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『兼任サポーター』は悪なのか? #3

本記事は3部構成の第3部になります。
1部をご覧いただくとより楽しめますので
是非1部、2部をご覧いただけると幸いです。

結論が出るまでだいぶ時間がかかってしまいました。
書き始めはまさかこんなに長くなるとは思っていなく、
お粗末な文章能力を露呈することに…
ここまでお付き合いいただいて感謝です。

『兼任サポーター』をテーマに
投稿してきましたが、本記事が最終章です。


文化を裏切る葛藤


2年間休止していたYouTubeチャンネル。
当然登録者数も減り、収益化も外されていた。

そんな中、2022年開幕戦から動画投稿を再開した。
また新たな動画内容として
「北海道コンサドーレ札幌」だけではなく
「大分トリニータ」の観戦動画を
投稿することにした。

今だから言えることだが、
大分トリニータの観戦動画を
投稿し始めたのは
「動画の再生数が伸びるから」
というやましい理由だった。

2019年にアップした大分アウェイの観戦動画が
他に動画に比べ再生数も高く、コメントも多くついた。
前回述べたが、大分サポは他クラブにはない
他者を迎え入れてくれる特別な温かさがある。
登録者も激減してしまい、再度の収益化のためには
当時「動画再生数」がなんとしても欲しかった。
再建の為に必要不可欠な「数字」の為に
トリサポの視聴というのはなによりも
貴重でありがたいものであった。

画像は2023年ですけどね

また、J1とJ2は日程が被りにくい。
片方が土曜開催なら片方が日曜開催になるケースが多く、
札幌の試合と被らないタイミングで
試合を見に行くことができた。
なので「札幌の試合に行かず大分の試合に行った」という
罪悪感に近い何かを考える必要もいらなかった。


2021年をもって片野坂監督が退任したことで
自分が魅了されたカタノサッカーは消えてしまった。
しかし下平新監督のサッカーも非常に魅力的で
個性的なタレントが多くいたこともあって、
新生大分トリニータを自然と応援することができた。

ただ一つだけ。
自分に対し、絶対的なルールを設けていた。

それは
「大分のゴール裏」には行かないということ。

日本サッカーにおいてのカルチャー。
ゴール裏、通称中心地といわれる場所は
他の座席などに比べ特別なエリアだ。

お金を払ってサッカーの試合を観に行っているのに
何故かピッチにほぼ90分間背を向けている人がいるような
初見殺しな場所だ。

たとえて言うなら応援の本陣であり
札幌サポである自分は、
ここに行かず避けるべきだと判断した。

底辺YouTubeチャンネルとはいえ
顔を出して活動している。

「我々のゴール裏に札幌サポが来ている」
となれば混乱を招くことにもなるし
結果的に、両クラブに迷惑をかけることになる。

ただ間違いなくいえることは
ゴール裏とはある種、常識が通じない。
忠誠こそが正義であり、文化には逆らえない。
当時の自分はそう考えていた。

コールリーダーとの邂逅

2022年の大分vs横浜FCの試合。
勝てば昇格プレーオフ出場決定となる重要なゲーム。
天気は雨だったがニッパツには屋根がほとんどない。
だが雨での観戦など慣れっこで、いつものように
カッパを着込んだ上から大分のユニフォームを着用し
メインスタンド側から試合を観戦していた。

試合終了後、何気なくTwitterを見ていると
大分トリニータのコールリーダーが
自分のツイートをリツイートしてくれていたことに気付いた。

この時の感情として「恐ろしい」が一番に来た。
言ってしまえば部外者である自分の投稿を
コールリーダーが拡散しているのだから。
これはどういうことだ…?と変に勘ぐってしまった。

ただ、自分の投稿に対するコールリーダーのコメントは
好意的なもので、今まで感じたことのない感覚に陥った。

後に分かったことだが、
コールリーダーも自分の動画を
見てくれていたのだった。(あと同い年)
その話を聞き「コールリーダー=怖い」
というイメージが先行していた自分だったが、
決してそんなことはないんだと気づかされた。

自分の中の固定概念がここで一つ崩れた。

ゴール裏にたどり着く

2022年、1年でのJ1復帰は叶わなかった。
その為、2023年開幕前に大分トリニータは
多数の主力選手が引き抜かれてしまった。

それでも序盤は調子よく勝ち続け、
前半戦を終えた時点では
町田ゼルビアと首位争いをするほどであった。

そしてこの年、ついに自分はゴール裏に
足を踏み入れる決断をした。

理由としてはYouTubeへの動画投稿の中で
多くのトリサポさんからコメントをいただき
こんなに優しい人たちと揉めるわけがないと思ったから。
そして自分自身が『サポーターを兼任する』
その覚悟が出来たからだ。

