12シトライアル第二章 アンカー番号12番part7
第二十五話 軍配
「先生、速かったのはどっちですか?僕ですか?彼ですか?」
「一位は…CMの後で。」
「先生、それバラエティ番組の司会者だけにしか許されない決まり文句です。」
結局先生もわかんねぇのかよ!!
「閑話休題。」
あんたが言うなよ!
先生が流れを変えようと困った時の四字熟語を出してきた。こういう大人って狡い…俺が言えた義理じゃないけども!!
「こんなこともあろうかと、ゴールにカメラを置いて動画を撮っておいた。これで確認しよう。」
一同が最初からそうしてくれと思ったことはさておき、俺たちはビデオを確認した。その結果、
「てっちゃんの手が先にゴールに入ってるねー。ということは…」
「A組の男子の代表は岸で決定。」
「よっしゃーーーーーー!!!!」
柄でもなく大声を上げて叫んでしまった。俺って卓球部だったっけ?まあいいか。とりあえず、アイツには感謝しなきゃだな。
「いやー、やっぱり主人公補正ってあるんだなー。」
「先生、それ以上のメタ発言はやめてください。まあ、岸くん。速かったよ。本番、僕たちの分まで頑張ってくれよ。」
先生を制した河本が、そのままめちゃくちゃ大人な対応を見せてきた。勝ったけどなんとなく負けた気がしたが、
「ありがとな。去年悔しい思いしたから、その分の借りは返した。来年はクラス同じかもわからないし、リレー戦で敵として、はたまた味方として会うかもしれない。どのみちその時は、よきライバルとして、よろしく。」
「もちろんだとも。よろしく。」
そう言って俺たちは握手を交わした。こうして俺はリレー出場権をなんとかもぎ取った。そして、河本との間に友情的な何かが芽生えたのだった。あれ?これってなんか熱い友情についての物語だっけか?
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