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12シトライアル第一章       13日の金曜日part8

第八話 ティータイム・ハードモード
 今日は部活がオフなので放課後はバイトをしている。もともとコーヒーが好きで始めた喫茶店のバイトだったが、週二回のこのバイトの時間がものすごく心地いい、楽しみな時間なのだ。それにこの喫茶店は、喫茶店なのにディナーメニューもやっている、小さなレストランのような店なので、学校終わりでも充分働ける。学生としてはありがたい限りだ。しかし、そんな平穏なバイト生活も去年の冬ごろ、突如として終焉を迎えた。

 「とおるくん、業務用パスタって残ってましたっけー??」
そう問いかけてきたのは去年の秋頃に入ってきた、同級生の羽田真凜はねだまりんである。
「まずいな、もうすぐ切らしそうだよ。買ってこなきゃだな…でもディナー始まるまで30分もないし補充間に合うかな…」
「それじゃあ買いに行きましょう!!」
真凜は基本的には仕事熱心だしいいやつだ。そう、基本的には…だ。今までのやつらに比べたら害は少ない…のだが…

「間に合う保証はないですけどねー。一か八かの賭けです!!行きますよ、徹くん!」
そう、この程度ならまだ軽く済んではいるのだが、実はコイツ、賭け事が好きだったりするのだ。そして、言い出すと止まらない。
「しょうがない、行くか。」
「はい!れっつごーです!」
「すみません!オーナー、行ってきます!」
「ああ、いってらっしゃい。なるべく速くお願いね。その間の営業は任せなさい。」
「「はい!お願いします!」」
こうして俺と真凜は走り出した。

 俺は運動神経にもある程度自信はあるし、全力で走れば50m走6秒台には乗るくらいに走れる。今は有事なので全力で走っているのだが、みんなは思うだろう。か弱い女の子を全力で走って置いていくなって。しかし、
「速くしてくださいよー、徹くん!間に合わなくなっちゃいますよー!!」
そう、コイツは中学生時代陸上部で、50m走6秒台なんざ、軽く手を抜いても出せるのだ。いつも俺の方が置いていかれがちだ。コイツ、やっぱ速すぎんだろ!!だから急いでる時にコイツと買い出しに行くのは嫌なんだよ…何でも卒なくこなせる俺でも、走りではコイツにはきっと敵わない。

 そして店に帰り、ディナー開始の2分前。
「なんとか間に合いましたねー。」
「はあ、はあ、ホントに、ギリギリ、だったな、はあ、はあ。」
「きっと間に合うとは思ってましたけどね!私脚速いですし、徹くんも走れますし!」
コイツはとんでもないほどの自己肯定感おばけ兼フィジカルおばけなのだ。やはり俺に憩いの場はなさそうだ。何だ、コイツは…

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