達成することを目標として欲しいところです。

そしてその課題克服のためには投げる球のレベルアップは避けて通れない道でしょう。現状は5つの球種があり、先述したようにストレートとスプリットは彼の投球を語る上で欠かせない存在です。特に増やすことなどをしなくても、既存の球種のレベルアップや投球の割合を変えることで十分通用するのではないでしょうか。

具体的には他の球種に比べて被打率が高いカットボールやナックルカーブが挙げられ、被打率はそれぞれカットボールが.275、ナックルカーブは.250となっています。

またストレートに関しても、スピードは「まだ上がる」と発言しており、直球の強化について自覚を持っているようです。

そして課題克服のため、昨季の福谷投手に引き続きDeNAの今永昇太投手へ弟子入りしストレートとカットボールの強化、チームメイトである小笠原慎之介投手のナックルカーブ習得に着手していることも明かされました。

この2投手はPitch Valueで見ると、今永投手はストレートの21.1が、小笠原投手はカーブの4.4がで規定投球回到達者ではリーグトップとなっています。
これらのデータが偶然かどうかは分かりませんが、去年の福谷投手のように「自分の課題を自覚し、その克服にあたって必要なこと、最適ともいえる人物にアプローチが出来る」という点も彼の強みの一つではないでしょうか。

髙橋投手の来季の課題をまとめると、
・縮まるであろう登板間隔への対応
・球数を減らしてイニングを増やすため、球種のレベルアップ
といった感じです。

ここまで髙橋投手についてまとめてみましたが、現時点でもプロでトップクラスの球を投げる彼の活躍に改めて驚かされると同時に、まだ伸びしろがあることも分かりました。

いずれはドラゴンズではなく侍ジャパンのエースとして、その先にあるメジャー挑戦も見据えていけるであろう髙橋投手の来季の活躍を願い、締めさせていただきます。
読んでいただきありがとうございました、皆さんよいお年をお迎えください。

■出典


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