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12シトライアル第二章       アンカー番号12番part19

第三十七話 俺のいない日常 休日後編
 準備をしていると、真凜まりんにカウンターの前の会話がふと聞こえてきた。
「そう言えばてっちゃんがね、最近休んでるんだよねー。よくわかんないけど食中毒だか食当たりだか何かって言ってた気がする。」
(この時期に食中毒なんて、珍しいなぁ。その“てっちゃん”って人も大変なんだなー)

真凜が思っていると、
「そうなの?!大変!とおるさん、何食べちゃったんだろう!」
(ん?徹…さん?いや、まさか…ね…)
ふとそんな考えが過ぎったのも束の間、
「昨日なんてね、先生が『きしは食中毒かはわからんが、食当たりで休んでる。この季節、まだ安全と思っているかもしれないが、みんなも気をつけるように』って言っててみんな驚いてたよー。」

「そのまさかだったーー?!」
声に出てしまっていた。そして、
「「「???!!!」」」
マスター、芹奈せりな杏奈あんなが一斉に真凜を見た。
「ハッ!す、すすっ、すっ、すみません!!」
(まさか徹くん、食あたりしてたなんて!大丈夫かな、本当に後でもう一回電話しとこ…)

 閑話休題。数分後、
「お待たせしました!アイスティーとクリームソーダになります!ごゆっくりどうぞ!」
二人の手元に注文の品が渡り、二人は堪能し始めた。すると芹奈がクリームソーダを飲みながら、カウンター越しに真凜に話しかけた。

「あのー、店員さん!もしかして、てっちゃんのお知り合いですか?さっきてっちゃんの話に反応してたし。」
「お姉ちゃん、“てっちゃん”じゃ多分伝わらないよ。」
「あっ、そっか!ごめんなさい!えっと…きしくんのお知り合いですか?」

「はい、徹くんは普段、ここでバイトしてるんですよ!今日は…ご存じの通りお休みですけど。」
「そうなんだー!てっちゃんおバカそうなふりして頭良さそうに見えるから、塾とかでやってるもんだとばっかり思ってた!」
「お姉ちゃん…なかなかに徹さんのこと貶してない?無意識だと思うけど…」
「え?…と言うと?」

「でもたしかに喫茶店は意外だったかも…あのー、徹さんってここでは普段どんな感じなんですか?」
「あー、それわたしも興味あるー!」
かなりグイグイ来る姉妹に若干気圧されつつも、真凜は些か顔を赤らめて答えた。
「そうですねー、すごく真面目で一生懸命で、私のミスとかもフォローしてくれるし、私は…カッコいいと思ってます!徹くんのこと。」

「やるねー、てっちゃんも隅におけないなー!」
「流石徹さん、と言ったところですね。」
「あ!そう言えば、私も同じ学校で同級生なんです!2年D組の羽田はねだ真凜まりんです!」
「そうなんだ!わたしはてっちゃんと同じクラスの岩井芹奈!こっちは二つしたの妹の…」
「岩井杏奈です。徹さんとは塾が同じで。」

「そうなんですね、二人ともよろしくお願いしますね!また来てください!」
(と言うか、徹くん、なんでてっちゃんって呼ばれてるんだろう…)
こうして一つの疑問は残ったものの、意外なところで新たな人との繋がりができた芹奈と杏奈、そして真凜であった。

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