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投手王国復活へ リリーフ陣のキーマンを探る

皆さんこんにちは。
第5回WBCが日本の優勝という形で終わりを迎え、春のセンバツも佳境に入り、プロ野球も開幕間近ということで野球界が本格的な盛り上がりを見せています。

今回は中日ドラゴンズが今後勝ちを積み重ねる上で非常に重要なポジションとなってくる中継ぎ陣に焦点を当て、キーマンになりそうな選手を挙げてみました。

現状のドラゴンズリリーフ陣

まずは現状のドラゴンズリリーフ陣を見てみましょう。

セリーグチームリリーフ成績

防御率2.90リーグ2位という数字は聞こえがいいかもしれません。しかし本拠地のPFを見比べてみると、防御率2.39で1位のタイガースの本拠地である甲子園球場の得点PFは0.91、本塁打PFは0.66に対しドラゴンズの本拠地であるバンテリンドームナゴヤの得点PFは0.89、本塁打PFは0.76とそこまで大きく変わらない数値になっています。この防御率の差は似たようなピッチャーズパークを本拠地としていはいるものの、単純な投手力がタイガースに大きく劣っていることを示しています。

K-BB%で見てみると顕著に差が表れており、ドラゴンズの投手が12.5とリーグでは平均レベルの数値であるのに対し、タイガースは17.3でダントツトップの数値を記録しています。

より深掘りした指標を使ってみると、その投手力の差は更に浮き彫りになります。下の表はチームのRP RARとRP RAR上位3人の数値・合計、上位3人の数値をチームRP RARから引いた場合の残りの数値を示したものになります。

RP RARで見るリリーフ陣

チームRP RARはタイガース、スワローズに次ぐ3位の数値を記録してはいるものの、数値自体はかなり開きがあります。

RP RAR上位3人を見てみると、勝ちパターンのR.マルティネス、ロドリゲス、清水の3投手とも10以上を記録しています。RP RAR10以上を記録している投手が3人以上存在するのはスワローズとドラゴンズの2チームのみ(パリーグでもマリーンズ1チームのみ)であり、上位3人のRP RAR合計も44.712球団中1位と勝ちパターンは非常に優秀であることを示しています。

しかし、上位3人の数値を除くと7.5となりリーグ4位、それも5位ジャイアンツの7.0とほとんど変わらない数値になっています。

これは、"勝ちパターンとそれ以外の投手の能力に大きな乖離がある"ということを示しています。

先ほど"RP RAR10以上を記録している投手が3人以上存在するのはスワローズとドラゴンズの2チームのみ"とは言いましたが、スワローズは清水、木澤、田口の3投手以外にもマクガフ投手が11.5、石山投手は10.6と更に2投手を加えた計5人がRP RAR10以上を記録しており、村上選手を中心とした打線だけでなく、この強固なリリーフ陣もリーグ連覇の立役者となっていました。

対するドラゴンズは4位が藤嶋投手の7.7、5位が祖父江投手の3.2となっており、どうしても勝ちパターン以外の投手は力不足感が否めません。

セリーグにおけるドラゴンズリリーフ陣の立ち位置は、全体で見るとリーグでは平均より少しいい程度といったところでしょうか

今季のリリーフ陣はWBCもあり守護神のR.マルティネス、ロドリゲス投手が序盤は開幕出遅れます。加えて祖父江・谷元・田島投手といった面々は衰えが徐々に来ています。また、ただ1人勝ちパターンが決まっているであろう清水投手は1年通して戦ったのは去年が初めてと不安要素は尽きません。

更に今後の投手陣という観点から見ると2024年のオフにはR.マルティネス、ロドリゲス両投手の複数年契約が切れ、メジャーリーグへの流出も考えられます。
そのため、長期的なスパンで見た投手陣の構築が求められます。

金銭や選手を出してのトレード、緊急補強も手段としては考えられますが、チーム状況を鑑みるとあまり現実的ではありません。
従って、既存の投手を上手く配置転換したり、能力のある若手投手を抜擢するするなどの対応が求められます。

そこで今回は今季リリーフとしての活躍が期待できそうな選手を個人的にピックアップしてみました。

リリーフ陣のキーマン

まずどのような観点から選手を選んでいくか説明していこうと思うのですが、その前に昨今のリリーフ投手の在り方についても触れておきましょう。

まず近年のプロ野球は球速のインフレがすさまじく、毎年NPB全体のストレート平均球速は上がり続けており、160キロの数字も前ほど珍しいものではなくなりつつあります。

そして海の向こうのMLBでは2020年から「打者3人との対戦、もしくはイニング終了までの投球」を義務付けるルールが導入されました。この導入目的自体は「試合時間短縮」ではあるものの、日本ではワンポイント禁止ルールとも訳されており、第5回WBCでもこのルールが適用されました。

そのルールに従って、第5回WBCも各チームでセットアッパー、抑えを務めるしっかり1イニングを抑えられる投手が選出され、彼らの活躍もあって日本代表は見事3大会ぶりの世界一に輝きました。

強固な投手陣を作り上げオリックスをリーグ連覇、26年ぶりの日本一に導いた中嶋聡監督も昨2022年のオフに「ワンポイントは不要、1イニングをしっかり抑えられる投手が必要」という旨の発言をしています。

