12シトライアル第二章 アンカー番号12番part11
第二十九話 死のサソリ固め
今はどうやら信岡が走っているようだ。こう見るとアイツもなかなか速いじゃないか。そして信岡がコーナーに入った。よし、俺もそろそろ行くとしよう。
「信岡!行くぞ!」
「うっさい!話しかけないで!!」
コミュニケーションのコの字もない!!信岡がコーナーを曲がりきって俺の元に走ってきたので俺は軽く走り出した。距離こそ丁度いいかと思ったが、
「うわっ!」「キャッ!!」
信岡がバトンを刺すようにパスしてきたので俺はよろけ、よろけた俺の足に信岡が躓いて転んだ。コイツの渡し方に殺意を感じるのはなぜだろうか。そして俺はそれに巻き込まれて、俺の上に信岡が乗っている謎の状況が生まれた。さらに俺の背中に何か柔らかい感触が。いつもは制服で押さえつけられて控えめに見えるそれも、体操服のような薄着だと大きさも弾力も直によくわかる。その感覚が大変生々しい。それにコイツは黙ってさえいれば美少女なのだ。不覚にも、少しだがドギマギしてしまっている俺がいる。
だが冷静に考えて、この状況、まずくね?コイツは何かあればすぐ締め上げてくる、蛇の如く獰猛なヤツだ。だから早く抜け出さないと…
「あんたねえ…覚悟、できてないとは、言わせないわ…!」
「ああ…信岡さん?ご容赦を…ギャーーー!!!すみませんでした!!ギブアップします!!!」
そりゃそうなるわな。予想通り、俺は信岡に絞り上げられた。脚は交差させられ、信岡の右脚で固定されている。そして俺の下半身は上に吊り上げられ、膝と腰が悲鳴を上げている。そう、スコーピオン・デスロックだ。
「先輩!大丈夫ですか?!今助けます!」
頼れる後輩、下北が救いの手を差し伸べてくれた、のだが…
「ヒィッ!こ…怖いです…」
信岡の蛇睨みで動けなくなっていた。そして一方その頃、桃子は…
「………」
何を考えてるかわからない目でひたすらこちらを眺めていた。眺めてないで助けてくれ…!マジで!ともかく、早く俺を解放してくれ、信岡さんよ…
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