アウェイ大宮アルディージャ戦。
初めてのゴール裏、いったいどうなるかとソワソワしていたが
本当に多くの歓迎の声、激励の声をいただいた。
「動画見てるよ!」「カメラマンさんこれどうぞ!」と
いろんな方に声をかけていただき、
九州土産をいただくなど至れり尽くせり状態。

YouTubeをやっていて良かったと心から思った。
この人たちと出会えてよかったと思うと同時に
己の偏見で今までゴール裏を敬遠していたことを悔いた。
多くの方が僕らが大分トリニータを応援することを
求めてくれていて嬉しくてたまらなくなった。
ただ、ゴール裏で飛び跳ねるには少し抵抗があり、
彼女(カメラマン)とともに
ゴール裏でじっと試合を見ているだけになってしまった。

トリサポへの恩返し


2023年夏。
本格的にゴール裏にお邪魔するようになり半年。
初めて大分トリニータのホームスタジアムである、
「レゾナックドーム」に遠征した。

関東に住んでいるので大分のホームに行けるのは
1年に1度あるかどうかといったところ。
土地勘もなければ地元でもない。
感覚的にはアウェイ遠征と同じ。

しかしレゾドに行けば空気が変わる。
本当に多くのトリサポが
我々を優しく迎え入れてくれた。

なんならお声がけだけではなく
お子さんと写真を撮ったり差し入れを頂いたりと、
自分たちの座席に戻ることができないほど
本当にたくさんのコミュニケーションを取った。

決して自慢ではないが、我々の為に
列ができるほどで驚きを隠せなかった。
そんな経験をする人生だとは思っていなかったから。

これは恩返しをしなければ。
この出来事を邪険に扱ったら
孫の代まで悔いることになる。

こうして自分の中での
トリサポ恩返し計画が実行された。

とはいえトリサポさんの為に何ができるか?
そう思った自分はまず手始めに
トリニータの強化費に使用されるという
クラウドファンディングに参加した。
結果的に貢献はしたものの
果たしてこれが正解なのか?
と感じてしまった。

そして辿り着いた自分なりの恩返し方法。
それは「全力で応援すること」なのではないか?と。

今まではゴール裏でなんとなく
口ずさんでいた大分のチャント。
スタジアム観戦を重ねていく毎に、
いつの間にか個人チャントまで
口ずさめるようになっていた。

トリサポたちが一番喜ぶこと、
それは『大分トリニータの勝利』だ。
ならば自分は声を出すことが出来る。
声は間違いなく力になる。
それは選手だけではなく、
ともに歌うサポーターに対しても。
クラブの為にゴール裏で声を張り上げる。

これが自分ができるトリニータへの恩返しだ。

『兼任』だからこその自覚

そこからは迷いなどなくなった。
今までサポーターを兼任することに
世間体を気にしていた自分がいたが、
今はもうそんなものはない。

ここで重要なのは
「中途半端な愛はいらない」
ということだ。

「札幌」を愛している。
だが
「大分」も同じく愛している。



どちらが上とかではなく
どちらも熱く、そして強く。
それがクラブの為になるのであれば、
赤黒と青黄のゴール裏で愛を叫ぼうじゃないか。

赤と黒が人生であり、青と黄の情熱も燃やす。

そんな人生があってもいいのではないか?
そう自覚した。

『兼任サポーター』は悪なのか?


ようやく結論に辿り着いた。

自分が本記事で伝えたかったこと。
それは

中途半端な愛情は『兼任サポーター』を悪にする。
『兼任』するならとことん愛せ。

ということだ。

何事においてもそうだが、
中途半端は相手を傷つける。
だからこそ、振り切る必要がある。

誰に何を言われようが曲げない覚悟を持つ。
愛するならとことんと。それが結論だ。

札幌も大分もどちらも愛するとか
きれいごとを書いている自分だけれど、
毎試合現地に行けるわけじゃないし、
やはり家庭を大切にしたいところもある。

それでもスタジアムに行けば
1つのゴールや1つのファールで
感情的になるし、バカにもなるし、叫んでしまう。
フットボールに狂わされている瞬間に
自分は生きがいを感じる。

自分はそんな生きがいになるクラブを
増やすことは悪ともなんとも思わない。

ここまで読んだうえでも「兼任サポ」を
肯定できないという人がいたとしても
それも正解だと思う。

自分も認めてくれとも思わないし
そんな考え方なんてクソくらえと
思ってもらってもよい。

以上、長くなりましたが
『兼任サポーター』についてでした。

この記事があなたの
ナニかになってくれればうれしいです。


フットボールは文化であり宗教である。

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