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「ベイトマンニュース」孤独な変わり者

先日今更ながらナイチンゲールについての動画を観る機会がありました。
ご存知の通りナイチンゲールは看護の基本となる「看護覚書」を書き、自らもクリミア戦争の現場で兵士たちの看護をし、その壮絶な医療現場の環境を大きく改善させた看護師の神のような人です。
元々彼女はイギリスの大金持ちの貴族出身で、その時代の女性は働くなんぞはもってのほかで、いい家柄の人と結婚することこそが女性としてのあたりまえの幸せでした。それがある日彼女は「人のために働け」という神の啓示を木の下で受け(!)、看護師になることを決意したんです。

まずここが面白いところですね。なんで彼女はここで「看護師」になろうと思ったんやろ。ナイチンゲールはあの時代に統計学を学んだような賢い人なんです。その人が「医師」ではなく「看護師」を選んだところが興味深い。  当時の看護師といえば労働者の下の下という位置の人がやっていた職業で、そやのに貴族出身の彼女がお医者さんではなくて看護師になろう、と思ったのはなんでかな。
お金持ちで何不自由なく暮らせた彼女が、3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれる看護師の位置に身を置いたのは、神の啓示とはいえ、厳しかったやろうなぁ。彼女の周りの人たちも、またなんで?とびっくりしたやろうなぁ。

私は現在野菜工場で働いているんですが、同僚の外国人労働者は、ブルガリア、ルーマニア、ポーランド、インドネシア、パキスタン、インド、モロッコなど、故郷の経済状況が非常に悪く働く場がない、という状況で遠くて寒いスコットランドに出稼ぎにきています。
そんな同僚たちは私が日本人だと知ってとても驚きます。「日本は豊かな国で、仕事もたくさんあって、いい生活ができるのに、なぜあなたはここで働いているの?」と。「夫がイギリス人でずっとイギリスで暮らしていたんだけど、最近スコットランドに引っ越してきたんだよ。」と答えると、更に驚かれます。「イギリスはスコットランドに比べて発展しているし、経済状況も上なのに、なぜスコットランドに引っ越してきたの?」と。
私がいくら「ゴルフが好きでね。定年後のゴルフ三昧の毎日を夢見て、スコットランドに来たんだよ。」と言っても、それは彼女たちには全く理解されないんです。そりゃそうかもしれない。彼女たちは「生きる」ためにこの地に泣く泣くやってきたのに、私は自分のやりたいことを求めて、(彼女たちから見て)豊かな国である日本やイギリスからわざわざここにやって来た。なんなの?それ?どういうこと?と全く理解されないんですね。
私は恵まれているんやなぁ、とつくづく実感します。一戸建てに住み、自家用車で通勤し、週4日のパートの私はほんまに恵まれている。と同時に、私はせっかくここに「やりたいこと」を求めて来たのだから、自分たちのやりたいことはどんどんやっていかなきゃな、とも思います。

本当に興味深いです。価値観や状況が違えば、全く理解できないこともある。そもそも見ているものが違う。
当時ナイチンゲールは自分の行動を誰からも理解してもらえず、さぞかし孤独であったやろうな、と思います。彼女は強い信念をどうやって持ち続けたのかな。でも考えてみれば、彼女が貴族出身やったからこそできたことも多かったはず。貴族出身やったからこそ、政府をも動かす力があったんやし、教養もあった。
自らスコットランドに飛び込んできた日本人の私とイギリス人の夫も、私らやからできることもあるのかもしれないですね。それはきっとゴルフ三昧の定年ライフかな~。笑。

どちらにしろ(ナイチンゲールのような偉人と私たちを同じにしたらあかんけど。笑)、ナイチンゲールも私らも、周りの人には理解されない、孤独な変わり者なのかもしれませんね。


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