見出し画像

12シトライアル第二章       アンカー番号12番part30

第四十八話 Infinite Rebellion
 「センパイ、もう大丈夫です!リレーは問題ないですよ!頑張りますからネ!」
昼休みの終わり頃、俺は借り物競走の時に怪我をしていた金本かねもとの様子を見に行ったが、リレーに出れるほどにまで回復しているようで安心した。
「次の騎馬戦終わったらもうリレーだから、今度は怪我しないようにちゃんと準備運動とアップはしておけよ。」
「もちろん!でも、センパイも朋美ともみセンパイ…でしたっけ?あの怖いセンパイとのバトンパスなんとか無事に繋いでくださいネ!きしセンパイアンカーなんですから、期待してますよ!」
なんか、コイツ出会った時と変わりつつあるのかもしれない。会話しててふとそう思った。

 そうこうしているうちに、
「では、続いては三年生の騎馬戦です!まずは女子からですので、三年生女子の皆さん、それぞれの入場ゲートへお願いします!」
どうやらもう騎馬戦が始まるようだ。全チームが揃うと、アナウンスが入った。
「えー、今年の騎馬戦ですが、去年までのルールから変更となる点がございます!三年生の皆さんは練習でやっているので知っていると思いますが、一、二年生や親御さん方のため、説明させていただきます。」
なんだ?ルール変更とは初耳だが…

「今年は各騎ライフは四つです。一度ハチマキを獲られた騎馬は自陣に戻り、騎手を交代して再び出陣となり、ハチマキが0になった騎馬は脱落です。また、落馬の際もハチマキを獲られた時同様です。そして、最後の1チームが決まるまでの総力戦、謂わば今年の騎馬戦のタイトル“無限の戦乱”、そう“Infinite Rebellion”です!」
過酷過ぎないか?!高校生の体育祭でやるような種目じゃない!という俺の感想とは反して、場内は大盛り上がりだ。大丈夫か?死人が出るぞ…!

 すると、実行委員がどこからか知らないが法螺貝ほらがいを取り出して、
「各騎馬、組んで!」
さらにいつの間にやら設置されていた和太鼓の音がドドン!と響いた。
「立ち上がれ!!」
またもドドン!と心地のいい太鼓の音だ。和太鼓の音ってなんであんなに心地いいんだろつか。
「それでは、Infinite Rebellion女子の部、よーい…はじめ!!」
ここで先ほどの法螺貝を実行委員が吹いた…つもりだったのだろう。あまり音が飛んでいなかった。ちゃんと練習しておいてくれ…それを見かねた別の実行委員が機転を効かせて和太鼓を打ち鳴らした。ナイスフォロー!

 閑話休題。あれから5分ほど経過して、大体の騎馬は二番手に変わっていた。早いところだと、今3人目が落馬しあと一度しかチャンスがないようだ。おや?その騎馬のラスト1人のあの人…と思っていると、
「あ!とおるくーん!こんなところで何してるんです?」
「あー、ちょっと怪我した後輩の様子見ついでに三年の騎馬戦見ようと思ってな。真凜まりんは?」
「私はちょうど今から流唯るい先輩が騎手をやるので是非拝見しようと思いまして!」
「お前大城おおしろ先輩と知り合いなの?!」
「知り合いも何も中学時代の部活の先輩後輩なんです、私たち!」
世間は狭いんだな…そう感じた。まあ何はともあれ、あの騎馬で最後の騎手を務めるのはやはり大城先輩だった。ハチマキの色からして真凜と大城先輩は同じ白組なので、単に見るだけでなく、応援しに来ているのだろう。
「流唯せんぱーーーい!ファイトでーーす!!」
コイツ、元気だな。

 さらに5分経った頃、大城先輩はまだ戦い続けていた。いや、耐久力凄まじすぎるだろ!多分もうあの人、1人で8人くらいは殺ってる!白組はもう大城先輩だけになっているが、孤軍奮闘とはこのことである。一方、我々黒組はなんとか3騎を残している。そして今、紅組と蒼組は全ての騎が脱落したので、残りは白と黒の一騎打ちである。とはいうものの、こちらは3騎残りだが。

「せんぱーーーい!!あとちょっと!負けないでくださーーーい!!」
こちらとしてはどれか1騎でも残せば勝ちだ。落ち着いて行ってもらいたい。しかし2分後、
「女子の部優勝は白組!!」
そんな俺の願いは打ち砕かれた。ホントに大城先輩、強すぎんだろ…!まあでも二位に入れただけまだいい方ではあるだろう。すると、戦いの女神ヴァルキリーが憑依したかのような戦いを見せた大城先輩が真凜を見つけてか、こちらに走ってきた。

「真凜!応援ありがとね!ものすごく声通ってたよ!」
「わーい!恐れ入ります!流唯先輩、この後のリレーも一緒に頑張りましょう!!」
「ええ、最後まで勝ちきりましょ!」
この人、あんだけの戦いしておいてリレーも出るの…?フィジカルお化けだ…どうやら真凜の体力はこの先輩譲りらしい。

 ちなみにその後行われた男子の騎馬戦は見事我々黒組が優勝を果たした。現在総合順位は一位白組、二位蒼組、三位紅組、そして四位が黒組だ。しかし一位との点差は僅か30点。リレー次第で十分逆転も狙える。あとは全力で行くだけだ。
「それでは、リレー選の皆さんは、スタート位置にお願いします!」
さあ、コールが入った。そろそろ行くか…!と、
「徹くん、ちょっと…いいですか?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?