このように、利き腕に関係なく速いストレートを中心にパワーピッチングの出来る投手が重用され、ワンポイントや特定の利き腕に強いような投手は淘汰されていく時代になりつつあります。

先ほど紹介した12球団最強クラスの勝ちパターンを形成する清水、ロドリゲス、R.マルティネスの3投手に共通することと言えば、力強いストレートとそれぞれが武器となる変化球を操り三振を奪い打者を圧倒するピッチングスタイルではないでしょうか。

今回紹介する選手も①速いストレート②武器となる変化球の2点を重視して挙げています。

松山晋也

まず挙げたいのが松山 晋也まつやま しんや投手です。

この投手は2022年ドラフトにて育成1位で指名を受けた選手になります。
いきなりルーキー、それも育成指名の選手で大丈夫か?と思われる方もいると思いますが、彼はそんな不安を覆すほどのポテンシャルを秘めています。

基本的なスペックを紹介すると、188cm 92kgの大きな身体を使ったダイナミックなフォームから角度のある最速154キロのストレートにスプリットとカットボール、カーブを操ります。
何と言っても高い奪三振能力が魅力の選手でしょう。

そんな松山投手の大学リーグ戦通算成績がこちらになります。

地方のリーグでありリーグのレベルや10試合中9試合がリリーフとしての登板であることなど考慮されるべき点はありますが、どの指標も優秀であり、高いK-BB%を記録しています。

もちろん育成ルーキーということランナーがいる状態においての投球などに課題は残りますが、それらを克服すれば1年目から支配下登録、勝ちパターンに入ってきてもおかしくないほどの能力を秘めています。

ドラゴンズの中継ぎに少ない制圧力を持ったパワーピッチャー候補として首脳陣からも高い評価を受けているため期待したいと思います。


勝野昌慶

2人目は勝野 昌慶かつの あきよし投手です。
これまでの成績はこちらになります。

年度別一軍成績

まだ一線級の成績を残した年はありませんが、2020年以降は毎年一定のイニングを投げています。
年度ごとに登板数およびイニングにバラつきはあるもの、昨年はキャリア最高のK%を記録しました。

また、昨年はストレートの平均球速も146.0でキャリア最高の数字でした。
スピードだけでなく、K%,K-BB%といった指標は大幅良化を見せています。

ストレート年度別成績

これらの指標の良化は社会人時代のフォームに戻したことが功を奏したものと思われます。

昨年の球種別投球割合は以下の通りになっています。

ストレートの次に多いフォークが現状のウィニングショットになっており、被打率は昨年が.193、通算でも.167を記録しています。
このフォークが決め球になる点はリリーフ投手としての活躍の可能性を秘めているでしょう。

更に昨オフにはスライダー強化も取り組んでいたようです。

フォークが優秀な被打率を誇るのに対して、昨年のスライダー被打率は.370とキャリアワーストの数値でした。
オフの取り組みが実を結び、現状の決め球であるフォークに加えて更にスライダーも強みに出来れば、勝ちパターン入りも視野に入ります。
彼は先発投手としての経験もあるため、回跨ぎでの起用を考えてみても面白いかもしれません。

梅津晃大

3人目は梅津 晃大うめつ こうだい投手です。
これまでの成績はこちらになります。

年度別一軍成績

どの成績を見ても勝野投手より優秀なものも多く、ルーキーイヤーから2年続けて20%越えのK%が目につきます。その反面、BB%も高めになります。

彼の場合年度ごとに投球割合が大きく変わるので、年度別の投球割合を見てみましょう。

年度ごとに球種別投球割合にバラつきはあるものの、基本的には投球の50%を占めるのがストレート、続いてフォークとスライダーがメインでたまにカーブやチェンジアップといった構成になっています。

フォーク、スライダー共に三振を奪える精度を誇り、特にフォークは通算の被打率が.145となっています。


通算成績に2022年の成績がないのを見てお気づきの方もいると思いますが、彼は非常に怪我が多い投手です。そのため稼働率が悪くなかなか実績を積み上げることが出来ていません。
昨年もトミージョン手術を行ったため全休という形でシーズンを終えました。
健康に投げさえすれば成績は自然とついてくる投手であるため、身体面をいかに健康に維持するかが彼の課題でしょう。
先発投手としての能力は確かですが、チーム事情を見て一時的な中継ぎ配置転換という措置を取っても面白いかもしれません。

今回はリリーフ陣のキーマンとして3人の投手を紹介しましたが、彼らだけでなく若い投手1人1人がキーマンといっても過言ではないくらいに怪我人続出のドラゴンズの中継ぎ事情は苦しいです。
特に梅津、勝野の2人は先発投手として結果を残していたこともあるためすぐ中継ぎに配置転換、ということは難しいでしょう。ただ先発投手がリリーフに配置転換された場合に様々な成績が良化するケースは多くあります。
勝野、梅津の両投手は怪我に悩まされがちな選手でもあるため、身体が連投に耐えられるかという所もポイントになってきます。
こういった配置転換は、選手の特性を把握しそれぞれにあったポジションで起用する、投手コーチのマネジメント能力が求められます。

これから中継ぎ含めた投手陣がどうなっていくのか楽しみにしつつ今回のnoteを締めさせていただきます。
読んでいただきありがとうございました。

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