【終】私の知らないところでどうか勝手に幸せになってください
私が彼に宛てて書いた手紙を奥さんに見られたことがきっかけだった。
「なんで手紙なんか渡しちゃったんだろう」って後悔とか、
「ああ、自分と同じつらい思いを他の人にもさせちゃった」って罪悪感と一緒に、
「ようやくちゃんと彼とお別れができる」って少しほっとした。
もう私たちだけの力では別れられないほど、繋がってしまっていたから。
私たちが別れようとしていた日の少し前に、
彼と一緒に旅行をした。
お互い、もうこれが最後の旅行だと思いながらの旅行。
観光地を巡って、美味しいご飯を食べて、
ホテルの部屋で飲みなおして、部屋で一緒に映画を見た後、
その夜私たちは何度もした。
ほぼ寝ないでした。
もう最後だから、お互いがお互いの想いを隠す必要もない。
最後だから、これでもかってくらい「愛してる」って何度も言いながら
した。
奥さんにバレてしまったこと、
誕生日に彼と一緒に過ごせなかったこと、
もう2人で会うことができないこと、
どれもつらかったけど、
でもこの夜があったから乗り越えられるってくらい、
最高の夜だった。
奥バレから、彼とは一切連絡も取らず、会うこともなくなった。
しばらくは毎日泣いてたけど、時間の経過と仕事の忙しさで、どんどん彼への想いも薄れていく感覚があった。
だけどたまに、
あらゆる手段を使って連絡を取ろうと思えば取れるこの時代に、
彼から連絡がこないってことは、
やっぱりなんだかんだ奥さんが一番大切なんだなって思って苦しくなった。
彼と別れてから半年以上経ったある時、
偶然、子供を連れて歩く彼と奥さんを街中で見かけた。
半年前に夫婦の危機が訪れたとは思えないほど、
どこからどうみても順風満帆で仲睦まじい『家族』がそこにはあった。
離婚に発展してなくてよかった。
夫婦関係が修復していてよかった。
ああ、ほんと。ほんとに。
だけどBさん。
『好意』でなくとも『愛情』でなくとも、
もしまだ私に対して、少しでも『情』があるのなら、
奥さんと別れてほしいなんて言わない。
私を選んで欲しいなんて言わない。
そんな大それたことを望んだりしないから、
だからお願い。
どうか、私の見えないところで、
私が知りえない世界で、
どうか勝手に幸せになってください。
終
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