【随想】言葉はそのまま伝わらない
よく、コミュニケーションが全然とれていない、コミュニケーションがよくとれているということを言いますが、実はコミュニケーションがとれていないことはないんですよね。
コミュニケーションは常に起こっている。
ただ、それが自分の望むコミュニケーションかどうか、だけなのです(^^)
では、コミュニケーションとは?
まず知っておかなければならないことに、コミュニケーションにはちょうどいい距離があって、この距離が人によって違うのだということです。
また、コミュニケーションは言葉だけではありません。
例えば、サッカー選手はアイコンタクトでパスをつなげたり、俳優や漫才師は声のトーンでさまざまな表現をしたりしています。
穏やかに「だめだよ」というのと、猛々しく「だめだよっ!」というのと、全然違いますよね(^^;
表情やボディランゲージ、口調や声のトーンでも、実はコミュニケーションしているのです。
例えば「この商品、どうですか?」と聞いたら、「う~ん」とうなりながら腕組みをする、というのもコミュニケーションですし、「この提案どうですか?」と企画書を差し出したら、「は~」とため息をして企画書を机に放り出すようだと、「ダメ」っていう意味のコミュニケーションですね。
このように言葉以外でもコミュニケーションをとっています。
現代は、誰とどういうコミュニケーションをとるかを、5感を開いて自分で選ばなくてはならない時代です。
どういうコミュニケーションをとるか、選んでいかなくてはなりません。
その理由は、3つあると思います。
1つには役割が多様化しているからです。
昔は、上司はこう、部下はこう、友人はこう、恋人はこう、妻はこう、夫はこう、子供はこう、大人はこう、と役割が明確でした。
だから何も考えずに自動的にコミュニケーションをとることができました。
ところが現代の役割は多様化しています。
また、2つ目に業種や業態も多様化しています。
会社にしても、きちっとした古いタイプもあれば自由なところもある。
ベンチャーもあれば大手もる。
上司と部下が友達みたいに接しているところもあれば、非常に上下関係の厳しいところもある。
世の中が多様化しているので、部下だから、上司だから、お客さまだから、このように接する、というものがなくなってきています。
3つ目は、同じ相手でも月日が経つと、コミュニケーションが変わってくるものだからです。
役割が多様化し、同じ相手でも年月が経つとコミュニケーションが変わってくる中で、「こういう風にやっていればいい」という万能モデルはありません。
自分で意識して、その場、その場に応じたコミュニケーションを選べるようになる必要があるのです。
誰とどんなコミュニケーションをとりたいかを考え、自分でコミュニケーションスキルをマスターしいく必要があるんですね(^^)
ポイントは、言葉は、そのまま伝わらないってこと!
コミュニケーションは、まず、「量よりも質」です。
言葉のコミュニケーションを考えてみると、言葉で相手に何かを伝えるときに、どんな人でも必ず、五感や感情を伴った自分の体験を基に言葉を使います。
例えば、仮にAさんが上司、Bさんが部下だとします。
上司のAさんが、「君、もうちょっとやる気を出してくれよ」と、部下のBさんに“やる気”という言葉を使って伝達します。
“やる気”という言葉は、Bさんに伝わりますが、実はAさんが言っている“やる気”と、Bさんが知っている“やる気”は、違う“やる気”なんですねぇこれが(^^;
どんな違いがあるかと言えば、Aさんは“やる気”を、元気がいいとか、声が大きいとか、挨拶を気持ちよくするとか、10分以上早く出社することだと思っている。
ところが、部下のBさんは、「やる気を出せ」ということを「業績を上げろ」という意味に受け取ってしまった。
そこで、「わかりました、やる気を出します!」といって、業績を1.2倍に上げたのだけど、いつも遅刻するし挨拶も元気がない。
Aさんは、「もっと、やる気を出せよ!」というのに、Bさんはそういわれて、「1.2倍じゃ足りないんだ、1.3倍に上げなきゃいけないんだ」と思ってしまう。
そして相変わらず、遅刻するし挨拶は元気ない。
Aさんは「だ・か・ら! やる気を出せよ!!」となってしまうわけですね。
話し手の“やる気”と聞き手の“やる気”は、違う“やる気”なんです。
「やる気を出せ!」と何度も言っても、「やる気とは何か」が人によって違うから伝わりません。
「やる気」「コミュニケーション」「モチベーション」「リーダーシップ」等々。
どんな言葉も、話し手と聞き手の体験が違います。
このままだと、どんなに回数を重ねても真意は伝わりません(^^;
ここで大事なのは、聞き手が、「“やる気”っておっしゃいましたが、特に私のどういうところが、やる気がないでしょうか?」とか、「どのへんをどうすれば、やる気があると感じられますか?」と好奇心を持って確認し、「挨拶の声を大きくすることだよ」とか、「元気良く声を出すことだよ」とか、「遅刻せず早めに来ることだよ」と具体的に言ってもらうことが必要です。
すると、直すことができます。
このように言葉ひとつとっても、話し手と聞き手とで違うのです。
だから、コミュニケーションの質が非常に大事です。
ところで、なぜ話し手と聞き手でこのような誤解が起こるかというと、体験を言葉にするときに、必ず「一般化・歪曲・省略」が起きるからです。
例えば、駅からの道順を“全部”教えようとすると一生かかります(^^;
駅から出たところに見える建物すべて、ポスターに写っている人のプロフィール、化粧、ファッション、趣味から、印刷の解像度、道に落ちているゴミ等々、目から入る情報を全部言うのは無理です。
なので、道順を教えようとすると、「女優のポスターがあって、そこを10メートル行ったら右に曲がって、ワンフロア上がったら左に折れて・・・・・・」というふうに省略します。
この「一般化・歪曲・省略」を使うと、全部言わずに済むので便利なのです。
ところが誤解を招きやすい(^^;
大事なのは、一般化・歪曲・省略していいところと、しちゃいけないところを区別することです。
例えば、「今日、○○に打ち合わせにいきました」と上司に報告し、「どんな話だった?」と聞かれたとします。
「ちょっと最初、世間話をしたあとに、製品仕様の説明を受けました。で、課題はAとBとCです」と答える。
その際、世間話の内容を全部言う必要はありません。
これは一般化・歪曲・省略したほうがいい部分です。
一方、「じゃあ、どんな話をした?」と聞かれたときに、「いい話でした」じゃ、ダメなんです。
「製品仕様の○○と××と△△について聞きました」まで必要です。
とはいっても、上司だったら、この程度でいいと思います。
ところが、製品仕様の社内検討を関係部署と打ち合わせするとなったら、「製品仕様の話を3つ聞きました」だけじゃだめですね。
つまり、場面や人に応じて、「具体化・個別化・明確化」する必要があることに、常に注意する必要があるんです(^^)
より良いコミュニケーションを行うためにも、話し言葉であっても書き言葉であっても、前提条件を推察して、相手の話を良く聞き、過不足なく伝える普段の努力を怠らず、質問力も磨いていかないといけないのかなって思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?