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12シトライアル第一章 13日の金曜日part12
第12話 狭き世界かな
はあ…やばい新人が入ってきたもんだ。こんなに疲れた後で今日は残念ながら塾だ。中学時代から通っている塾だが、大学受験にも対応してくれているのでとても助かる。
「あれ?徹さんじゃないですか。こんにちは。」
そう声をかけてきたのは俺の2歳下、中学三年生の岩井杏奈ちゃんだ。見た目もいかにもお淑やかといった感じで、育ちの良さが窺えるような、はっきり言ってめちゃくちゃいい子だ。
「あっ、杏奈ちゃんか。お疲れ様。」
「お疲れ様です。あっ、そういえば先日は姉がご迷惑をお掛けしました。」
「ん?姉?」
どういうことかと思っていたが、ふと全てが繋がった。
「岩井…ってもしかして!まさか、なんだけど、杏奈ちゃんって、芹奈の妹だったりする?」
「はい!そのまさかです!」
マジか?!言われてみれば似てないこともない。意外と世間は狭いんだなと素直に感じた。まさかクラスメートの妹と同じ塾に通っていたとは。
「姉、抜けてるところがあるので徹さんに迷惑掛けっぱなしじゃないかなと思いまして。この間も姉の勘違いのせいで心外なあだ名がついてしまったとかで…というか、私の姉だってこと言ってなかったんですね。本当に抜けてる人でごめんなさい!」
ホントにこの子アシストというかフォロー上手いんだよなー。つくづく芹奈には妹を見習ってもらいたいと思った。まあ、幸いてっちゃんって呼んでくるのはアイツだけで済んでるけど。
「いや、大丈夫だよ。寧ろアイツのおかげでクラスに馴染めたまであるし。ある種アイツには感謝してるよ。」
「それならまあいいんですけど…」
「そういえばなんで俺のあだ名の件そんな知ってるんだ?」
「実は姉、家で結構徹さんの話してるんですよね。直接的に徹さんの名前は出してないけど、その他諸々の情報から…」
なるほど、とりあえずわかったことは、岩井家のプラス遺伝子は妹が掻っ攫っていったということだ。少し芹奈のヤツが憐れに思えてきた。ただ簡単に特定されそうな情報を出すな、と声を出してアイツに言ってやりたくなった。
「あっ、私そろそろ授業始まるので行きますね。それでは徹さん、また!」
「ああ、またな。」
あんなにも癖の強いやつらの相手をした後だとここまで緩い会話に逆に違和感を感じる。なんと言うかギャップで頭をやられている。結局こうなるのか。これはこれで、何だ、コイツは…
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