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12シトライアル第二章       アンカー番号12番part30

第四十八話 Let's have a lun...ch...
 借り物競走が終わり、その後一年生男子の大玉転がし、一年生女子の玉入れ、二年生の綱引きが行われた。ちなみに黒組の結果はそれぞれ、三位、三位、最下位だ。ということでせっかく障害走終了時点で作ったリードも寧ろその分のビハインドとなってしまった。絶望的だ…!そして、午前中の種目は全て終わったので、ここからお昼休憩だ。だいたいの人は観に来てる家族と談笑しながらご飯を食べるのだが、
「お兄、ご飯、食べよう?」
俺と歩実あゆみは親が日曜でも忙しいので来れていない。小学生の頃からずっとそうだったので、このような機会には決まってコイツと食べている。いや、一人忘れてた。

「お兄、こっちこっちー…」
歩実に連れられて来た先には、毎度恒例…
「あ、歩実ちゃん、とーくん!こっちー!」
他校に通っている幼馴染の紗希さきがいるのだ。
「紗希…お前、暇なのか?」
「だって日曜日だからー…」
それもそうか。土曜日に雨天中止という理由以外で日曜日に体育祭を敢行するのなんてうちの高校くらいだよな…ホントになんでなん?

 閑話休題。それはそうと、こんな時はお約束というものが存在する。勿論コイツに悪気がないのはわかってるんだ…しかし…
「紗希ちゃん、お弁当作ってきてくれてありがとね…」
「やっぱり弁当持って来てるんだな…」
紗希はこういう行事の度に俺たちに弁当を恵んでくれる。その気持ちは大変ありがたいし嬉しい。しかしだ、みんなは覚えているだろうか、あのダークマターと化したフレンチトーストを。歩実と作ったらしい俺が寝込むことになったディナーを。そしてそれは毎度弁当も例外ではない。蝉の抜け殻やゲテモノの類は入っていないにしても、いつもジャイ◯ンシチューのような毒毒しい色をしているのだ。

そして俺はなぜか知らないが薦められると断れない性格をしている。だから食べて午後の競技に影響が出るのがお決まりのパターンだ。というか今ふと疑問に思った。なぜ紗希本人と歩実はいつも無事なんだろうか?食べているのに!

 ということで(?)、俺は意を決して弁当の蓋を開けた。すると…
「紗希ちゃん、いつも美味しいけど、今日の、なんかいつもと違う…?」
「なんと言うか、こう…いつもより、美味そう…」
コイツ、まさか今までの自分の失態に気づいて軌道修正してくれたのか?!何たる進歩!幼馴染として、俺は嬉しいぞ…!しかし、
「今日、ママが作った…」
あっ、俺、発言やらかしてね?だとしたら結構グサグサくることを言っていた気がする。紗希を見てみると、心なしかションボリしていた。「そのー、紗希…なんか、すまん、うん…」
「…とりあえず、食べよう…?」

 いつもと違う意味で死んだ…!すまん、紗希…本当に…!紗希のいつものゆるゆるな感じがなくなってしまっている。これは重症だ。
「うん、今のは…お兄が悪いね…」
従妹いもうとよ、心を読むのはやめてくれ…事実だけども!ご飯は美味しかったので、紗希ママには感謝しつつだが、なんか我々にお通夜のような空気感が漂っていた。まだ午後の部もあるんだけど…

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